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完結●黒影  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中


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頭領代理

「……その顔だと以前神降ろしをしたことはないのであろう。そうなるとやはり、奇跡が起きたんじゃろうよ」


じっちゃまはそう言うと、食器棚をあけ、一口サイズのお菓子が入った器をちゃぶ台の中央に置いた。


「おう、そうじゃ。昨日、さくらんぼが送られてきたんじゃ。昔、防衛本部の農園を作り上げた職員が、退職してから毎年送ってくれるんじゃ、段ボール箱いっぱいにな。社務所の職員にわしからの伝言として蓮、伝えてもらえんか。『昨日届いたさくらんぼを拝殿と神殿に捧げ、残りを宿泊棟にいる客と職員で食べよと。そして一パックをわし用にこの蓮に渡すように』とな」


「あ、はい、分かりました」


俺はじっちゃまに言われ、立ち上がると、出口へ向かった。


俺は直感でじっちゃまは狭霧に神降ろしの儀式としてどんなことがあったか聞くために、俺をやんわり外へ出したと感じた。


まあ、社務所までのんびり行くか。


俺は下駄をはき、番傘を手に取ると外へ出た。



渡り廊下を歩き、拝殿が見えてきて、旦那三人衆の一人、小川さんが布団から身をおこし、神職者と何か話している様子が見えてきた。


良かった、無事目覚めたんだ。


さらに拝殿まで近づくと、沢野さん、田畑さんも同じように神職者と話している姿が見えた。


そして宿泊棟の方からは、朝食の膳を運ぶ三人の巫女さんの姿が見えた。


俺が拝殿のそばを通り過ぎると、旦那三人衆は俺に気が付き、軽く手を挙げたり、手を振ったり、目だけで会釈とそれぞれ反応をした。昨晩の出来事の記憶はあやふやだとじっちゃまは言っていたが、なんだか三人ともバツが悪そうな、居心地の悪そうな表情をしているのが、ちょっと気になった。


拝殿を通り過ぎ、宿泊棟に入ると、食堂で声がした。


のぞいてみると、だん先輩とえま先輩が朝食中だった。


「あ、蓮くーん!」


えま先輩が立ち上がり、手を振った。


俺は「お疲れ様です」と言いながら、二人のそばに行った。


「陰陽頭の問診、終わったの?」


「いや、まだ途中です。今は狭霧と神降ろしの話をしているようです」


俺がだん先輩の質問に答えると、えま先輩が目を丸くした。


「えー、なんで神降ろしの話を狭霧くんと陰陽頭がしているの? まだ狭霧くん、神探しもしていないよね? というか、まだ神の力とは、ぐらいの段階じゃないの⁇」


そこで俺はかいつまんで昨晩起きたことを二人に話した。


「うわぁぁぁ、マジですか⁉ 二人とも天才なんじゃない⁉ ホント、すごい。先輩として鼻が高いよ。それに狭霧くんのあのイケメンぶり。元々イケメンだったけど、さらにカッコよくなったよね」


えま先輩にそう言われ、俺は狭霧の変化について陰陽頭に聞こうと思っていたことを思い出した。


「僕は神の力で神視覚が発現していないから、変化した狭霧くんが見えなくて残念だよ。それにしても雨降ろしの日に、しかもこの神社に影の血が侵入するなんて、前代未聞だよ。蓮くんと狭霧くんはもちろん、陰陽頭のお孫さんも助かって良かったよ。……僕たちが駆け付けるのが遅くて、無茶をさせてごめんね」


だん先輩の言葉に、えま先輩もしゅんとなってしまった。


「いえいえ、だん先輩たちは何も悪くないですよ。ところで沫那美先輩は?」


「僕とえまちゃんは、このままここで警戒任務にあたることになったんだ。でも頭領代理は町の入口にある第一結界で警戒に当たっていたのに、ここまで駆け付けちゃったんだ。だから倒れていた一般人を運んだ後、陰陽頭の指示ですぐに持ち場へ戻ったよ」


「え⁉ だん先輩、沫那美先輩は陰陽頭の次に本殿に駆け付けましたよ」


「うん。それが頭領代理なんだよ」


そう言うとだん先輩は続けた。


「天津頭領は金山統括庁で熱田大臣を護衛しつつ、三回に渡る黒い影の襲撃の分析、今後の対策について打ち合わせしている最中だった。それを知っていた頭領代理は、何か異変を察知したら、すぐに動ける状態に自分をしていたんだよ。頭領が動けない時は私が、って感じで。多分、雷鳴が轟いた時にはすでに動いていたと思うよ、誰の指示を待つわけではなく」


やっぱり沫那美先輩はすごい……。


「僕なんか、雨降ろしの日だし、すっかり油断していた。夜食のラーメン食べている最中で、雷鳴を聞いた時はまずフリーズしたよ。そのあと我に返って箸をおいて、慌てて端末を取り出した。それで陰陽頭から出動要請が出ていることを知ったんだ。神社には僕が一番近い。だから自分が行くと防衛本部に連絡して駆けつけた。でも頭領代理はそうやって僕がもたもたしている間にも全速力で移動していた。そう考えると本当に、頭領代理は別格だよ」


だん先輩の夜食のラーメンがその後どうなったかちょっぴり気になった。


「ねーねー、蓮くん、時間大丈夫?」


えま先輩の言葉に俺は「あ、そろそろ用事を済ませて戻ります」と、食堂を飛び出し、社務所に向かった。そしてじっちゃまの言葉を伝え、さくらんぼを受け取ると、行きとはうってかわってダッシュで戻った。



この投稿を見つけ、お読みいただき、ありがとうございます。

筆者もだん君のラーメンのその後が気になります。

それでは引き続きお楽しみください。

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