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完結●黒影  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中


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屋上の庭園にて

「そういえば黄泉の国の軍勢のことだけど、かたまりで沢山いる時は軍勢で、個々の呼び名は黒い影でいいのかな?」


「うん、その認識であっているよ。発現している神視覚の強さの度合いで、見え方が違うから、そこは黒い影って呼び方で統一しているらしい。それとひまり先輩は黒い影を属性に分類していただろう」


「ああ、確かに『属性、水』って言っていた。それで、『風で対処』って」


「これは春秋先輩が教えてくれたのだけど、黒い影は自然の五つの要素からその体を形成している。水、火、風、土、闇の五つ。ひまり先輩の神視覚はとても強い上にかなり特殊らしい。どの要素で黒い影の体が形成されているか見ることができるそうだ。それで瞬時にその属性に強い、ひまり先輩曰くエレメントによる攻撃をしているらしい」


「なんか、ゲームみたいだな」


「うん。黄泉の国の軍勢には神触覚が発現していれば、銃であろうと刀であろうと攻撃は通る。だから属性が見えなくても、エレメントによる攻撃ができなくても、問題はないって」


「エレメントによる攻撃……つまり、火には水、水には風、みたいな攻撃ということだろう。武器を持ち歩かなくていいから便利そうだ」


「ある意味いつでも戦闘態勢に入れるから最強だよね」


「確かに」


すると俺と狭霧の端末にメッセージの到着を知らせるランプが点滅した。


「陽菜だ」


俺たちは屋上の庭園に集合することにした。



「はい、お土産♡」


寮の屋上は庭園になっており、複数の東屋があった。一応規則で男女の寮の部屋の行き来は禁止となっているので、この東屋はみんなのおしゃべりスペースでもあった。


寒い季節にはストーブが設置され、ひざ掛けなども用意されるという。


そして俺と狭霧はその東屋の一つで陽菜の到着を待っていた。するとほどなくして陽菜がやって来た。そして後ろ手に隠していた紙袋をテーブルに置くと、お土産だと笑顔を見せた。


「なんだろう、ありがとう」


俺と狭霧は一緒に紙袋の中を見た。


『東京名物 金粉入り饅頭 天然あずき使用』


「こんなものが町には売っているのか⁉」


「びっくりでしょー。町ではお盆と年末年始に大型のお休みがあって、その時だけ京都行の飛行機が一日に何便も飛ぶんだよ。もちろん採掘場や町のお店なんかもお休みで、その時、みんなこのお饅頭をお土産として買って帰るんだって~」


「へぇー」


「せっかくだから開けてみよう」


狭霧がそう言って包装をとり、箱を開けると、一口サイズの薄皮饅頭に金粉が飾られていた。


「すごいね。食べてみる?」


狭霧の提案に陽菜も俺も頷いた。


「いただきまーす」


そう言ってお饅頭を食べてから、陽菜は町の様子を興奮気味に語った。


町は予想以上に発展していて、お店も充実していた。


さらに陽菜が気になっていた神社も発見したのだという。


「陰陽師の小笠原久光さんという人が金山統括庁の上層部にいるんだって。それでその人が祈祷とかするのに使うために、その神社は建立されたらしいよ。でね、普段はみんなに解放されていて、参拝できるの。お饅頭を買ったお店の人が教えてくれたんだ~」


そして陽菜は「見て」と、手首の数珠のようなブレスレットを見せてくれた。


「これ、その陰陽師の人が念をいれたものなんだって。その小笠原久光さんって、ものすごく力がある人らしいよ。だから偽物とか詐欺とかじゃないって、お饅頭屋のおばちゃんが言っていたの。おばちゃんも実際ブレスレットつけていたし。陽菜は厄除け効果があるものを買ったから、これで怪奇現象ともバイバイだよ~」


陽菜はドヤ顔でほほ笑んだ。


一歩間違えば霊感商法まがいだが、俺と狭霧は小笠原久光が本物の陰陽師であると知っていたから「良かったね、陽菜」と応じた。


でも結局、黄泉の国の軍勢と戦う可能性があり、俺たちは神の力を発現させるための訓練を受けている。陽菜が苦手な怪奇現象とは切っても切り離せないんだけどな……。


「それでね、阿曇先輩に春秋先輩のことを聞いてみたの。町の中の唯一のファミレスで。そうしたら、正直分からないって……」


「ああ、陽菜、その件だけど……」

この投稿を見つけ、お読みいただき、ありがとうございます。

引き続きお楽しみください。

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