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完結●黒影  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中


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不吉な兆し

「……えっと、じゃあ次、夜見くんに自己紹介でいいかな?」


俺が沈黙していたので、だん先輩が気遣ってくれた。


俺はまだひまり先輩と一問一答をしていたかったが、そうもいかないので「あ、はい」と渋々返事をした。


……だん先輩は親しみやすく気配りの人で何も悪くない。単純に俺がこの人と話したくないだけだ。


「じゃあ夜見くん、お願いします」


「ああ、わたくし、ですか。いいですよ。毎年、この自己紹介というのがありますが、わたくしのことなんて話す価値はないんですけどね。ふふ」


話すときは相手の目を見るのが礼儀だとわかっているのに、本能的に見ることができず、俺は口元を見るようにした。


「わたくし、わたくしの名前は四尊しそん 夜見よみ、第十一期入隊です。皆さんわたくしの呼び方は様々ですね。ただ、くん付けで呼ぶのは……そう、だん君だけですね。ふふ」


よくわからない汗が背中を伝った。


「で、では夜見先輩と呼ばせていただきます」


「ええ、どうぞ。わたくしは黒雷くんと呼ばせていただきます」


夜見先輩はそう言ってから


「わたくしからお聞きしたいことがあるのですが、よろしいですか?」


「えっ……」


夜見先輩から質問されると思わず、俺は思わず顔を上げ、その目を見てしまった。


黒く、暗い、深い、闇が俺のことをじっと見ている……。


「では、貴様はあの、あの、三名の死亡者を出した第三次掃討作戦を指揮した、天野頭領の息子だと言うのか」


怒りと憎しみをはらんだ突然の大声に、話し声は止み、祭囃子の音楽だけがむなしく流れていた。


天野頭領の息子……って狭霧のことだよな? 三名が死亡? その指揮をとったのが狭霧のお父さん……?


初めて聞く情報に驚きながら、俺は声のした方を見た。


すると緋色の襟のセーラー服を着た少女が狭霧の胸ぐらいをつかみ、今にも殴りかかろうとしていた。


あの子は確か天津頭領の後ろでうつむいて座っていた少女では……。


「えっとぉ、佐保先輩、急にどうしたんですか? 狭霧くんも驚いていますよ、落ち着いてください」


えま先輩が狭霧とつかみかかるセーラー服少女の間にはいり、なんとか事態を収めようとしていた。


「おや、おや。やはり天野狭霧くんは我々の仇でしたか。しかし、佐保さん、こんな大勢の前で感情を爆発させるとは。ダメなお方ですね。ふふふ」


夜見先輩がつぶやいた独り言が耳に入ってきた。


狭霧につかみかかっている少女は佐保というのか。


「……許せない」


聞いているこちらの胸に突き刺さるような、泣き声とも叫び声ともつかない声をだし、佐保という少女は、狭霧に拳を振り下ろそうとした。


間に合うわけはないとわかっていたが、俺は立ち上がって狭霧のところへ向かおうとした。


「待って」


そんな俺の腕をつかんで止めたのはだん先輩だった。


俺はだん先輩を見て、すぐに狭霧の方に目を戻した。



俺が狭霧から目を離したのはほんの一瞬だった。だが、狭霧に拳をふりおろそうとした佐保という少女の姿はなく、狭霧と、バツの悪そうなえま先輩がそこにいるだけだった。


佐保という子はどこにいったんだ……?


すると今度は狭霧の舟とは少し離れた場所にスポットライトがあたり、誰かが立ち上がった。


……!


マイクを持った将校風のアジアンビューティー、そう沫那美先輩だった。


「えー、例年熱い歓迎会、今年もヒートアップしてきました。ここでさらに皆さんの熱があがるようなスペシャル・ムービーをお送りしたいと思います、と、天津頭領からの伝言です」


まさに誰かから言わされている感たっぷりの棒読みだった。


そして間髪をいれず、桜と俺たちの空いている空間にスクリーンモニターが現れ、映像が流れ始めた。


「え~。陽菜、温泉大好き♡」


突然、陽菜の声が流れ、陽気な音楽と共に、陽菜の顔写真、その下に「温泉と甘いもの大好き玉依たまより 陽菜ひな」とテロップが出た。


会場からヒューという口笛や、「可愛い~」「僕も温泉好き~」と囃し立てる声が起こった。


「ねぇ、君、ものすごいイケメンだよね、名前は?」


この声はセクシー谷間のリツコ先輩!


「はじめまして、僕は天野狭霧と言います」


たまたま流し目になったその瞬間を切り取られた狭霧の顔写真には、「谷間にも動じない天野あめの 狭霧さぎり」のテロップ。


会場中で爆笑が起こった。


次に登場するのは俺だよな……。


息を飲んでスクリーンモニターを見守った。


するとぽかんとあいた口といびきをかいている俺の顔がアップで映し出された。


会場に響き渡るいびきにクスクス笑いが聞こえてきた。


「黒雷くん、頬にクリームがついているわよ」


木ノ花先生の声が流れ、頬についたクリームがアップになると、会場は大爆笑。


「育ち盛りには昼寝は必要です。初日に二回昼寝した黒雷くろいかづち れん

というテロップで会場はさらに笑いに包まれた。


そして三人の写真が並べて表示され、そこに「密着! 新入隊員の熱い一日」とタイトルが出ると拍手が巻き起こった。

この投稿を見つけ、お読みいただき、ありがとうございます。

今回の更新分で一癖も二癖もある黒影の仲間が続々登場します。

ぜひお楽しみください。


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