子供たち
えま先輩は防衛本部に狭霧が向かったことを伝え、自分はこのまま俺と陽菜を神社へ送り届けるのでいいのかと確認した。本部は、狭霧は別の黒影隊員に追わせるから、一刻も早く町の中に(第一結界の中に)入り、神社へ戻るよう指示した。
えま先輩はこの指示に従い「二人はもう何もしないでよ~」と泣き顔で懇願し、急ぎ町へ向かった。
「本当は車で行きたかったけど、丁度帰宅ラッシュの時間に加え、黄泉の国の軍勢が出現しちゃったから、町民の避難でもう道路は大混雑。だから徒歩で行くよ」
そう言うとえま先輩は昨日と同じ、防衛本部専用の駐車場にバンを止めた。運転手は町の入口にある第一結界の黒影の詰め所に避難することになり、俺たちは徒歩で神社へ向かうことにした。
町のスクリーンモニターには、金山に窃盗団が出現したことが報じられていた。そして万が一に備え、不要不急の外出をやめ、家にいるようにとアラートを送っていた。
「陽菜、すごい人だ。はぐれないように手をつなごう」
「うん。お願い。あと、絶対、手を離さないでね、蓮」
えま先輩は俺と手をつなぎ、俺は陽菜と手をつなぎ、三人でごった返す町の中を進み、神社を目指した。
◇
ようやくのことで一の鳥居に着くと、鳥居の内側に子供のグループがいた。
「どうしたんだろう、あの子供たち?」
俺が聞くと、えま先輩は額の汗をぬぐい、乱れた衣服を整えながら答えた。
「あれは、多分、神社で遊んでいた子供たちだよ。共働きの家の子供は放課後、この神社で遊ぶように言われていて、仕事が終わると親が迎えにくるんだ。ここは陰陽頭の強い結界があるし、普通に防犯カメラもあるから、犯罪者も近づかない。黒影の隊員も立ち寄ることも多いし、警官も定期巡回しているからね」
「じゃあ、あそこで両親が迎えに来るのを待っている……?」
「と思うんだけど、アラートが出ちゃったから、多分、迎えに来るのは無理とは言わないとけど、時間がかかると思うな。ぼくたちだって、ここまで来るの、すごい大変だったでしょ」
「蓮~、髪、ぼさぼさだし、袴の裾もめくれているよー」
少し離れた場所で、手櫛で髪を整えていた陽菜が俺に声をかけた。
俺は手で髪をなで、裾をなおした。
「子供たちはあのままで大丈夫なんですか?」
「ふうー、ようやく落ち着いた。……ああ、子供たちね。大丈夫だよ。だって、ほら」
えま先輩が見た方角、すなわち拝殿の方角から数人の巫女さんがこちらに向かっていた。
よく見ると、先頭は芽衣さんだった。
芽衣さんは俺に気が付いたようで、手を振った。
俺も手を振り
「芽衣さーん、ここの子供たち、そっちに連れて行きますか?」
俺が大声で呼びかけると、芽衣さんは頷いた。
「えま先輩、陽菜、協力お願いします」
俺たちは子供たちに声をかけ、巫女さんたちのところへ戻ろうと、声をかけた。
ぐずる子もいたが、俺たちが黒影であることを話すと、子供たちの目が輝き、素直に従ってくれた。子供たちは無邪気に「お姉ちゃんとお兄ちゃんは戦いに行かなくていいのー?」とか「黒影はさっ、すんごい強いんだよね」とか、楽しそうに俺たちに話しかけてきた。
そうこうして歩いていると、二の鳥居あたりで芽衣さんたちと合流できた。
「ありがとうございます。アラートが鳴ったので、拝殿で待つように言ったのですが、お父さんやお母さんに会いたくなっちゃったんでしょうね」
芽衣さんは二人の子供と手をつなで歩き出した。
他の巫女さんも抱っこしたり、手をつないだりして歩き出した。
「……あら、天野さんは?」
狭霧の姿がないことに気づいた芽衣さんが尋ねると……
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ようやく神社に到着です。一方、狭霧は……?
引き続きお楽しみください。




