家族
ひることの対話が終わった瞬間から物事がものすごいスピードで動き出した。
一番多忙を極めたのは熱田大臣だった。
これまで隠蔽されていた黄泉の国の存在を明らかにし、第三次討伐作戦の真実を伝え、俺たち三人の出自を世間に公表したのだから。
もちろんこの公表を受け、俺も陽菜も二つの家族の存在を目の前につきつけられることになった。
だが実際に鹿島建御の家族に会ってみると、俺の中の混乱は静まっていった。
鹿島建御の両親は、息子は亡くなったととうの昔に受け入れていた。そして俺には新しい家族がいて、自分たちと家族としての記憶がないことが分かっていた。
実際に会った時もお互いにぎこちなく、よそよそしさをぬぐえなかった。もちろん話をする間に打ち解けることはできたが、俺の中に鹿島建御を見い出すことはできなかったようだ。
「ごめんなさいね。どうしても私たちの中の建御とあなたは違い過ぎて……。でも何か困ったことがあったら頼っていただきたいですし、私たちのことは遠くの親戚とでも思ってこれからもお付き合いくださいね」
そう鹿島建御の母親は言うと、俺と握手した。
とてもいい人そうなのに何も思い出せないことが申し訳なく、また全くの別人として成長してしまったことが残念だった。ただ、俺としては混乱したアイデンティティーが落ち着き、これからは黒雷蓮として生きていく覚悟ができた。
鹿島建御の家族と会った後、俺は実家に帰ることになっていた。
みんな、どんな気持ちで俺の帰りを待っているのだろうか。家の前に立つと、緊張で足取りが重くなってしまった。
いつも通りにするんだ、いつも通りに。
俺はドアを開けると、大きな声で「ただいまー」といつものように言った。
玄関には両親とじいちゃんが迎えに来てくれた。そしてその顔を見た瞬間、俺の胸はこみ上げるものでいっぱいになった。俺の家族はこの人達しかいない、という強い気持ちが沸き起こった。
母親はほんの数秒の間に表情が目まぐるしく変化していた。
もし俺が鹿島建御の息子として生きていくと決断したならば、それを受け入れなければいけないという諦め。でも諦めきれないという気持ち。笑顔で迎えようとしても不安で涙が堪え切れない……。その感情の揺れが表情から感じ取れた。
父親は父親で、心の揺れを見せまいと歯をくいしばり、への字顔になっていた。普段、そんな表情をしない父親の顔を見たら、俺の涙腺は崩壊だった。
じいちゃんはいつもの穏やかそうな顔のままで、既に無言で涙を流していた。母親や父親の様子を見ていたら、涙が出ないわけがなかった。
「父さん、母さん、じいちゃん、出来の悪い息子だけど、これからもよろしくね」
そう言って俺は三人に抱きつくと号泣していた。
するとついに母親も父親も泣き出し、俺たちは数分間、玄関で泣き続けることになった。
俺が家族との件を陽菜と狭霧に話すと、陽菜も春秋家を訪問した時のことを聞かせてくれた。
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