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完結●黒影  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中


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狭霧の分析、陽菜の推理

「そうだね。でも僕は内向的で、天津頭領は外交的で、明るいし、基本的には真逆のタイプだと思うよ」


「ねえ、天津頭領が実は食堂で陽菜たちを観察していたっていうのはよくわかったけど、沫那美先輩の方はどういうことなの~?」


「沫那美先輩は頭領代理って立場だから当然天津頭領の予定とか頭に入っていると思うんだ。食堂を手伝っているということは、新人隊員ともそこで会えると。それでどんなタイプの隊員が入ったのか、ある程度把握できると」


「うん。うん。それで?」


「黒影って、体力とか瞬発力とか、わりと運動神経が重視されることは二人ともわかるよね?」


俺と陽菜は頷いた。


「沫那美先輩は娯楽室で待っていれば、もしかしたら新入隊員の運動能力を測れると思ったのかもしれないね。性格的な部分は天津頭領が把握してくれている。それなら運動能力は機会があれば自分が見てみようと」


「え~、でもでも、娯楽室に誰も行かない可能性もあるよね⁉」


「もちろん。その場合、例えば僕は図書室に行ったわけだけど、体を動かすより座学が向いている隊員、ぐらいに思われたかもしれないね。もし娯楽室に来なければまた別の機会で、ぐらいの気持ちだったと思うよ」


「仮に娯楽室に行ったとしても、俺たちがボードゲームを始めたら……」


「ボードゲームをやりにきたのかもしれない、というのはもちろん想定済みだと思うよ。だからこそ自分から卓球の相手をしてもらえないかと申し出たわけで、断られたら断られたで分かることがあるだろうしね」


「なるほどな……」


「ね~、狭霧がそんな風に沫那美先輩を分析するのは理解できるけど……でも理解できない~。だってホント偶然娯楽室にいただけかもしれないしー」


「うん。陽菜の言うことは間違ってない。その可能性は捨てきれないよ」


「捨てきれないって……。どこかで自分の説が正しいというその言い方。おい、狭霧、お前もしかして沫那美先輩のこと何か知っているのか?」


俺の言葉に狭霧はお手上げポーズをした。


「猪突猛進の蓮には叶わないね。陽菜が言った特徴を兼ね備えた女性と僕は京都で一度だけ遭遇しているんだ」


狭霧の言葉に僕と陽菜は驚いて顔を見合わせた。


「僕は好んで運動をしないけど、運動不足も良くないから、早起きして散歩を日課にしているんだよ。いつものように哲学の道を歩いていると、たまに見かける老夫婦が向かいの道から歩いてきた。するとおばあさんの方が躓きそうになって……。その瞬間、強風が吹いて僕は思わず目を閉じた。すぐに目を開けると、おばあさんを支える黒髪の美女がいたんだ。風が吹いたと思ったけど、それはその美女が僕の横を走り抜けた時に起きた風だった」


「……そんな俊敏な動きをする美女、そうはいないよね。それ、沫那美先輩だと陽菜も思う」


「俺も同感。でもなんでまたそんな場所に沫那美先輩はいたのだろう……?」


「それは僕も分からないんだよ。ただ、見かけたことのない、しかも飛び切りの美女だったから記憶に残ってね。そしてさっき陽菜の話を聞いて、もしかして沫那美先輩だったのかな、って思ったんだ」


「たまたま何かの任務で京都に来ていて、たまたま狭霧のように朝の散歩をしていたのかな…? 哲学の道なら観光客がいてもおかしくないし」


「え~、蓮、それじゃフツーだよ~。沫那美先輩はスペシャルなんでしょ。娯楽室にいたのは偶然じゃなくて陽菜や蓮を観察するためだったんでしょ。それだったらたまたま哲学の道を散歩してたじゃ辻褄あわないよ~。例えば狭霧の願書を見て、興味を持って、何かの任務で京都に行った際に、探偵みたいに観察していたとかが妥当じゃない~。だって狭霧のお父さんは頭領だったんでしょ。その頭領の息子さんが入隊を希望している、ってなったら興味沸くじゃない」


狭霧は陽菜を眩しそうに見た。


「陽菜、そうだね、その推理は……僕は思いつかなかった。自分が当事者だからその発想に至らなかったよ」


狭霧に褒められ、陽菜はドヤ顔になった。


狭霧は情報分析官で常にどんなことも冷静に分析できる。


対して陽菜は発想力の人だな。思いがけない推理を突然披露する。


陽菜が選ばれここにいる理由、なんか分かった気がする。


……それにしても頭領の息子だからという理由だけで沫那美先輩は狭霧を観察していたのだろうか。陽菜の推理は限りなく正解に近いが、何か一つ足りないようにも思えた。


それについて考えようとしたところで、木ノ花先生が戻ってきて、オリエンテーションが再開された。

この投稿を見つけ、お読みいただき、ありがとうございます。

コツコツ更新していくので、引き続きよろしくお願いします。


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