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完結●黒影  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中


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こんな偶然

「どうかしましたか?」


沫那美先輩が立ち上がり、木ノ花先生に近づいた。


俺も立ち上がり、畳の上に落ちているスケッチブックを拾い上げた。


拾い上げた瞬間、中身が見えたが、和と洋を織り交ぜたこのモダンなテイスト、タッツーさんのデザインだ。


男性もののデザインも優れていたが、女性の衣装だと本領発揮という感じだった。


俺はスケッチを木ノ花先生に手渡した。


「え、蓮、それ陽菜のだけど」


陽菜が立ち上がり、スケッチブックを俺の手からとった。


「え……」


俺はその瞬間、木ノ花先生が立ち尽くした理由が理解できた。


「陽菜……、そのスケッチブックのイラスト、どうしたんだ?」


「どうしたって、今描いたんだよ」


「……今?」


「うん」


「……タッツーさんのスケッチを参考に描いたんだよな?」


「タッツーさん? ……ああ、春秋先輩のお姉さんのこと?」


「そう」


「見てないよ。これは今、陽菜が思いついて描いたデザイン。他の黒影の先輩の戦闘服を見て、陽菜だったらこうしたいな、って思っていたデザインがあって、それを描き始めたら一気にイメージが広がって。いっぱいアイデアが出てきたの。陽菜のオリジナルだよ~」


こんな、こんな偶然ってあるのか……。


「陽菜、私にもそのスケッチブック、見せてくれないか。蓮、君がさっき木ノ花先生から借りたスケッブックをこっちへ」


沫那美先輩はそう言って陽菜からスケッチブックを受け取ると、俺が渡したタッツーさんのスケッチブックを陽菜に渡した。


「それは春秋竜美がデザインした男性服だ」


そう言うと、沫那美先輩は陽菜のスケッチブックを開き、陽菜はタッツーさんのスケッチブックを開いた。


「……え、嘘。なんで」


陽菜は驚き、その後の言葉が続かなかった。


「……こういうこともあるのだな。二人ともデザインの傾向、イラストの描き方がそっくりだ。だが、それだけだ。木ノ花教官」


沫那美先輩はそう言うと、スケッチブックを陽菜に返した。


陽菜は釈然としない表情のままだったが、沫那美先輩からスケッチブックを渡されると、自然な流れで自分が手にしていたタッツーさんのスケッチブックを沫那美先輩に返した。


沫那美先輩がポンと木ノ花先生の肩を叩くと、先生はハッとして、我に返った。


「……陽菜、この短時間でこんなに沢山デザインが浮かぶってすごいわね。でも戦闘服はまずは一着、仕上げる必要があるから、この中から一つに絞り込んでね」


その言葉を聞くと沫那美先輩はタッツーさんのスケッチブックを木ノ花先生に渡し、元いた位置に戻った。


木ノ花先生も戻ったので、俺も自分のテーブルへ戻った。


沫那美先輩のあの言い方だとこれ以上この件をここで話す必要はない、っていう感じだった……。


陽菜もそれを察知したようで、俺たちは黙々とスケッチを続けた。



黙々とスケッチを進めた結果、俺と陽菜は自分の戦闘服を完成させることができた。


途中までは、タッツーさんと陽菜のデザイン、イラストが酷似していたことが気になったが、作業に集中するとそれもやがて気にならなくなり、お昼休憩ぎりぎりで完成させたときには、その件自体を忘れていた。


「二人とも、よく頑張ったわ。まさか今日で完成するとは思わなかった。やっぱり天野くんが先行して天の羽衣を使いこなしていたのが、いい刺激になったのかしら」


「それもあると思います。俺もいち早く狭霧みたいになりたいって思いがあったので」


「陽菜は歓迎会に参加した時から自分の戦闘服を早く着たいと思っていたので、頑張りました!」


俺と陽菜の鼻息の荒さに先生は驚きつつ、アドバイスをくれた。


「後は自分のスケッチを徹底的に頭に叩き込む必要があるわ。時間があるときに眺めて頭の中に完璧にいれるようにしてね」


「はい」


俺たちが元気よく返事をしたところで終了となり、食堂でお昼ごはんとなった。


この投稿を見つけ、お読みいただき、ありがとうございます。

次回更新は明日の朝7時に3話、夜21時に4話が公開です。

次の更新タイトルは「お互いの進捗」です。

また読みに来てください!

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