神降ろしの儀式
じっちゃまは簡単に神降ろしの手順を説明してくれた。
じっちゃまは昨日と同じように祈祷を行い、俺は神に呼びかける。
神が応じてくれたら、いかなる理由でその権能を必要しているのか、説明を行う。
俺の場合、黄泉の国の軍勢が度々現れ、人的被害も出ていることから、人々を守るために、その力を貸してほしいということを説明する。
その際、神はこの人物に一時の権能を貸すに値するか見極めるための試練を与えることもあるという。その時は全身全霊でその試練に応えるようにする。
そして無事、権能を得ることができたら、感謝の気持ちを捧げ、そして次回以降、この権能を使わせていただくための呼びかけの約束を取り付ける。
これが今回俺に与えられたミッションであり、神降ろしの儀式だった。
説明を終えたじっちゃまは、早速祈祷を始めた。
俺は昨日と同じように、縁のある神、雷神に呼びかけた。
―さあ、始めよう。
「はやっ」
思わず声が出てしまった。
―何か言ったか?
「いえいえいえ、よろしくお願いします」
―では俺から問う。汝はなぜ我が権能を求めるか?
「はいっ。俺……いやわたくしは、黄泉の国から中つ国にやってくる、黄泉の国の軍勢、黒い影と戦うための部隊に所属しています。わたくしの友人は何度も黒い影に命を狙われています。また、その友人を狙った黒い影のせいで町が破壊され、また、黒い影に利用された一般人もいました。わたくしは友達を、町の人を、仲間を守りたいんです。わたくし自身、これまで以上に訓練にも励みます。だからあなたの権能をわたくしに貸してください」
―では俺から三つの試練を与える。
その瞬間、世界が一変した。
真っ暗な闇の中、ものすごい強さで風が吹き、雨が俺に打ち付けてきた。
俺の全身はあっという間にびしょ濡れになった。
なんだ、ここはどこだ⁉
雨が目に入るので、目を長く開けていることができなかった。
息を吸おうとすると、雨水もはいってきてしまい、苦しい。
「蓮、助けて」
耳をすますと、声が聞こえた。
俺は声を頼りに前へ進んだ。
前へ進むと轟音が聞こえてきた。
俺はなんとか目を開けた。
目の前に広がるのは濁流渦巻く川だった。
雨と風で、川は荒れ狂っていた。
「蓮――」
また声がした。
俺は目を凝らして、驚愕した。
荒れ狂う川の中に、かろうじて見えている中洲があり、そこに陽菜と狭霧がいた。
なんで、そんな場所に……!
二人は交互に助けを求めて手をふり、声を上げた。
俺はあたりを見渡した。気づくと俺の背後はうっそうとした森で、雨風で幹がきしむ音、葉がばさばさいう音が聞こえた。
「!」
森の中にボートが放置されていた。
俺は駆け寄った。
ボートの中にはロープ、救命胴衣が一つ、大きな鉄のくいが一本。
ボートで中洲まで行くのはまず無理だ。
ということは、このロープに救命胴衣を結び、さらにこの重い鉄の杭にロープを結び付け、中洲に投げる。ロープの端はこの木に括り付けておく。杭を中洲にさして、救命胴衣を着て、ロープを伝ってこちら側に渡る……。
目の前にある道具で考えられる救出方法はこれしかなかった。
だが、これじゃ一人しか助けられないのでは?
それに救命胴衣があるとはいえ、濁流に飛び込むなんて危険すぎる……。
どうすれば……
俺は背後にある大木に目を向けた。
この太さ、この高さ、これならいける。
俺は中洲にいる陽菜と狭霧に声をかけた。
「上流に二人とも移動しろ」
二人は頷き、中洲の上流よりに移動した。
「雷神よ、俺にこの一時、友を助けるためにその権能を貸してくれ」
俺は声を張り上げて叫んだ。
―良かろう。
「大地に根を張る大木よ。わが友を助けるために協力してくれ」
俺はそこで人差し指に神経を集中させ、叫んだ。
「落ちろ、白雷!」
ものすごい雷鳴と共に、俺の背後にあった巨木からバリバリという音が響き、鈍い音と共に、ぱっくりと二つに割れ、ゆっくり倒れた。
倒れた大木は中洲まで届いていた。
俺はロープに杭と救命胴衣を結び、端を別の大木に結びつけ、中洲に向けて投げた。
陽菜と狭霧は大木に沿ってロープを張り、中洲に打ち付けた杭にロープを結び付けた。陽菜が救命胴衣を着て、狭霧と二人でロープをつたい、倒れた大木の上をゆっくりこちらに向けて歩いてきた。
良かった。これで二人とも助かる。
そう思った瞬間、俺の体は反転し、どこかに落下した。
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次回更新は明日の朝7時に3話、夜21時に4話公開します。
次の更新タイトルは「第二の試練」です。
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