神探し
―はあ、お前か。
! 聞こえた。
「あの、先日は急な呼びかけにも関わらず、お力をお貸しいただき、ありがとうございました。無事、窮地を脱することができました」
―のようだな。だからまたこうして俺に呼びかけることができたわけだ。で、なんだ。今回は改まって。
「はい。前回、俺…わたくしはあまりの窮地に神降ろしの正しい手順を踏まず、あなたを呼び出してしまいました。非礼をお詫びします。大変申し訳ありませんでした」
―……。おい、どうした? 前回と別人か?
「いえ、同一です。今回は正しい手順を……」
―お前、名前は?
「はい、わたくしは、黒雷蓮と申します」
―黒雷蓮……?
「はい」
―俺はそんな名前の奴と縁はない。
「え……」
―なぜ、嘘をつく。
「え????」
―ああ、なるほど。お前、影に食われたな。俺との記憶を持っていかれたんだな。
なんの話だ?
―世話のかかる奴だ。まだ目は発現していないんだな。
閉じていた俺の瞼に暖かい光が感じられた。
―目を開けてみろ。
俺は恐る恐る目を開けた。
ここはどこだ……⁉
さっきまで本殿にいたはずなのに、今はまるで雲の中にいるようだった。
―おい、こっちだ。
振り仰ぐとそこには声の主、俺と縁のある神がいた。
声から想像していたより若々しく、筋肉質なのに、顔は優雅だった。
黒髪は無造作に結ばれているが、それすら美しかった。
瞳の色は金色で猫のようだった。
服装は風神雷神図屏風で描かれているものと一緒だったが、顔や体つきはまったく違っていた。
―俺が見えているようだな。……俺に、見覚えはないか?
……神が見えている! 俺の神視覚がかなりの精度で発現した……!
―おい!
「あ、はい。聞こえています。見覚えがあるか、ですが、あなたのような方に出会っていたら忘れるはずがありません。でも残念ながら覚えていないので……」
―わかった。完全に食われたな。
「あの、さっきほどから食われた、と言われますが、どういうことでしょう」
―ふう。……お前さん、黄泉の国の軍勢と戦っただろう。記憶にないかもしれないが、戦ったんだよ。それで黒い影に食われた……えっとそっちでは生命力を奪われると考えているんだよな、確か。それでかなりの生命力を食われちまった。おそらく子供になるぐらいまで。だから俺のことも覚えていないんだ。
……!
―驚いて言葉が出ないか? 代わりに俺が言ってやるよ。お前は黒い影に生命力を奪われ、子供になるまで退行させられた。生命力を奪われるってことは、記憶を奪われるってことだ。その奪われた記憶の中に俺はいた。今、見せてやるよ。
周囲の雲が切れ、俺は夜空に浮いていた。と思ったらものすごい勢いで落下した。
墜落する。
そう思って目を閉じて開けると、本殿にいた。
なんだ、戻って来られた……
「僕の名前は鹿島 建御です」
えっ……?
声の方を見ると、俺と同じような装束をきたがたいのいい青年が、俺と縁のある神と向き合っていた。
「呼びかけに応じて参った。どうやら、俺とお前さんは少なからず縁があるようだ」
―これは俺の記憶だ。そしてあれがお前だ。
……。鹿島建御って、誰だよ……
俺はもう一度その青年の姿を見た。
瞳の色は俺と同じだ。鼻の形や唇はどうだ? 似ているような気もするが、違う気もする。
―分からないか……。俺には魂の形が見えるから同じだとわかるんだが、器……外見での判断は難しいだろうな。髪型も体型も筋肉も、育った環境が違うから成長度合いが違っている。あえて言うなら耳の形は同じだが、わかりにくいだろうな。
耳の形……? 覚えているわけがない。端末で写真をとり、測定すればわかるかもしれないが……。何か、他にないのか……?
俺はそこで「声」を思いついた。
耳を澄まして、二人の会話を聞いた。
「ほう。お前は坊主や宮司、陰陽師の力を借りずに、俺を探し当てたのか?」
「はい。文献を見て。これから僕らが戦う相手には神の権能が必要であると感じまして……」
「面白い奴だ。このまま神降ろしまでやる気か?」
「いえ、今日はまだ。今日はあなたに会えただけで十分です」
「縁はつながったからな。神降ろしは問題なくできるはずだ」
声は似ている気がしたが、やはり言われた通り、成長の度合いが違うからか同じとは言い切れないし、自分ではやはり判定が難しい。
いや、待て。名前。名前、聞いたことがないか……?
鹿島建御……鹿島……
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蓮に関するとんでもない情報が神によって明らかに。
どうなるのでしょうか。
次の更新は本日の夜21時に4話公開です。
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