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完結●黒影  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中


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山を乗り越える

まず佐保先輩は陽菜が姉であると聞いても、実感がゼロで、最初、まったく信じようとしなかった。


だが、陽菜が裁縫が好きで、姉と同じようなデザインをスケッチに描いているのを見て、陽菜が竜美なのだとようやく理解した。理解したものの、「お姉ちゃん、会いたかった!」とはどうしてもならなかった。


そして佐保先輩の両親も、陽菜との対面が終わった後、手紙を送ってきて、その苦しい胸中を明かした。


「娘が生きていると知り、心より嬉しかったです。育ての親に愛され、また周囲の人達に可愛がられて育ったと分かる、とても素敵なお嬢さんでした。服をデザインしたり、裁縫が好きなど、確かに竜美との共通点はありました。では娘と呼べるかというとそれは違います。とてもいいお嬢さんですが、育ての親から引き離し、この子の母親、父親になれるかというとそれは違うというのが正直な想いです。この方の成長を見守り、成長を喜び、共に時間を過ごし、これからも過ごしたいと願う、育ての両親との幸せを壊すつもりはありません。どうか今の家族の皆さんとさらに絆を深めてください。もちろんおなじ黒影に所蔵する佐保とは引き続き仲良くしていただきたいですし、またいつでも遊びに来てくださいね」


そんな趣旨の手紙を読み、陽菜は安心した。何よりもこの手紙を見て、育ての親の安堵した顔が忘れらないと陽菜は言った。


育ての親より産みの親、という風潮はあったし、陽菜も実際に会ったら春秋家の両親に心が動いてしまうのだろうかと不安になったりもした。


だが、そんなことはなかった。


春秋家の人達は、優しく穏やかで素敵な人達だった。


でも、春秋家で美味しいミルクレープを出された時、「あ、お母さんもミルクレープ好きだったよね。美味しいからどこのお店から教えてもらって、買って帰ろうかな♪」と陽菜は考えていた。


その瞬間、やっぱり自分の両親は春秋家の人じゃないんだ、と改めて気づいたのだという。


ただ、春秋家の人の心からのもてなしを受けていると、育ての親のことばかり考える自分に罪悪感を覚えていた。だから、春秋家から手紙が届き、その内容を理解した時、陽菜は心からホッとしたという。


「ある意味赤ん坊までリセットされ、違う人間の手で育てられると、まったく異なる人間に育っていくのだね……。口にする食べ物、環境、両親の育て方、いろいろな要因で赤ん坊の人格は形成され、大人になっていくのか……」


陽菜と俺の話を聞いた狭霧は感慨深い表情を浮かべた。


「僕はどちらの家族を選ぶか、という選択もなかったし、祖父母が実は両親だったぐらいで済んだのは幸運だったのかな。祖父母は……いや両親は、僕のじいちゃん、ばあちゃんではないと分かったのだから、もっと若々しくならないと、なんて言い出して、母はエアロビクスをはじめて、父は白髪を染めるようになったよ。あとはやっぱり、亡くしたと思った息子が生きていたのは嬉しかったみたいだな。天野頭領を育てた自分達が育てたから、やっぱり僕には天野頭領に共通する部分はいっぱいあるって、祖父母……両親は言っていたよ。おそらく、第三次討伐作戦に参加していたメンバーに話を聞いたら、天野頭領と僕の共通点は結構あるんじゃないかな。うん。今度一人一人に話を聞きに行こうかな」


そんな会話を三人でしたりもした。


俺たちはそんな感じで、一つの山を乗り越えたが、現在みんなで奮闘して乗り越えようとしている山、それがひるこの件だった。


この投稿を見つけ、お読みいただき、ありがとうございます。

家族の問題を乗り越えた三人。次は……。

引き続きお楽しみください。

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