なぜ?
「巨大蛇型の黒い影、極小サイズの影の血、どちらも通常の黒い影では考えらない要素がてんこ盛り。陰陽頭曰く、規格外。蛇の方は結界壊し放題で神社までたどり着いているし、リツコ先輩の攻撃にも尋常じゃない回数で耐えている。極小サイズはミストでも浄化されない。サイズ的に弱いはずなのに。それで陰陽頭はこれはただの黒い影や血ではなく、黄泉の国の神もしくは同格の何かが関わっているかもしれないと」
「謎の老人が黄泉の国の神もしくは同格の何かだということですか?」
狭霧の問いにえま先輩は首を振った。
「謎の老人は、影の血に操られている人間なのではというのが陰陽頭の見立てだよ。だって田畑さんを浸食した影の血の出所を考えると、どう考えても謎の老人だよね。老人を浸食していた影の血の一部が田畑さんを浸食したと考えるのが自然。もちろんまだ調査中で断言はできないけど。ちなみに黄泉の国の神や同格の何かは、黒い影みたいに人間を退行させたり、自身の血を使って浸食を行うとか、そーゆうことはしないんだって」
えま先輩はそう言うと、おかわりのお茶をみんなの湯飲みに入れた。
「何かが関わっているとしても、なんで狙われなきゃならないんだろう、陽菜たちが」
「多分陽菜を狙ったというより、僕を狙った気がするよ。廃墟では陽菜を餌におびき寄せられた感じがするし、一の鳥居の時も僕の良心を逆手にとっておびき出された気がする。本殿は言うまでもなく僕が狙われたよね」
「狙われた理由に心当たりは?」
俺が尋ねると、狭霧は首を振った。
「分からない。……でも何か理由があるんだろうね」
この場にいた全員が、狭霧が狙われる理由を考えたんだと思う。皆、一斉に黙り込んだから。
すると狭霧が口を開いた。
「僕を狙う理由、それも気になりますが、それ以上に気になることがあります。それは、旦那三人衆に神社へ行くよう指示を出した老人、彼はなぜ僕が神社に行くことを知っていたのでしょう」
確かに……!
町へ行くことは授業の流れの中で偶然決まったことだ。あらかじめ町へ行くと決まっていたわけではないし、外出届も出発直前に出した。なぜその老人は分かったんだ?
「それだったら、廃墟もそうだよね。たまたま、だん先輩と会って、廃墟に行くって聞いて、行くことを決めたよね。なんで分かったんだろう。でも偶然、ってこともあるのかな」
陽菜の言葉にえま先輩が反応した。
「偶然……つまり廃墟のあの場所にたまたま行ってみたら、たまたま狭霧くんが来た……ってことだよね。それはないでしょう。廃墟は広いし、ピンポイントであのエリアに敵が来ることはないんじゃないかなー。まー、だん先輩があのエリアでパルクールをよくやっていると知っていたら、様子を見に来て、たまたま狭霧くんを発見、っていう可能性もあるかもだけど……」
「いや、えま先輩、神社での襲撃はあらかじめなんらかの方法で俺たちが神社へ行くことを知ったけど、廃墟は偶然だったのかもしれません。廃墟にいた時の俺らは本当に丸腰だし、神の力のことも知らず、黒影はだん先輩一人、しかも防衛本部から離れた場所だった。もしここに巨大蛇型の黒い影が現れたら…全滅していたかもしれないです。俺は神降ろしのことを知らないから、神に権能を求めるようなことはしなかっただろうし、狭霧だって縁のある神がそばにいるわけではないから、神降ろしは始まらない。そう考えると、敵は偶然俺たちを見かけて、チャンスであると分かった、けれど出せる駒があの手型の黒い影だった……」
「なるほど。それは説得力があるね」
えま先輩の言葉に狭霧も陽菜も頷いた。
「じゃあ、休憩所の襲撃はどう思うの、蓮」
陽菜が俺を見た。
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狭霧が狙われる理由、なんだと思いますか?
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