解析不可能?
「あ……俺、じっちゃまに聞いたのかな? 黒い影の血が、幽霊に浸食すると、それは悪霊になるって」
俺は雷神から聞いた話を思い出していた。
悪霊という言葉に陽菜が一瞬びっくとしたが、深呼吸をして恐怖を克服しようしているのが感じられた。
ここ最近いろいろあったから、幽霊がダメだと言っていられないと思うようになったのかな……。頑張れ、陽菜。
俺は心の中で陽菜にエールを送った。
「へえー、悪霊の正体が影の血の浸食とは……知らなかったな」
阿曇先輩はそう言った後、「待てよ」といい、箸をおいて、腕組みをしてつぶやいた。
「幽霊は、黄泉の国に行き、黄泉の国の住人になる。黄泉の国の住人になるということは、黄泉の国の食べ物を食べ、黄泉の国に帰属することを意味する。黄泉の国の軍勢は、この黄泉の国の住人がなるものなのか? すなわち、黒い影は黄泉の国の住人なのか? もし黒い影が黄泉の国の住人であるならば、黄泉の国の住人になる前の幽霊も、黒い影と言えるのか? 影の血に浸食された幽霊――悪霊は、影の血に浸食された黒い影とも言えるのか?」
「黄泉の国の軍勢は、黄泉の国の住人から選ばれる。軍勢の一員になると、黒い影と呼ばれるようになる。選出理由は様々だが、輪廻転生までの時間がとても長いものや、死してもなお安らかな時間が許されない黄泉の国の住人が、黒い影に選ばれることが多い」
阿曇先輩は初めて聞く神憑りの狭霧の声に目を丸くした。
「これってもしかして、狭霧くんと縁のある神の声……?」
小声で尋ねた阿曇先輩に、俺と陽菜は頷いた。
一方狭霧と縁のある神は話を続けていた。
「よって黄泉の国の住人と黒い影はイコールと言える。そして死者の魂……幽霊は、虚ろと我々は呼んでいる。人間の時の記憶と肉体を失い、空っぽだからだ。だがこの虚ろが黄泉の国にたどり着き、黄泉の国の食べ物を食すことで、血が通うことになる。血と言っても人間の血とは違う。お前たちの多くが黒くドロドロしたものと捉えているもののことだ。虚ろに影の血が浸食すると、それは血が通うのと等しい状態になる。つまり、虚ろに影の血が浸食すると、黒い影と見分けがつかなくなる。我々は魂の形で見分けがつくが、お前たちは構成を見るまでが限界。区別するのは至難の業だろう。そして黒い影は生者の記憶を食すが、影の血に浸食された虚ろはそれができない。そういった意味で、影の血が浸食した虚ろは黒い影とは違う。だから悪霊と呼ばれる。だが、お前たちでは黒い影と区別がつかない、ということだ」
「なるほど」
俺は納得だったが、阿曇先輩と陽菜は懸命に理解しようと頭をフル回転させているようだった。
「僕たちは黒い影に触れると、生命力を奪われると思っているけど、実は違うんだ」
狭霧は陽菜と阿曇先輩の理解を助けるために、二人がつまずいているであろう、記憶を食すとはどういうことかを説明した。すると陽菜と阿曇先輩はそのほかの気になることを狭霧に尋ね、理解に至った。
「そうか。そうだったのか。天野くん、すごいね。神憑り状態になると、これまで知らなかったことを知ることができるし、間違った理解が正される。素晴らしい」
阿曇先輩が驚嘆した。
「さっきの説明だと、悪霊と黒い影の区別は俺らでは難しいと言うことだったけど、ひまり先輩の分析にかかったら、悪霊と黒い影はどんな結果になるのかな? 解析不可能なのかな?」
俺の疑問に阿曇先輩が答えた。
「いい視点だ。ひまり先輩に聞いてみよう」
そう言うと、阿曇先輩は端末を取り出した。
「明日、君たちの護衛はちょうどひまり先輩だ。明朝会える」
俺たちは「よしっ」と頷いた。
「そういえば、蓮は神探し、成功したのか?」
狭霧が最後の餃子を頬張りながら俺に聞いた。
「あ、うん。無事にね。明日、早速神降ろしの儀式をやるってじっちゃまに言われた」
「え~、陽菜は神探しもまだなのに~」
「いやー、僕なんて縁のある神がいなかったんだよなー」
「え」と俺たちは阿曇先輩を思わず見てしまった。
「一応、リベンジもやったけど、駄目だった」
俺と狭霧はなんて言えばいいか困ったが、陽菜が反応していた。
「阿曇先輩、わたしも縁のある神がいない気がしてならないんです。そもそもそんなに信心深くないですし……。どちらかというと幽霊とかそっちの方がいるんじゃないかと信じていて怖いですし。それに……」
阿曇先輩は自分の自虐ネタが食われると思っていなかったようで陽菜の恨み節に困惑し、「そろそろ食事も終わったし、二階の部屋に行こうか」とタジタジだった。
二階に戻ると、満腹感と疲労で一気に眠気に襲われた。みんな早々に入浴をすませると、布団に倒れこみあっという間に眠ってしまった。
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