ご機嫌の陽菜
部屋に戻ったが、狭霧も陽菜もまだ戻ってきていないようだった。
俺は着替えをすませ、食堂に顔を出した。
調理場では芽衣さん達巫女さんが昼食の準備中だった。
俺が顔出すと、芽衣さんは俺を見て息を飲んだ。
「……黒雷さん、神降ろしは無事終わったのですね。良かった~」
芽衣さんはそう言いながら、目尻に浮かぶ涙に気づいた。
芽衣さんは自分が涙ぐんでいることに驚き、困惑していた。
「なんだか黒雷さんを見ると、気持ちが高ぶってしまって……」
そこで俺は雷印を見せ、昼食の用意を手伝いながら、種明かしをした。
だん先輩は神気を見たり、感じると感動すると言っていたが、本当だった。
そうこうしていると、廊下の方から陽菜と狭霧の声が聞こえてきた。
俺はカウンターから「狭霧、陽菜」と声をかけた。
すると階段へ向かっていた二人が戻ってきた。
「……!」
陽菜が見たこともない服装をしていた。
上半身は黒地に紫の蝶が舞う着物、帯は紫。
だが下は黒地に白と紫のチェック柄のラップスカート風キュロット。
足元は黒のロングブーツ。
髪は左側でアップにしていてキュロットと同じチェック柄のリボンの飾り。
これは、そう、陽菜がスケッチしていた戦闘服だ。
「もしかして陽菜、それ……」
「そう~、陽菜の戦闘服♡ お風呂から出た後、夜の眠る前、朝起きた時とスケッチした戦闘服とにらめっこしてたの。夢の中にも出てきたりして。おかげで今日、ひまり先輩のヨガのレッスンの最中に、成功しちゃった!」
「すごい! とっても斬新ですね!」
「うわぁ、和装なのに洋装と見事とマッチしていますね」
「すごいオシャレです。モデルさんみたい」
巫女さんが調理場から出てきて、陽菜を囲んで大騒ぎだった。
陽菜はご機嫌で昼食の最中も戦闘服のままだった。
狭霧はいつもの着物に袴姿だったが、すでに天の羽衣を自在に操っているので、それがただの着物か天の羽衣か分からないレベルだった。
「……俺、一人出遅れている。まさか陽菜がそんなにスケッチとにらめっこしていたなんて……。寝る前にスケッチ見なきゃーと思ったけど、睡魔の誘惑に勝てなかった……」
俺は昼食の稲荷寿司を頬張りながら嘆いた。
陽菜は服が汚れないように器用に蕎麦をすすり、俺の嘆きに応えた。
「蓮は神探しと、今日は神降ろしも終わったんでしょー。陽菜はまだなんだから、嘆く必要ないよー」
「まあ、確かに……」
「それで蓮の神降ろしは無事成功したんだよね⁉ 絶対に成功している。だって蓮の香り変わったもん」
神降ろしでどんなことがあったかは話せなかったが、雷印については話しても構わないとじっちゃまに言われていた。だから俺は陽菜と狭霧に雷印について話すことにした。
「神降ろしは無事成功したよ。それで二回目以降の呼びかけの約束として、この雷印を神につけてもらった」
俺はドヤ顔で二人に雷印を見せた。
「これは初めて見ました。すごい……」
遅れてやってきたひまり先輩が、蕎麦と稲荷寿司をのせたトレーを手に持ったまま、かがみこんで俺の雷印を眺め、感嘆していた。
「ひまり先輩、座ってください」
陽菜が一つ席をあけ、ひまり先輩は陽菜がいた席に腰をおろした。
ひまり先輩は席についたものの、蕎麦にも稲荷寿司にも手をつけず、俺をしげしげと観察した。
テーブルの下の足までじっくり観察した。
「この雷印、ここを起点に神気が蓮くんの全身を包み込むように流れていますね。蓮くんの全身に淡い光が見ます。すごい。こんな状態、初めて見ました。この全身を巡る神気は黒い影や影の血を消失させるには十分なものです。黒い影は蓮くんに触れることができない。影の血は蓮くんに浸食することができない。完璧な防御形態です」
ひまり先輩はこれから俺が言おうとしたことを全部話すと、満足した様子で蕎麦をすすり始めた。
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ひまり先輩は好奇心旺盛です。
引き続きお楽しみください。




