緊張の対面
金山までヘリだとあっという間だった。
先に到着していたじっちゃま達は、既に広場の中央で待機していた。
俺たちがヘリを降りると、待っていた金山統括庁の職員が、ひるこに渡すチュニックと花冠を台車にのせ、運んでくれた。
奈美先輩、凪先輩、じっちゃま、狭霧、俺、陽菜、芽衣さんと横一列に並ぶと、じっちゃまが金山の入口に向け、手を振った。すると入口にいた職員がゲートへ向かった。
そうか。封印の桃の実をどけないと、ひるこが出てこられないのか。
「いよいよひるこが来ます。どうかよろしゅうお願いいたします」
じっちゃまの言葉に奈美先輩と凪先輩が頷いた。
金山の入口から、先ほどの職員と神職三名が出てきた。先頭の神職が籠を持っており、封印の桃の実がしまわれているようだった。四人はジープに乗ると金山の入口から離れた。
それからしばらくすると、金山の入口に見慣れた女性の上半身が見えてきた。
ひるこが来る……。
俺たちは緊張で無言になった。
戦いの記憶はまだ新しく、どうしても警戒態勢を取ってしまう。
ひるこが金山の入口からゆっくり出てきた。すぐに俺たちを見つけ、龍のように胴体をうねらせやってきた。そして五メートルほどの距離をあけ、ひるこは地面に胴体をつけた。そして鎌首を持ち上げた。
ひるこの全長は十二メートル。鎌首をもたげられると、目の前に突如ビルが出現したかのうようなインパクトがあった。
「今日は…」
「ひるこ、あなた、どれだけの人間に迷惑をかけているか、分かっているのですか?」
じっちゃまが話し始めたのを遮り、口を開いた人物がいた。陽菜でも芽衣さんでもない女性の声、聞き慣れた声とは全然違うが、奈美先輩…つまりひるこの母親である神だ。
「部屋でおとなしくていればいいものを、黄泉の国の軍勢まで巻き込んで、十二天将を悪用し、自分が何をしているか理解しているのですか?」
『……』
「そうやって注意されるとすぐに黙り込む。黙るということは自分の罪を認めていることになりますよ。早くここにいる皆さんに謝罪なさい」
『……私は、何も悪いことしてない』
「自分がやっていることが理解できてないのですか?」
「あの、すみません」
俺は黙って聞いているつもりだったが、つい我慢できず割り込んでしまった。
「親子関係に口出しするのは良くないことかもしれませんが、言わせてください。約千年ぶりに会う子供に対しての第一声が、怒りの言葉ってどうなのですか? 自分がひること同じ立場だったら、ガッカリです。『元気にしていたか?』とか『会えない間も片時も忘れたことはなかった』とか、もう少し言い様があるのではないでしょうか。そんな頭ごなしに叱られたら、謝罪する気にもならないと思います」
ひるこの母親である神は、黙って俺の言葉を聞いていた。俺は続けてひるこに声をかけた。
「俺は、君に最初に手紙を書いた鹿島建御改め黒雷蓮です。俺は君の両親が神だと聞いて、それは立派な人物なのだろうと思っていたけど、違うようだ。君がここ最近、俺たちが暮らす町やこの金山でやったことは、沢山の人間に迷惑をかけることで、君はそれについて謝罪する必要があると、俺は思っている。俺が大切と思う人に怪我をさせたり、苦しめたことに、俺が頭に来ていることも事実だ。それを踏まえても、俺はひるこ、君に同情する。こんな母親に育てられたら、黒い影を巻き込んで無茶したり、十二天将を裏結界で使役してやろうと考えてもおかしくないと思った。こんな親のことなんて、もう忘れて、俺たちと平和に暮らそう。手紙に書いた通り、今住んでいる場所はもっと快適な場所になるようにリフォームしよう。そしてもっと話をしよう」
俺が話し終えると、間髪を入れず狭霧が口を開いた。
この投稿を見つけ、お読みいただき、ありがとうございます。
ついに緊張の対面が始まりましたが……。
引き続きお楽しみください。




