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完結●黒影  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中


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嫌な予感

食事を終え、芽衣さんは夕食の膳を持ち、社務所に向かった。


俺と狭霧は一旦部屋に戻り、芽衣さんが戻るのを待った。


「何か、嫌なことが起こる予感がする」


窓から拝殿を見つめる狭霧の言葉に俺はドキッとした。


「……実は俺もなんか起きそうな気がして落ち着かない」


俺は狭霧の横に行き、拝殿を見た。


すべての扉が閉められ、四隅には警備を兼ねた神職者が待機していた。


「念のため、俺、戦闘服着ておく」


俺は戦闘服……忍者装束に着替えながら狭霧に尋ねた。


「狭霧はどうやって飛び方を覚えたんだ?」


「……。実はあの日、つまり坑道へ行った日、初めて飛んだんだ」


「うん、それは分かる。あれだけの高さと距離を飛ぶのは、あの日が初めてだったんだろう。でも飛ぶ姿のイメージトレーニングとか、体を浮かせるとか、そーゆう練習はしていたんだろう」


「いや、まったく。あと本当にあの日、初めて飛んだんだよ」


「え」


「なんというか、いつもの訓練でやっていた動きが役に立った感じかな。使った筋肉も、訓練で鍛えたところばかりだったし。思うに、体力作りでやっているトレーニングをちゃんとやっていれば、蓮も飛べると思う」


「えええ、いやいやいや、ないないない」


「そんなことないよ」


押し問答をしながら、俺は端末を胸元にしまった。


すると突然端末が振動した。


狭霧も同じで、慌てて端末を取り出していた。


須虞那先生からのモニター通話だった。


ボタンを押すと、須虞那先生が映った。


薄暗い場所にいるのか、須虞那先生の顔色は青白く、体調が悪そうに見えた。


「……よかった。つながった。今、私はこの通話をハナノコ、狭霧くん、蓮くんにかけているわ。これから話すことをよく聞いて頂戴」


するとそこに「あの、狭霧さん、蓮さん」という芽衣さんの声がした。


狭霧が戸を開け、俺は須虞那先生に、芽衣さんが通話を聞いても大丈夫か尋ねた。


「陰陽頭のお孫さんね……。いいわよ」


そこで狭霧が芽衣さんを部屋に入れ、狭霧は芽衣さんに自分の端末を見せ、会話を再開した。


「今から五分ぐらい前に、四尊夜見が医務室から脱走したの」


「え、本当に⁉ 警備には連絡した⁉」


四分割された画面に映る木ノ花先生が驚いて立ち上がった。


「もちろん。でもダメ。防犯カメラの映像を見ていたけど、突破されたわ」


「だって、子供でしょ、どうして……」


「子供の姿だから、警備の人はまんまと騙されたの」


「え……」


「四尊夜見が脱走した、ってなったら、警備の人は当然黒影として日々任務についていた彼の姿を探すわよね」


「あ……」

                                                                                          

「防衛本部で働くパパは今日が誕生日だったからサプライズでケーキを届けた、そして今から帰るところ、ってね。そんな嘘を平気で並べて、警備員をだまし、自転車でそっち(町)へ向かったわ」


「なぜ町へ?」


「…っう」


「紬⁉ ……まさかあなた、怪我しているの?」


木ノ花先生の言葉に俺たちは「えっ」と声をあげ、息を飲んだ。


「私のことはいいわ。四尊夜見が町へ向かった理由は……」


「よくない! 怪我の状態は?」


「……子供だからってね、私も油断した。ちょっと切られたけど、致命傷じゃないわ。血がなかなか止まらないけど、この通話を終えたらすぐに処置するから」


俺の心臓が激しく鼓動した。


夜見先輩が須虞那先生を攻撃した⁉


……俺は夜見先輩が怪しいと感じていたのに、結局何もしなかった。


もしあの時、もっと夜見先輩が怪しいと強く主張していれば……。


「蓮、落ち着け」


狭霧が俺の拳に自分の手を置いた。


芽衣さんも心配そうに俺を見た。


俺は深呼吸を何度かした。そして「大丈夫」と声を出さず、口を動かした。


二人は頷いた。


この投稿を見つけ、お読みいただき、ありがとうございます。

狭霧と蓮の予感が当たってしまいました。

引き続きお楽しみください。

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