第三の試練
ドサッと落ちた場所は堅く、受け身をとっていなかったら危なかった。
と同時に、「うわーっ」という叫び声と銃声、空気を切り裂く矢の音、石が地面に当たる音などが一斉に俺の耳に飛び込んできた。
瞬時にここがどんな場所か俺は理解する。
戦場……戦場のど真ん中だ!
俺は慌てて身を起こして周囲を見て驚愕した。
今まで見たことのない黒い影の数だった。
これこそが黄泉の国の軍勢……。
黒い影の大きさは様々だった。
大きいものは四、五メートル近くあった。
「もう、しつこい」
陽菜の声だ。
声の方向を目で探ると、少し離れた場所で陽菜が黒い影を相手に戦っていた。
陽菜、いつの間に……。
手にした鉈で次々と黒い影を倒していた。
「芽衣さん、振り向かず、とにかく走ってください」
狭霧の声だ。
俺の後方のちょっと遠い場所から、狭霧は剣を手に黒い影を薙ぎ払い、こちらへ向かって駆けてきていた。
そして赤ん坊を抱いた芽衣さんが、狭霧の後ろを必死に追いかけていた。
くぐもった唸り声に、俺は自分の周囲に黒い影が集まってきていることに気が付いた。
ものすごい数だ。
数の多さはもちろん、巨人のような黒い影に、あの恐怖が足元からこみあげてきた。
黒く、暗い、深い、闇が押し寄せてくる……。
これは――
鹿島建御が最後に感じた恐怖……。
武器を失い、なす術がなくなり、最後は沢山の黒い影に囲まれ、記憶を奪われていった鹿島建御の恐怖……。
いや、違う。
俺は足を踏ん張った。
「俺には武器がある。雷神よ、俺に力を―――」
天高く掲げた俺の指は神の権能を強く感じた。
「ここはお前たちがいる場所ではない。渦雷」
俺を中心に竜巻が起こり、周囲にいた黒い影は上空へ巻き上がっていった。そして竜巻の中では雷が暴れまくっていた。
「きゃあ」
陽菜の悲鳴。
俺はすかさず指を天に掲げる。
「陽菜を守れ、雷獣」
陽菜の声の方角に雷鳴が轟き、砂塵が舞い、そこには虎の牙、馬の体躯、狐の尾を持つ雷獣が現れ、黒い影に襲いかかった。
「蓮、さすがだ」
俺から少し離れた場所で、黒い影を薙ぎ払いながら進む狭霧が声をかけてくれた。
俺は返事をしようとして、息を呑んだ。
後ろを行く、芽衣さんの頭上に巨大な岩が飛んできていた。
「間に合ってくれ、帰還電撃」
芽衣さんの後ろに迫る黒い影の群れに、超高速で雷が落ちた。感電した黒い影がバタバタと倒れた。
雷は大地とぶつかり、反転した。
上空へ向かっていく雷のその軌道上には、あの巨大な岩があった。
高電圧の雷は放電時にものすごい衝撃波を発する。
この衝撃波が岩に直撃した。
岩は砕け、周囲にいた黒い影は岩の破片が直撃し、さらにバタバタ倒れた。
「黒雷さん、ありがとう」
芽衣さんが俺のそばを赤ん坊を抱き、駆け抜けていった。
良かった……。
その瞬間、体がぐらっと揺れ、俺は横たわっている状態で目覚めた。
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蓮が闇に恐怖を感じる理由が明らかになりました。
引き続きお楽しみください。




