狙い
「あの、先ほど狭霧さんは四尊さんの行動に違和感を覚えたと言っていましたが、こう考えると必然だと思いませんか」
「どういうことですか、芽衣さん」
狭霧が芽衣さんを見た。
「須虞那医師が四尊さんが神社を目指すということを報告すれば、必然的に神社の警戒態勢は強化されます。四尊さんは少しでも、神社に向けられている警戒を逸らさせたいと思ったのではないでしょうか。そのために選んだのが金山お台場総合病院だったのでは? 病院はこの神社から絶妙な距離にあります。神社に注がれた注意を病院へ向けさせるのはもちろん、もし神社に配備した人員を病院へ向かわせれば、神社の警戒態勢は少し弱まりますし、病院から神社へ駆けつけるのにも時間がかかる。それが狙いだったのでは……」
「ということは、制服を奪った警察官をあえて見つかりやすい路地に放置したのも、佐藤さんという男性が病院の駐車場で見つかったのも、みんなの注意を病院へ向けるためだったということですね」
「はい」
「狭霧、こうも考えられないか。夜見先輩は自身の脳に影の血が潜むのを良しとしていた」
「えっ⁉……あ、ごめんなさい。私のことは気にせず、話を進めてください」
そうか、芽衣さんは夜見先輩と影の血の件は知らなかったんだ……。
「あ、もし聞かない方が良ければ席を外します」
「でも芽衣さんの推理が事態の解決につながるかもしれない」
俺は狭霧を見た。
「四尊先輩の件は隠し通せることとは思えません。もしもの時は何も知らないふりを……」
狭霧の言葉に芽衣さんはこくりと頷き、浮かせかけた腰を下ろした。
俺は話を再開した。
「夜見先輩は自身の脳に潜む影の血を使い、恐らく悪霊……幽霊に影の血を浸食させ、黒い影として操っていた可能性がある。天津頭領はその影の血を夜見先輩は逃した、と言っていたけど、影の血は旦那三人衆の時のように少量でも存在できて人を操ることができる。つまり、夜見先輩はすべての影の血を逃がしたのではなく、一部を残していたとしたら? 少量だと感知されにくいし、もしかしたら感知されることを踏まえて何か対策を練った可能性もある。それで夜見先輩の中に影の血はないと判断してしまったが、実は残っていた。そして二人の警察官、そして佐藤さんという男性に影の血を浸食させたうえで、金山お台場総合病院へ搬送されるように仕向けた。この町で緊急搬送される病院は金山お台場総合病院しかないから必然的に三人は同じ場所に搬送される。だから警察官を路地に放置した。佐藤さんは連れていかれたのか、逃げたのか分からないけど…」
「うん、それで」
狭霧が先を促した。
「そしてみんなの注意を神社からそらすため、病院の地下を爆破した。警察官か佐藤さんのいずれかを操って。もしかしたら結界で探知されたものの正体は、影の血が浸食した幽霊かもしれない。だって病院で地下といえば、霊安室があるよな。つまり幽霊がいる可能性が高い。黒い影が現れたかも、となれば、黒影の隊員が病院へ向かう可能性が高くなる。しかもそういった緊急時に素早く動けるのは機動力のある沫那美先輩。病院の結界の異常検知、あれは沫那美先輩を神社から遠ざけるためだったのでは……? 夜見先輩としては、神社で黒影一と言っても過言ではない沫那美先輩と戦うことを避けたかったのでは?」
「! そうか! そうだ、そうだよ、蓮。早くそのことを天津頭領に伝えないと……」
「あ、みんなここにいたのですね」
声の方に顔を向けると、そこには奈美先輩がいた。
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夜見先輩の狙いとは一体⁉
引き続きお楽しみください。




