情報の共有
俺たちはてっきり社務所に案内されるかと思ったが、連れていかれたのは宿泊棟だった。
一階の食堂に神社の職員や警備の役目を担っていない神職者が集められていた。
そこに芽衣さんの姿もあった。
俺たちは芽衣さんのそばに行った。
「先ほどはお疲れさまでした。黒影の皆さんのお仕事を垣間見た感じで、不謹慎ながら興奮しちゃいました」
芽衣さんの頬はまだ高揚していた。
「それにしても四尊さんの件は驚きました……。この神社にいらっしゃることも何度となくあったのですが、人を傷つけるようなことをなさるとは……。春秋竜美さんと玉依さんの件はもう驚愕でした。ただ、お亡くなりになったと聞いていた春秋竜美さんが御存命であったことは、喜ばしいことと感じました。……黒い影に襲撃され、退行されていたのですよね、きっと。あ……、須虞那医師はその後、大丈夫だったのでしょうか?」
その言葉に狭霧が端末を取り出し、須虞那先生にメッセージを送った。
「血がなかなか止まらないと言っていたので、傷が深かったのかもしれません。その場合、傷を縫合したり手術をしている可能性があるのですぐに連絡はこないかもしれませんが、須虞那先生ならきっと大丈夫だと思います」
狭霧の力強い言葉に芽衣さんはホッとした表情になった。
「ところでなぜここに避難なんですか?」
俺が尋ねると、芽衣さんは「ああ、それは」と理由を教えてくれた。
宿泊棟は、何かあった時に町の人が避難してこられるように作られた建物だった。
そのため免震構造で窓には防弾ガラスを採用、地下は貯蔵庫になっており、食糧や水の備蓄もされているという。
「でも四尊さんおひとりなら神社に来る前に確保されそうですよね……」
俺も狭霧も芽衣さんの言葉に同意だったが、天津頭領はたとえ夜見先輩が一人で乗り込んでくるにしても手を抜けないと言っていた。
そう言うからにはなにか理由があるのだろう。
俺と狭霧は夜見先輩が黒い影とつながりがある可能性があり、それも踏まえての避難であることを説明すると、芽衣さんはかなり驚いていた。
この町で黒影といえば正義のヒーローというイメージだ。
それが黒い影と関係があったなんてわかったら……みんなショックだろうな……。
俺はふと顔を上げた先の掛け時計に目が留まった。
「夜見先輩が自転車で移動してきているとして、途中で確保されていなかったら、そろそろ到着してもいい時間だよな」
狭霧は俺の目線の先を追い、時計を見て「確かに」と頷いた。
「情報が入ってこないともどかしいですね」
芽衣さんの言葉に俺は閃いた。
「木ノ花先生に情報の共有を相談してみないか?」
「蓮、それはいい案だね」
俺は木ノ花先生にメッセージを送った。
すぐに返信は来ないだろうと思ったら、数分と待たずに返信が来た。
「黒影の隊員が連絡をとるのに使っているライブチャネルを、一時的に黒雷くんと天野くんに共有します」
俺と狭霧は早速ライブチャネルにアクセスした。
だん:
お台場ショッピングモールの屋上から報告。
こちらかの目視確認、および周辺を警戒する警察官から、四尊夜見の目撃情報はなし。
町の住民には帰宅勧告を出しているため、人出はかなり減っています。
子供はほとんどいないので、もしこの周辺を通過すれば発見できると思います。
みつる:
金山統括庁の警備は翔に引き継ぎ、移動しながら警戒中。
金山統括庁の周囲は閉鎖したので人通りはゼロ。これから大通りの方へ移動します。
あずみの:
町の入口でずっと見張っていますが、防衛本部から町へ入ってきた自転車は現在ゼロです。
車はすべて検問をしていますが、四尊夜見は見つかっていません。
検問は連絡が来て三分後から開始したので、すり抜けられた可能性はあります。
このままここで警戒でいいのか、指示をお願いします。
あまつ:
阿曇、検問はそのまま続け、第一結界での警戒を続けてほしい。
四尊夜見の発見は最優先事項だが、通常の警戒も必要だ。
あずみの:
了解しました。
なぎ:監視塔です。定時報告。こちらは異常なし
あまつ:
凪、定時報告ありがとう。引き続き頼む。
ひまり:
こちら一の鳥居です。
警察車両十台、警察官五十名の配備が完了しています。
裏門には警察車両五台、警察官二十名を配備済みです。
そのほかの神社敷地についてはドローン五十機を飛ばし、監視中。
わたしも引き続き上空より警戒を続けます。
「これは……すごい、ですね。皆さんの動きが瞬時に分かります」
芽衣さんの瞳が輝いた。
かくいう俺もこんな風に黒影隊員がやりとりをしていたことを初めて知り、驚いた。
ライブチャネルは文字と音声その両方に対応しており、隊員同士がリアルタイムでやりとりをしていた。
この投稿を見つけ、お読みいただき、ありがとうございます。
四尊夜見は今どこに……?
引き続きお楽しみください。




