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完結●黒影  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中


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神降ろし

午後は神降ろしの方法の説明からスタートした。


一人前の黒影になるための流れは、神の力の発現→天の羽衣による飛行法習得→任務着任→鍛錬(発現が弱いものを強化)となる。


さらに総合的な判断を頭領がした上で、えにしのある神探し→神降ろしの儀式を行うという。神降ろしに関しては、陰陽頭が主導して行うとのことだった。


「正直、神降ろしの儀式は見たことがないのよね。そもそも秘儀だから公開していないし、基本的に当人と陰陽頭以外の人がいると、儀式自体が失敗しちゃうぐらい繊細なものだそうよ。神探しは陰陽頭が管理する神社で早朝から深夜まで一日がかりで行われる。陰陽頭が祈祷をして、参加者は神に対する呼びかけを唱え続ける。早い人だとホントすぐに、神が反応を返してくれる。でも遅いと真夜中にようやく見つかるなんてこともあるみたい。結構個人差があるそうよ。だから大変な人には大変な儀式みたい。儀式開始から二十四時間経っても神からの反応がないと、縁のある神がいなかった、ということになる。当然その人は神降ろしができない、ということになるわね」


このように木ノ花先生は説明してくれた。ちなみに一年の間をおいてリベンジもできるそうだが、リベンジで成功した人はいないそうだ。


神降ろしの方法が分かると、今度は神降ろしができる先輩黒影は誰なのか、という話になり、そこから天の羽衣が第八期入隊組から導入されたものであること、それによって黒影の戦闘スタイルが変化したこと(弓や狙撃が上空からできることは大きなメリット)、現在使われている武器は多様化していること(奈美先輩は鞭、えま先輩は刃がついたブーメラン)などを木ノ花先生は教えてくれた。


その後は食堂のメニュー名は誰が考えているのか、とか、夏のお盆休みの前に町で行われる花火大会があることなど、雑談のような話に変化していった。


「本来の授業で話したかったことも全部伝えられたし、みんなの疑問もそろそろ尽きてきたわよね。でもまだ十五時前……。どうしようかなー」


「先生、陽菜、町へ行きたいです。今日の授業で何度も出てきた陰陽頭に会いたくなりました!」


その提案に俺も狭霧も賛成だったので、口々に「俺も会ってみたいです、陰陽頭に」「僕も町に行くの、賛成です。僕と蓮は先日、町へ行きそびれてしまいましたし。陰陽頭にも、もちろん会ってみたいです」と、町へ行きたいこと、陰陽頭に会いたいことを伝えた。


「なるほど……。そうねぇ」


木ノ花先生は端末を取り出し、しばらく操作したのち


「天野くんと黒雷くんは確かに先日町へ行きそびれちゃったものね。課外授業ということで町へ行きましょう。ただやはりこれまでのことがあるから、護衛をつけたくて公休の黒影隊員を見てみたら、リツコと四尊くんなのよね」


「先生、公休の先輩方に護衛をお願いしていいんですか?」


狭霧は冷静な様子で質問を投げかけた。


「一応、護衛を含めて一緒に町へ行かないか、という形で聞いてみて、予定があったり、行きたくないということだったら、勿論無理強いはしないわ」


「なるほど、それだったら大丈夫ですね」


狭霧は微笑を浮かべた。


護衛をつける理由は黒い影の奇襲に備えるためだが、俺としては夜見先輩への警戒も含んでいるつもりだった。だが木ノ花先生は夜見先輩も黒影の隊員であり、仲間を裏切るような人ではないと信じたいと言っていた。


「木ノ花先生、それぞれの端末にメッセージを送ってみて、同行できる方にお願いするのはいかがですか。もし二人ともオッケーだったら、それはそれで楽しくなりそうです」


狭霧は本音では俺と同じく、夜見先輩は避けたいと思っているはず(かといってリツコ先輩がいいというわけではないだろうけど)。


だが木ノ花先生の気持ちを考慮した提案をした。


狭霧は本当にすごい奴だ。


俺は落ち着いた様子の狭霧の横顔を見て、尊敬を覚えずにはいられなかった。


一方の木ノ花先生は狭霧の提案に同意し、早速端末からメッセージを送った。ほどなく二人から返信がきたようだ。

この投稿を見つけ、お読みいただき、ありがとうございます。

食堂のメニュー名を考えているのは黒影最強のあの人です。

それでは引き続きお楽しみください。

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