表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
完結●黒影  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

34/245

正体

「仮に春秋先輩が金山統括庁に潜入して、隠し撮りをしていたとしよう。もしじっちゃまが突然応接室に現れたら、護衛という立場でその場でじっちゃまを取り押さえると思うんだ。もしカメラをどこかに置いて、春秋先輩が応接室を離れていたとする。後で映像を見てじっちゃまが写っていたとなったら、すぐに天津頭領や木ノ花先生に報告して、僕たちが何かされていないかって、大騒ぎになるんじゃないかな」


確かに狭霧の指摘通りだ。


「厳重なセキュリティをかいくぐって応接室に潜入したとなると、黒影もしくはそれ以上のスキルを持っていることになる。それは確かに大騒ぎになるな」


俺は自分でそう言いながら、そんな奴がこの東京にいるのか?とも思いつつ……。


「でもでも、こんなことも考えられない? じっちゃまのことを春秋先輩は知っていて、新入隊員と楽しそうに会話している、優しく見守っておこう、って。映像は撮ったけど、ムービーには使わなかった~、みたいな」


「なるほど。その線は想定していなかった。でもその可能性もあるわけだ。うん、むしろ、その線の方が自然だ」


狭霧は「陽菜、ありがとう」と言うと、ノートにメモを取りながら話し始めた。


「僕たちは突然乱入してきて、しかも眠らされたり、身動きを封じられたことで、じっちゃまを敵……とまでいかなくても、味方とは思っていなかった。でも味方ではないと考えるから、セキュリティをどうかいくぐったんだ、とか、何が目的だったのか、とか、余計なことを考えなければならなかった。僕たちの仲間ないしは関係者と考えれば、余計なことは考えなくてよくなる。まず、セキュリティ。関係者なのだから問題ない。目的、今年の新入隊員を見に来ただけ。あとはどうやってあの状況を作り出したのか、その謎を解くだけでいいんだ」


そう言うと狭霧は俺と陽菜に謝りだした。


「二人はじっちゃまが何を話したか、覚えていなかった。覚えているのは僕だけだった。それなのに僕はじっちゃまが味方とは思えず、見落としていた。じっちゃまが話したことは、関係者じゃないと知りえないものだった。しかも嘘をついているわけではなく、知っていることを話した、という感じだった。だからあのじっちゃまは関係者だ。黒影の誰かに話したら、知っている人もいるかもしれない」


「なるほど。もしじっちゃまを知っている人がいれば、俺たちの動きを封じ、陽菜を眠らせた方法も分かるわけか」


「うん。僕は今回いろいろ空回りをしていた気がするよ。沫那美先輩のことも君たち二人を探っていると思ってしまったり、装甲車の襲撃も窃盗団以外じゃないかと思ってしまったり。……じっちゃまのことも敵と考えてしまった。どうもここへ来てから、僕は何かと疑り深くなってしまったみたいだ」


「でも、狭霧は間違ってなかったよ。沫那美先輩のことも、装甲車のことも、陽菜と蓮じゃ気が付かなかった違和感に気づいたんだもん。それで実際、隠し撮りをされていたわけでしょ。これがもし隠し撮りじゃなくて、何かの陰謀で、狭霧が気が付かなかったら、大変なことになっていたかもしれないよ。だから空回りなんかじゃないよ~」


「そうだよ、狭霧。その勘の鋭さは俺や陽菜にない、大切な能力だ。今回はたまたま敵を見つけ出す、という結果に結びつかなかったけど、違和感に気がつけたんだ。時間があれば、隠し撮りされていた、ってことに気づくこともできたんじゃないかな。十分成果となっているし、無駄じゃない。空回りなんかじゃない」


俺たち三人はお互いを見て頷いた。


「今、俺たちの中で残った謎はじっちゃまが誰なのか、ってことだ。公休の黒影の隊員がいたら話を聞いてみよう」


こうして俺たちは食堂を後にした。


この投稿を見つけ、お読みいただき、ありがとうございます。

毎日更新しているので、また読みに来ていただけると幸いです。

引き続きよろしくお願いします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ