たった一人を見つけられない
「これだけ大勢が監視をしているのに、たった一人を見つけられないのか……」
端末から目を離さず、狭霧がつぶやいた。
「たった一人だから難しいのかもしれませんね」
芽衣さんの言葉に狭霧が反応した。
「そうか。複数人でウロウロしていると目立つが、一人だと紛れることができる。まだ人出がある時にうまく紛れ込んで――」
そこで狭霧は言葉を切り、俺と芽衣さんを見た。
「そうか。今、町を一般人として動き回ると目立つ。さっきだん先輩も帰宅勧告が出ているから人出は減ってきていると言っていた。ではどうしたら目立たないか? 今、町を歩き回って疑われないのは――警察官や警備員だ」
「そうだよ、狭霧! その通りだよ。天津頭領も夜見先輩は隠密行動に長けていると言っていた。警察官や警備員に変装して神社へ入り込もうと画策しているかも」
そこで狭霧は端末から木ノ花先生にこの考えを伝えた。
「天野くん、すごい。ライブチャネルへの書き込みを暫定許可するから、みんなに伝えて」
すぐに返信がきて、狭霧はイヤフォンマイクを装着し、今の情報を伝えた。その内容は音声として流れ、また文字として変換され、隊員たちに伝えられた。
すると……
あまつ:
天野くん、素晴らしい。それは盲点だった。
各位、現場の警察官の身分証と顔の確認を早急に進めるように。
だん:了解です
ひまり:了解です
あずみの:了解です
えま:了解です
続々とみんなが反応し、動き出した。
対人戦の経験がなく、対人戦のための武器を持たない俺たちにもできることがあった――。
しばらく待つと続々と報告が上がってきた。
ひまり:
神社周辺に配備されている警察官の本人確認完了。問題なしです。
あずみの:
検問中の警察官、および町の入口の第一結界に配備されている警察官の本人確認完了。
問題なしです。
かける:
金山統括庁から報告。建物内及び周辺に配備されている警察官及び警備員の本人確認完了。
問題なしです。
あまつ:
ひまり、阿曇、翔、了解だ。ありがとう。
みつる:
大通りから一本入った路地で下着姿で気を失っている二名の男性を発見。救急車を要請中。命に別状はなし。
顔写真を防衛本部に送り、照会中。
さほ:
こちら金山お台場署です。
町内を巡回している七十名の警察官の本人確認を依頼していますが、四十名の確認を完了。
残り三十名の確認も継続して行います。
また、巡回中の警察官から三名の少年を保護したとの情報がありましたが、照会の結果、四尊夜見ではなかったことを報告します。
あまつ:
佐保、報告ありがとう。
引き続きの本人確認と、四尊夜見の捜索を頼む。
さほ:
天津頭領、了解です。
えま:
金山お台場総合病院の屋上から報告。
病院の駐車場に気を失った警察官一名を発見。
所持していた身分証と顔写真が一致せず、防衛本部へ照会中。
春秋先輩、身分証の顔写真を送るので、お台場署での照会をお願いします。
さほ:
えま、顔写真受信完了。これから照会にかけます。
みつる:
こちら大通りで木ノ花教官と合流。これから神社へ向け移動しながら警戒します。
みつる:
照会結果でました。
路地で発見された男性二名は、金山お台場署に所属する巡査二名と判明。
名前は山本智明、鈴鹿浩紀。町内を巡回中に何者かに襲われたようです。
あまつ:
美鶴、その巡査二名の搬送先は金山お台場総合病院だな?
みつる:
天津頭領、その通りです。
えま:
巡査二名が搬送されてきました。状況確認してきます。
あまつ:
えま、頼んだ。
さほ:
病院の駐車場で発見された警察官姿の男性の身元が判明しました。
町内在住の三十六歳、個人経営の美容師、佐藤明憲です。
えま:
搬送されてきた巡査二名は処置中ですが、春秋先輩から報告のあった、佐藤明憲について報告します。
外傷は気絶した際にできた額の傷のみで、現在MRIの検査を行っています。
意識を回復した際に、少しだけ話を聞けました。
営業中に少年が店内に入ってきて、別の客が帰ると突然何かの薬物を注射されたそうです。
今注射したものは毒で、時間をかけて体内を巡る、解毒薬が欲しければ言う通りにしろと。
そしてその毒は自分が調合したもので、病院に駆け込んでも毒の正体を解析するには時間がかる。
解毒薬を調合する間にお前は死ぬと言われ、要求に従うことにしたそうです。
そしてその少年の要求は、警察官の制服に着替え、自分と一緒に町を歩くように、というものだったそうです。
あまつ:えま、その少年の特徴は?
この投稿を見つけ、お読みいただき、ありがとうございます。
この少年は何者なのか……?
引き続きお楽しみください。




