なぜ?
「……分かったわ。それで四尊夜見はなぜ町へ?」
「町というより目的地は長清神社、本殿。神探しの最中の玉依陽菜の元へ向かっている」
「え、なぜ陽菜のところへ?」
驚いた狭霧が木ノ花先生より先に尋ねていた。
「四尊夜見は鎮静剤でずっと眠っていたのだけど、今日の午後になって、脳波に覚醒の反応が何度もあって……。夕方に看護師が鎮静剤を新たに投与したと報告を受けていたから、様子を見に行ったの。そうしたら四尊夜見は寝たふりをしていて、突然私に襲い掛かってきた」
そこで須虞那先生は大きく息をつき、皆が息を飲んだ。
辛そうな様子に心配したが、須虞那先生は再び話始めた。
「突然何をするのと尋ねた私に、四尊夜見は、自分を腫れ物のように扱い、こんな風に眠らせて隔離することが許せない、と怒りを爆発させ、お前たちの好き勝手にはさせない、春秋竜美のことも、と言ったのよ」
「四尊夜見は春秋竜美の現在の居場所や近況を知っているということ?」
木ノ花先生の問いに須虞那先生は頷いた。
「四尊夜見は、こう言った。お前たちは、再び春秋竜美を戦場へ送り出そうとしている、神探しの儀式は自分が阻止すると」
須虞那先生のこの言葉に全員が驚き、言葉が出なかった。
それってつまり、陽菜が春秋竜美ということでは……?
だが、俺に信じられないという気持ちはなかった。
黒雷蓮が実は鹿島建御だったのだから。
「紬、ありがとう。後はこっちで対処するわ。通話はもう切って、傷の処置をして頂戴。何かあったら連絡をいれるから」
木ノ花先生の言葉に須虞那先生は安心した表情を浮かべた。
「頼んだわよ、ハナノコ」
そして須虞那先生の画面はグレーになり「通話終了」の文字が表示された。
「ちょっと待ってね」
木ノ花先生がそう言うと、画面に「一時中断」と文字が表示された。
だがすぐに通話が再開された。
「ダメね……。四尊夜見の端末の位置情報を追えないかと思ったけど、駄目だった。とりあえず諸々のアクセス権を止めるよう指示を出しておいたわ」
木ノ花先生は俺たちと通話しながら、スクリーンモニターで防衛本部とも連絡を取っているようだった。
「黒雷くん、天野くん、芽衣さん、あなた達は神社にいるのよね。陽菜がタッツーだったという情報は一旦伏せて、四尊夜見が神社を襲撃する可能性がある、四尊夜見は先日防衛本部に現れた黒い影に触れ、少年の姿になっている、油断せず、見つけたら防衛本部へ連絡するようにと神社の職員に伝えて。私はこれから方々へ連絡をとりながら、そっちへ向かうわ」
「あの、木ノ花先生」
芽衣さんが木ノ花先生に話しかけた。
「熱田大臣ほか黒影の頭領など数名が、陰陽頭に呼ばれ、今、拝殿に集まっています。天野狭霧、黒雷蓮、玉依陽菜に関する重大事項の発表があるとかで」
「……そうなの⁉ そんな会合が行われているなんて知らなかった。でも陰陽頭は陽菜の神探しの最中なのでは?」
「それが緊急ということで、陰陽頭は神探しの儀式を続行し、父が……権宮司が陰陽頭の代理で会合の場に出ているようです。陰陽頭が用意した動画があるのでそれを見ながら会合は進んでいるようです」
「なるほど。もしかすると玉依陽菜が春秋竜美と陰陽頭も気づき、それを熱田大臣たちに伝えることにしたのかもしれないわね。……さっきの指示を訂正。黒雷くんと天野くんは拝殿に行って陽菜の正体も含め、さっきの情報を天津頭領に伝えて。芽衣さんは神社職員へ情報を共有して」
「はい」
俺たちは部屋を飛び出した。
一階に着くと、芽衣さんは社務所へ、俺と狭霧は拝殿へ向かった。
「君たち、今、拝殿には入れませんよ。重要な会議の最中です」
拝殿の警備に当たっていた神職者に俺と狭霧は止められた。
「はい。それを承知の上でここに来ました。緊急事態なんです。防衛本部から四尊夜見が医師を切りつけ逃走し、この神社に向かっているんです」
「え」
狭霧の言葉に神職者は驚いていたが、俺は「医師を切りつけ」という言葉に怒りが再びこみ上げていた。拳を強く握りしめ、なんとか爆発しそうな自分を鎮めた。
その時だった。端末が振動した。
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とんでもない事態が起きています。どうなるのでしょうか。
引き続きお楽しみください。




