長清神社
「さあ、みんな到着よ」
「ここが長清神社……」
真っすぐ続く参道。奥の方に二の鳥居が見えている。そして玉垣の奥に見えるのが拝殿。
「立派な作りだね」
狭霧が感嘆した。
「でしょ、でしょ、狭霧くん。でもこの神社についたら、まず上を見ないと」
リツコ先輩がいつの間にか狭霧の横に来ていたが、上という言葉に俺は頭上を見た。
「あっ……」
巨大な鳥居の下に俺たちはいたんだ!
「なんて大きな一の鳥居なんだ……」
俺は口をあんぐり開け、鳥居を見上げた。
「すごいよねー。廃墟となった東京の一角にこんなに拓けた町があって、こーんなにビッグな鳥居があるなんて、驚きだよね。ね、狭霧くん、今度ゆっくり町を案内……いたた」
「リツコ、こんな神聖な場所で何を企んでいるのかしら」
木ノ花先生がリツコ先輩の耳たぶをつかんで、狭霧から引きはがした。
「みんな、このまま拝殿まで行きましょう」
木ノ花先生はずるずるとリツコ先輩を引きずりながら歩き出した。
「狭霧く~ん」
リツコ先輩の悲痛な声が響いた時、何かを感じた。
「狭霧、何か感じないか?」
「うん。なんだか嫌な感じがする……」
「ちょっとぉ、なんかすごい匂いが町の方角から漂ってくるよぉ」
俺たちが異変を察知した時
「コノハナ先生、三人と参拝客をお願いします」
そう口にしたリツコ先輩は、すでに戦闘服で周囲を警戒していた。
「三人ともこっちに来て。鳥居の内側はもう神域。黒い影はそう簡単に入れない」
木ノ花先生が俺たちを引っ張り、俺たちは鳥居をまたいだ。
鳥居の内側は明らかに空気が変わり、凛とした気配に満ちていた。
木ノ花先生は大声で鳥居の近くにいた参拝客に鳥居の内側に入るように促した。
俺たちも「こっちです」と手をふり、誘導した。
黒い影がまた来るのか……。
俺の背中に汗が伝った。
休憩所ではあっという間にやってきた。今回は参拝客もいるし、大丈夫だろうか?
俺はリツコ先輩を見た。
先輩は町の方角を目を細めて眺めていた。
見た目は一昔前のギャル風の制服姿。
だが眼光は鋭く、全身から殺気が出ている。
すごいギャップで、逆になんだかかっこよく思えてきた。
……あれ? そういえばリツコ先輩の武器は⁉
見ると手に小型のナイフを持っていた。
まさかあれで戦うのか⁉
「参拝客の避難、完了ねー。じゃあ、小笠原のおじいちゃん、鳥居の手前の玉砂利、汚しちゃうけどごめんなさいね」
そういうとリツコ先輩は軽い足取りでジャンプし、そのまま一の鳥居の上に着地した。そして左腕の袖をまくった。
何をするんだ……?
すると、右手で持っていたナイフを、左腕に滑らせた。
ち、血が、血が出ている……!
そう思った瞬間、鳥居の周りの一面の玉砂利の上に血が飛び散った。
この投稿を見つけ、お読みいただき、ありがとうございます。
ひまり先輩に続き、今回はリツコ先輩が戦闘態勢に。
どんな戦い方をするのでしょうか⁉
引き続きお楽しみください。




