最適解
全身がみるみるうちに冷たくなった。
何が起きているんだ……?
目だけ動かし狭霧を見ると、青ざめた顔で周囲の様子を探っているようだった。
嵐の前の静けさのように音が消えた。
体は冷たくなっているのに、全身で汗をかいていた。背中を汗が伝った。
「伏せて」
突然ひまり先輩に言われ、俺は動かない体に活をいれ、テーブルの上で頭を抱えんでしゃがんだ。
すると床からものすごい勢いで、黒く、暗い、深い、闇が噴き出してきた。
俺は恐怖で身が竦んだ。
「動かないで」
黒い闇はまるで水のように噴き出して、天井にあたり、雨粒のように落ちてきた。
「分析完了。属性、水。風で対処します」
ひまり先輩がそう言った瞬間、俺らの体はまるで台風の目にいるような状態になった。
つまり、俺らの周囲で風が渦巻き、その中でさっき噴出した黒い闇がぐるぐる回っていた。結果、俺たちは黒い闇の雨に濡れずに済んだ、という状態だった。
「最適解、導きました」
ひまり先輩はそう言うと
「二人とも、私の足につかまり、決して離さないでください。絶対に、離さないで」
俺と狭霧は重い体を必死に動かし、ひまり先輩の足を両腕で抱きしめた。
「疾風迅雷、吹き飛ばします」
その言葉が終わるや否や、ひまり先輩を中心に全方位へ風が吹き出した。渦状になっていた黒い闇は一瞬で吹き飛んだ。
そこから数秒後
「消失確認」
ひまり先輩は続けて
「二人とも、もう大丈夫ですよ」
と言った。
さっきまでの状況が嘘のように、休憩室は俺たちが入ってきた時と同じままだった。
つまり、あの黒い闇は跡形もなく消えていた。
これってひまり先輩が撃退したってことだよな……?
俺が狭霧を見ると、狭霧も俺を見た。二人とも驚愕の表情を浮かべていた。
「二人ともテーブルから降りてください」
ひまり先輩に促され、俺と狭霧は恐る恐る床に足をつけた。
「今日は、町へは行けなさそうですね。残念ですが」
ひまり先輩がそう言って窓の外を見た。
そこには将校姿の沫那美先輩の姿があった。
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次回、沫那美先輩に続き、もう一人、黒影の隊員が駆け付けます。
さて、それは誰でしょうか……?




