リツコ先輩OR夜見先輩
「えっと……リツコは……すごい♡マークが大量。もちろん行きます、絶対に行きます、今すぐそちらへ行きます。って返信が来たわ。四尊くんは……」
ゴクリ。
思わず生唾を飲んでしまった。
「あ、四尊くんは薬草を取るので外に出てしまっているので、遠慮します、って返信が来たわ」
俺はホッとすると同時に、気づいてしまった。
護衛として同行したからといって、木ノ花先生もいるのに、夜見先輩が何かしかけてくる可能性は低いのではないか。
もしや狭霧の冷静なあの対応も、それを見越してのことだったのかもしれない。
「はぁ~い! お待たせ! プールで泳いでいたけど、飛び出してきちゃった!」
声の方を見ると、リツコ先輩がとんでもない状態でそこにいた。
黒のビキニの上に白のシースルーのパーカー、足元はビーチサンダルという、まるで真夏のプールにいそうな装いで、しかも髪も体も濡れている……。
「わ~っ、狭霧くん、久しぶり~!会いたかった~」
狭霧に抱きつこうとしたリツコ先輩を木ノ花先生が間に入って止めた。
「リツコ、そんな姿で町へ行けるわけないでしょう。今回は護衛も兼ねるから、天の羽衣の着用は認めるけど、水着姿をみせるため、みたいな邪な理由で天の羽衣を使うのはダメだからね。早く町へ出るのにふさわしい服に変えて。あと、そこら辺びしょびしょだから。それに髪も早く乾かして」
木ノ花先生の気迫にリツコ先輩はさすがに「はぁい」と引き下がった。
その瞬間。
本当にその瞬間、リツコ先輩はビキニ姿ではなく、一昔前の高校生のような学生の制服姿に変わっていた。
「リツコ、それあなたの戦闘服じゃない。普段着にして、普段着に」
白シャツにベージュのカーディガン、茶色とピンクのチェック柄のミニプリーツスカート。これが戦闘服⁉
「一番のお気に入りなんだけどなぁ」
「リツコ!」
「はぁい」
その返事が終わる前に、アイボリーのパーカーにピンクのショートパンツ、黒のロング靴下という姿に変わっていた。
「す、すごいです~。これが天の羽衣の力なんですね!」
陽菜はキラキラと目を輝かせた。
「あら、あなたはひなっちね。そう、これが天の羽衣よ。自由自在に色も形も変えられる。便利よ。何といってもオーダーメイド、世界で一つだけの服を着ることができるんだから」
「リツコ、床と髪」
木ノ花先生がビシッと指摘すると「はぁい」とリツコ先輩は返事をした。
どうやら木ノ花先生には頭が上がらないようだ。
リツコ先輩はポニーテールを結う様に髪を両手でまとめたと思ったら、手を離した。すると濡れていた髪は嘘のように乾いていた。
さらに、濡れた床に手を向けると、一瞬床からキラキラした何かが浮遊したように見えた。
目を床に戻すと、そこには滴り落ちていた水が消えていた。
リツコ先輩もエレメント使いなのか⁉
「すっごーい! 髪の毛、一瞬で乾きましたよね。陽菜、ドライヤー面倒なのでうらやましいです」
陽菜は瞳をキラキラさせてリツコ先輩を見た。
「すごいでしょ~。私、水だけ使えるのよね、エレメントを」
「じゃあ、行くわよ」
木ノ花先生はすでに教室のドアのところにいた。
「はーい」
俺たちは口々にそう言うと、木ノ花先生の後を追った。
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ウキウキのリツコ先輩との珍道中スタート⁉
引き続きお楽しみください。




