隠れ最強キャラ
「先生、黒い影による襲撃は金山の坑道以外でもよく起きるんですか?」
俺の質問に木ノ花先生は首を振った。
「それはないわ。もちろん黒影が警戒する場所は金山以外もあるけど、それはあくまで念のためで、今までに金山以外で黒い影が出現したことはないわ。廃墟や休憩所に黒い影が出現したなんて青天の霹靂よ。まるで黒い影は、あなた達、新入隊員を狙っているように見えてしまう」
新入隊員を狙う……。そうだ、夜見先輩!
俺は、あの倉庫での出来事、廃墟及び休憩所に夜見先輩が居合わせたことから、夜見先輩が狭霧を狙っているのではないかという自分の考えを木ノ花先生に聞かせた。
「えっと、ちょっと待って。四尊くんが天野くんを狙っているのかもしれない、というのは推測として理解できたわ。でもその手段に黒い影を利用しているというのは……あり得ないと思う。ううん、その前に四尊くんが天野くんを狙うなんて……。同じ黒影の仲間にそんなこと……私は信じたくないな」
木ノ花先生は眉間に皺を寄せ、険しい表情をした。
木ノ花先生の苦悶の表情に俺たちも黙り込むしかなかった。
「あっ、ごめんね。……四尊くんの件は私も気に留めておくわ。……でも天野くんは心配よね……。あ、そう、そう。黒い影の件だけど、その、操ることはできないわ。これも陰陽頭から教えてもらったのだけど、黄泉の国の軍勢が従うのは、黄泉の国を統べる黄泉神。人間に従うことはない。だから四尊くんが黒い影を使って天野くんに何かしようとしていることはないわ。二度も新入隊員が黒い影に襲われていることは私たちもわかっている。だから今後、外出をする時に護衛をつけることも検討しているわ。ただそれはあなた達の行動の自由度を狭めることになるから、慎重に考えたいと思っている」
「木ノ花先生、ありがとうございます。僕は大丈夫です。むしろ僕と一緒にいると陽菜や蓮が巻き込まれないか、そっちの方が心配なだけで……」
「じゃあ、陽菜も蓮も早く強くならきゃね」
それが当然という顔で陽菜が言うと、狭霧が目を見張った。
「陽菜……」
「そうだよ。俺たちが早く神の力を発現して戦力になれれば、護衛だっていらないはずだ」
「蓮……」
「三人とも、ホント、いいチームね」
「木ノ花先生、先輩黒影による訓練で、俺たちに神の力が宿っているか確認したんですよね? 一応少し発現しているみたいだけど、実際のところどんな感じなのですか? あとどれぐらい訓練すれば、そのちゃんと発現するのですか?」
木ノ花先生は「ああ、それは……」といい、自分の端末を操作した。
「まず三人とも神の力は確かに宿っているわ。全員の先輩黒影がそれを確認している。この確認の時に神の力が発現する可能性が低いと判断されると、裏方スタッフへ異動で、この授業自体に参加することはないわ。なにせ機密情報、極秘情報が次々に開示されていく授業だから。次にどの神の力が発現しそうかについてだけど……、あ、これはすごい。黒雷くんは、第五感及び第六感、そのすべてが発現する可能性が高いって、九人の先輩黒影が評価しているわ」
「蓮、すごい~! もしかして最強⁉ 頭領になっちゃうかも⁉」
陽菜は自分のことのように喜んでいる。
「すごいじゃないか、蓮! このまま訓練に励んで、すべて発現させないと」
狭霧も自分のことのように喜んでくれた。
「続いて陽菜。えーと、神視覚、神聴覚、神触覚、神嗅覚ね。神嗅覚については間違いなく最高レベルで発現しているって、十人の先輩黒影が評価しているわよ、陽菜」
「わ~、本当に⁉ 匂いで敵が分かるなら、怖~い姿を見ないでいいから、陽菜、超ラッキーかも」
「ちなみに豆知識だけど、神嗅覚の力は何気に神の力の中では最強なのよ。というのも、第六感で察知する気配、これが最強に思えるけど、実は気配は消すことができるの。例えば猫が獲物に忍び寄る時、完全に気配を消すみたいにね。その気配を察知できるのは、飛びかかろうとする直前。これだと遅い。対して匂いは完全に消すことができない。だからどんなに巧妙に隠れても、匂いで居場所が分かっちゃう」
「わ~、陽菜、隠れ最強キャラかも」
「そして天野くん。天野くんは……神視覚、神聴覚、神触覚、神嗅覚、第六感……あ、全部発現……」
「いえ、僕は神味覚がダメなようです」
「あ、本当だわ。惜しかったわね。でもこの神味覚については正直なところ、発現しても活用できる場面が想像できないのよねー」
「どういうことですか、木ノ花先生?」
この投稿を見つけ、お読みいただき、ありがとうございます。
神味覚の活用場面が想像できないとは⁉
引き続きお楽しみください。




