溢れ出す涙
「おい、無理をするのではない。体に馴染むの待つのじゃ。おぬしは今まで神と対話していた。神と対話する時、魂は体から離れると言われとる。もちろん魂が抜けるわけではない。体と魂の間にはがっちり命綱があるからな。それで今、意識が覚醒し、体の中に魂がおさまった。だが収まったばかりでまだ体に馴染んでいないから、もう少し横になっておれ」
「……はい」
「よろしい。ま、こうなったということは無事神探しが完了したということだ。よかったのう、蓮」
蓮……
その名前を聞いた瞬間、俺の目から涙がこぼれた。
「どうしたんじゃ」
「……じっちゃま、俺……」
涙が溢れ出して、俺は言葉を発することができなかった。
「どうしたというんじゃ。神探しが成功して嬉し泣きする者もいるが、ここまで号泣するやつは初めてじゃ。ちょっと待っておれ」
じっちゃまが視界から一度消え、いろいろと抱えて戻ってきた。
座布団、ポット、ティッシュ、湯飲み、急須、茶筒、お菓子の入ったかご。
そしてじっちゃまは、体を動かせない俺に代わって涙を拭いてくれた。
「あと少しの辛抱じゃ」
じっちゃまはそう言うと、お茶をいれ始めた。
「そろそろ良いじゃろう」
じっちゃまは俺をうつ伏せにして、首のあたりに指を当て「喝」と力強い声で言った。
「さあ、もう起きることができるはずじゃ」
じっちゃまの言葉に従い、ゆっくり腕に力をいれると、手ごたえが感じられた。
俺は上半身を起こした。
「こっちへ来て、座布団へ座れ。何があったのか話すがよい」
俺はじっちゃまに、雷神と会って話したことをすべて打ち明けた。
◇
俺が話を始めると、じっちゃまは腕を組み、目を閉じた。
まるで、聞きに徹すると表明しているかのうように。
そして実際、俺が話を終えるまで、一言も口を挟まなかった。
「……まさかとは思ったのじゃが。おぬしまで」
じっちゃまはその一言を発した後、天井を見つめたまま、動かなくなった。
しばし時が流れた。
じっちゃまはゆっくり首を起こし、まっすぐに俺を見た。
「これまでバラバラだったパズルのピースが揃いつつある。答えはもう少しででる。つらいじゃろうが、それまではおぬしの秘密はこのじいとおぬしの間にとどめておいてはもらえぬか」
じっちゃまはそう言うと、なぜ鹿島建御が黒雷蓮として生きることになったのか、その経緯を教えてくれた。
じっちゃまはまず、俺が第三次討伐作戦を知らないと思っているので、これがどんなものであったかをざっくりと説明してくれた。そしてその中で、鹿島建御がなぜ子供になってしまったのかを知ることができた。それは須虞那先生から聞いた話では語られなかったことだった。
須虞那先生が最後の封印の桃の実を置こうと奮闘していた時、他の黒影は黄泉の国の軍勢との戦いを続けていた。黄泉の国の入口からの増援がなくても、窃盗団の巣と言われたエリアにはまだ沢山の黒い影がいた。
春秋先輩と鹿島建御は後方支援から最前線へ飛び出して行ったが、後方から射撃、投石、弓による攻撃を続ける隊員はいて、彼らに弾薬や石、矢を補給する役目を担っていた隊員がいた。唯一、裏方でありながら第三次討伐作戦に参加していた隊員、建御名 弘だ。
建御名弘は補給作業を行いながら、双眼鏡で前線の様子を見ては、狙撃手や投石手らにどこが支援を必要しているか、攻撃をすればいいかを報告していた。そして、彼は見ていた。春秋先輩と鹿島建御に起きた出来事を。
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建御名弘が見た第三次討伐作戦が語られます。
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