芽衣さんの秘密
「はい。なんでしょう」
「芽衣さんって、神の力、発現していますよね?」
横を見ると芽衣さんがいない。
後ろ振り返ると、芽衣さんは両手で口を押えて、立ち止まっていた。
「ど、どうしてわかりました⁉」
分かりやすく動揺していた。
「あ、もしかして秘密でした?」
芽衣さんは一度うつ向いてから顔を上げた。
「おじいちゃんにもばれていないのに、どうして分かったのですか?」
じっちゃまにばれていないって、どんだけ頑張って隠しているんですか、芽衣さん!
「あの、落ち込まないでください。全力でばれないように隠していたんだと思います。多分、気が緩んだ瞬間にバレてしまっただけです」
「……そうですか。それでいつ?」
「狭霧が神降ろしを成功させて、影の血を浄化した時、芽衣さん、狭霧の姿が変化したこと、気づいていましたよね」
芽衣さんの表情は「イエス」と物語っていた。
「……あの時……!」
芽衣さんは大きくため息をついた。
「……はい。あの時、天野さんの姿が、私が想像していた神そのもので、あまりにも神々しくて。つい感嘆の言葉を……」
そこで芽衣さんは言葉を切り、上目遣いで俺を見た。
「でも、たったそれだけで気が付くなんて反則です」
「そう言われても……」
「私は正式な訓練を受けたわけではなく、神社を訪れる黒影の皆さんにどんな訓練をしているのかを聞いて、私なりの方法で訓練をしてみたんです。その結果……おそらくいくつかの力が発現したんだと思います」
「自力で発現させたのですか⁉」
「自力で神降ろしされた方に言われたくないです」
「……確かに」
そこで俺たちはプッと吹き出して笑い、本殿へ向かい歩き出した。
「少し、気が楽になりました。私だけの秘密って気負っていましたので」
「芽衣さんは本当に黒影になりたいんですね」
「どうなのでしょう。ダメと言われるとやりたくなる天邪鬼なだけかもしれません」
「だからといって神の力を発現するまで自主トレするのは、やっぱり真剣になりたい気持ちがあるのだと思いますよ」
「……そうですね」
「今一度、自分の気持ち、お父さんやおじいさんに話してみては? 神の力が発現していることも、話してみたらどうですか?」
「……考えてみます」
そこで本殿の扉の前に着いたので、俺たちは会話を止めた。
芽衣さんが扉をゆっくり開け、俺は中へ入った。
芽衣さんは俺が中に入ると、静かに扉を閉めた。
本殿の中は自然光と内陣の蝋燭の炎がゆらめき、静かで、厳かな雰囲気に満ちていた。
外陣にいるじっちゃまも正装をしており、いつもと雰囲気が違っていた。
「遅い。芽衣と何か無駄話でもしっとたんじゃないか」
いつもと同じだった。
「す、すみません! 俺が風呂に時間がかかりました」
「まあ、よい。そこに座れ」
「はい」
俺が腰を下ろすと、じっちゃまは腕組みをして説明を始めた。
「通常の手順じゃと、神探しをして自分と縁のある神を見つけてから、神降ろしを行う。神降ろしは一度成功すれば、縁のある神と相談し、二回目以降の呼びかけの約束を行う。そうすることで、一回目の時のような儀式なくして神降ろしが可能となる」
そこまで言ってじっちゃまは眉をくいっとあげた。
「おぬしはその手順を全部すっ飛ばして神降ろしを行ってしまった。もちろん二回目以降の約束もしとらんじゃろう。まずは神に呼びかける神探しを行うところから始める。応じてくれると良いのじゃが……」
「あの、縁があっても応じてくれないことがあるのですか?」
「ある。その者の過去の行いに、人を貶めたり、人を害したり、人を傷つけたりと罪を犯していると、神は縁があろうと応じることはない」
「なるほど……」
「スムーズに進むか時間がかかるか分からんからな。早速神探しを始める」
「はい」
「わしは祈祷に入るから、おぬしは心の中でこう唱えるのじゃ。『私と縁のある神よ、どうか私に力をお貸しください』この言葉をとにかく何十回、何百回と唱える。分かったか?」
「わかりました」
こうしてじっちゃまはよく通る声で祈祷をはじめ、俺はヨガで習った瞑想を使い、神探しに集中した。そしてひたすら「私と縁のある神よ、どうか私に力をお貸しください」と心の中で唱えた。
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蓮の神探しが始まりました。雷神は現れてくれるのでしょうか……?
引き続きお楽しみください。




