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完結●黒影  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中


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魔女っ娘のような先輩

すごい……。


舟におかれた卓は結構大きく、船盛りのお刺身やてんぷら、お寿司など豪華な料理が置かれていた。


つい、食べ物に目が行ってしまったが、俺の正面に一人、左の席に一人、それぞれ先輩が座っていた。


だん先輩は俺の右の席に腰をおろすと「まずは乾杯だね」と、俺にグラスを渡し「これ、オレンジジュースね」と言って、瓶に入ったオレンジジュースを注いでくれた。


「ひまり先輩もオレンジジュースでいいですよね?」


「うん。だんちゃんありがとう」


だん先輩がひまり先輩と呼んだ、俺の左に座る女子は、魔女っ娘の装いをしていた。とんがり帽子にローブ、そして丸メガネにボブの髪と言い、アニメに出てきそうな魔女っ娘だった。


可愛らしいけど先輩なんだよな……。


それにしてもみんな、今日は歓迎会だから仮装しているのかな……?


「夜見くんは……日本酒だよね」


「ええ、手酌でやりますので大丈夫ですよ、だん君。ふふっ」


……。


俺の正面に座る「夜見くん」と呼ばれた男の人は、「くん」というより「さん」がふさわしい大人に見えた。そして初対面なのにとても失礼かもしれないが……不気味だった。


ぼんぼんの明かりのみなので、光の当たらない場所は当然暗いのだが、この人の周りの暗がりは闇のように深かった。さらに漆黒の黒髪が体を包み込むようで、薄墨色の着物を着ているのだが、それさえ墨のような色に見えてしまっていた。


何よりも目が……。黒目がとても大きく、なんだか深淵の底に引きずり込まれそうな瞳だった。



俺の視線に気づいたのか、こちらを見た。


本能的に俺は「だん先輩飲み物は? 注ぎますよ」と視線をそらしていた。


「蓮くん、ありがとう! 僕はねあらかじめほら、梅酒ソーダを用意していたのでした」


だん先輩は天使みたいな笑顔をみせると


「では、蓮くん、入隊おめでとう~」


乾杯の音頭をとった。


「おめでとう」「おめでとうございます、ふふふ」


「あ、ありがとうございます」


とりあえずオレンジジュースを飲み干した。すぐにだん先輩がグラスを満たしてくれようとしたけどそれは辞退し、自分で瓶から注いだ。


「では、目の前の美味しい料理を食べながら、自己紹介~! まずは僕から」


そう言ってだん先輩は自己紹介を始めた。


「僕は火虞槌かぐつち だん、第十期入隊だよ。同期で残っているのは洩矢翔くん。翔くんは……ほら、あそこにいる平安貴族。結構イケているでしょ? この東京ではアイドル的な人気なんだよ。あ、でも、蓮くんの同期の天野狭霧くんもかなりの美形だよね。多分、翔くんと人気を二分することになりそうだなぁ」


「洩矢先輩も狭霧もイケメンですよね。黒影でイケメンって最強すぎますよね……」


「うん、うん。そうだよね」と返事する合間にだん先輩はかっぱ巻きをぱくっと食べていた。


「ちなみに翔くんは水の中が好きなんだよ。お風呂でもよくリラックスしすぎてゆでだこになって発見されている。逆に僕は泳ぎが苦手なんだよねー。もちろん黒影の隊員として金槌というわけにはいかないから、猛特訓したけど……。きつかったよ」


そう言ってお刺身をぱくっと食べた。


「泳ぎは苦手だけど、パルクールは得意だよ。たまに外出許可をもらって、廃墟を探検している」


「それはすごいですね。身軽に動けるのって憧れます」


「興味があったら言ってね。いつでも誘うよ」


だん先輩はにっこり笑って野菜のてんぷらをぱくっと食べた。


「じゃあ次は、ひまり先輩、自己紹介をお願いします」


だん先輩にふられると、ひまり先輩は箸をおいて、俺を見た。


「私は思井おもい 日葵ひまり、第七期入隊。基本的に一人で読書するのが好きなタイプですが、聞かれた質問にはちゃんと答えます。黒雷くん、何か質問はありますか?」


「え、あ、あ~、先輩のことはなんとお呼びすればいいですか?」


「そうですね。後輩からはひまり先輩と呼ばれていますが、別にひまりでもひまりちゃんでもなんでも構わないですよ」


「あ、ではひまり先輩と呼ばせていただきます」


「問題ないです」


沈黙(ひまり先輩)


沈黙(俺)


俺が質問しないと会話にならない⁉


「あ、えっと、ひまり先輩は読書が好きということですが、最近読んでいる本は何ですか?」


「今読んでいるのは原文の源氏物語です。データベースで原文を見つけたので。ちょうど宇治十帖にはいったところです」


「古典がお好きなんですか?」


「好きなジャンルではありますね」


沈黙(ひまり先輩)


沈黙(俺)


「これまでどれぐらいの本を読まれましたか?」


「データで読んだ本は……」


ひまり先輩は端末を取り出し確認した。


「九千八百四十六冊ですね。紙の本は分からないですね。自宅には五百冊ぐらい本がありますが、図書館でお借りして読むことも多かったので」


「……すごいですね。それだけ読んで、内容とか全部覚えているんですか?」


「はい」


真顔で応えているから、本当に覚えているのだろう。

すごいな。この人の頭には人類の英知が詰まっている……。

きっと「地球上で最強の哺乳類はなんですか?」って質問したら、ちゃんと答えてくれるんだろうな。

この投稿を見つけ、お読みいただき、ありがとうございます。

今回の更新分で一癖も二癖もある黒影の仲間が続々登場します。

ぜひお楽しみください。


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