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完結●黒影  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中


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解けた謎、解けない謎

「忘年会の会場とみんなの服装の件は陽菜が話したいんだよね?」


狭霧の言葉に、パンケーキを食べ終え、紅茶を飲んでいた陽菜はカップを置くと大きく頷いた。


「みんなも気になったよね。この食堂が、昨日は池になっていて、舟が浮いていたんだよ。それにみんなの衣装。ビックリだよね⁉」


俺は気になっていたので大きく頷いたが、狭霧は微妙な表情だ。


陽菜はそれを気にせず話し出した。


「陽菜、舟に乗ってから、まず洩矢先輩に『みんな、衣装、どうしたんですか⁉』って聞いたの。だって、陽菜の舟、洩矢先輩は狩衣、沫那美先輩は将校、阿曇先輩は火事装束だし。それに天津天領は歌舞伎で、あの春秋先輩だってセーラー服姿。でも陽菜たちはオリエンテーションの後そのまま来たから、ブレザーにスカート。もちろん、ブレザーもスカートも普段着ることがない洋装だし、デザインとしても気に入っていたけど……。あれだけ自由な服装で歓迎会に出ていいなら、陽菜も着替えてから出席したかったし~」


陽菜の疑問は俺と少しズレている気もしたが指摘せずそのまま話を聞いた。


「でも洩矢先輩は『僕たちも任務終わってからすぐここに来たよ』って」



俺は飲みかけのお茶を吹き出しそうになった。


「おい、陽菜、それは洩矢先輩の冗談なんだろう?」


「蓮もそう思うよね! だから三回確認したら、阿曇先輩が小さな声で『本当です』って。でね、任務中の奈美先輩と凪先輩のことを思い出して……」


そうだ、あの双子の先輩の衣装も巫女と神主を思わせるものだった。


……黒影の任務はどうなっているんだ? 黒影とバレないためのカモフラージュなのか?


そんな風に思った俺に反し、陽菜はこう言った。


「黒影ってなんて素敵な組織なんだろう、って思ったの。任務中の服装があんなに自由なんて夢みたい~♡」


……なるほど。陽菜の思考だとそう落ち着くわけか。

狭霧はそれを先読みして微妙な表情をしていたんだな。


「あとね、この食堂の演出。これについてはね、『来年新入隊員を迎える時は君たちも歓迎会の準備を手伝うことになるだろうから、そこで謎は解けるよ』って」


陽菜は結局謎が解けていないので不服そうだ。


「……わざわざスペシャル・ムービーまで用意して、黒影にとって新入隊員を迎えることは一大イベントなんだろうね。だからこそあそこまでやるのだろうし。ちなみに今朝、ちょっと探ってみたら、倉庫に舟が大量に片付けられていたよ」


狭霧も会場のことは気になっていたようだ。倉庫を調べるとは、やるなぁ。


「衣装の件は解決したけど、会場の謎は来年になれば分かる……。会場の謎は気になるけど、解明しなくても問題はないだろうから一旦保留でいいかな?」


狭霧の提案に陽菜も俺も頷いた。


「ではスペシャル・ムービーの隠し撮りの件に移るね」


狭霧はそう言うとこう切り出した。


「映像には昨日の僕たちの様々な場面が写っていたけど、ムービーに使われていた映像はすべて黒影の先輩もしくは木ノ花先生がいる時のものだった。僕たちが三人ないしは二人で話している時の映像はなかったから、撮影者の春秋先輩も僕たちのプライバシーは尊重してくれていたんだと思う。このことから蓮と陽菜はどんなことが考えられると思う?」


「逆に使われていなかった映像、という観点で考えると、金山統括庁で熱田大臣と会っていた時と例の仙人爺さん……言いにくいからもう、じっちゃまって呼ぶ。じっちゃまの映像がなかったな……。あ、そういえば陽菜はじっちゃまの件は……?」


「うん、歓迎会の会場に向かう時にざっくりだけど狭霧から聞いたよ~。でも陽菜、まったく覚えていないんだよね、そのじっちゃまのこと。多分、眠らされちゃったからだと思う」


「セキュリティという観点で考えると、金山統括庁はとても厳重だった。端末を使った本人認証、金属探知機、ボディチェック。僕らは荷物らしい荷物がなかったけど、カバンを持っていた木ノ花先生は手荷物検査も受けていた。現役の黒影で、しかもとても優秀と言われる春秋先輩なら、そう言ったものもクリアできそうな気はする。とはいえ、歓迎会の余興の映像をとるために、ルールを破るようなリスクは侵さないだろうね。ましてや余興の映像を撮影する許可をとる……なんてことはしないと思う。そう考えると、熱田大臣と面会している時、じっちゃまが応接室に現れた時の映像がなかったのは、当然と言えば当然だろう。金山統括庁内の隠し撮りはしていない」


「となると、実は佐保先輩がじっちゃまを隠し撮りしていたのでは、っていう線は消えるわけだな、狭霧」


「でもでも、もし隠し撮りしていたとしても、春秋先輩にその映像を見せてください、って言うの、怖くない~? 見せてくれない気がするよぉ」


「陽菜、それは先入観だ。案外頼んだらあっさり見せてくれるかもしれないよ」


「え~、そうかなぁ~」


「陽菜、蓮、聞いてほしい」


狭霧に言われ、俺と陽菜は狭霧を見た。

この投稿を見つけ、お読みいただき、ありがとうございます。

毎日更新しているので、また読みに来ていただけると幸いです。

引き続きよろしくお願いします。


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