089 愛とは
棺を開けると壱与はすでに目を開けてこちらを一瞥した。
私とブラッディ・カーマ、そして壱与と同じ結界術使いの羽田茜。十分に意義あるメンバーになったと思う。
『何やら相当なものを乗り越えたのですね、氷彗』
「……わかるものなのね」
私のこの悲しみも、怒りも、すべて理解しているかのように壱与は語りかけてきた。
「……お初にお目にかかる。私は遠い国の魔法少女、ブラッディ・カーマ」
「アタシは羽田茜。この国の魔法少女」
『えぇ、よろしく。あなた達の鬼力を見れば、強い者であるのはすぐにわかります。もちろん外にいる愛梨が成長したこともわかっていますよ、氷彗』
まるで私が愛梨を育てたことを褒めるように言ってくる壱与。私は……あの子に何か成長させるようなことができたわけではない。あの子はあの子で、自分で強くなっているから。
「挨拶はこのくらいにして、本題に入るわよ。昨日、ついに卑弥呼が脅威と発見した母星の親玉、黒天二柱の片割れがやって来たわ。凄まじい力だった……。そこで壱与の意見を聞きたい。私たちはどうするべき?」
『そうですか……ついにきてしまいましたか。お姉さまの危惧していた事態が、今』
まるで私たちが生きるこの時代に起きることをなんとなく察していたかのような雰囲気ね。
『あなた達がすべきことは一つです。姉妹を愛しなさい。それで魔法少女は真なる力を発揮できるはずです』
「私と愛梨は愛し合っている。それでもマギア・ムーン……半月板を重ねても何も起きなかった。これ以上何をすればいいの?」
『氷彗、愛とは恋慕の愛だけではありません。友愛、親愛、時に寵愛。そのような愛を乗り越え、愛梨すべてを、また愛梨は氷彗すべてを受け止められる。そのような関係になってこそ、あなた達は次なる力を発揮できるでしょう』
愛……その形のすべてを受け入れる?
不器用で頭の硬い私には難しい内容に思えた。
「あの……壱与さんって結界術をお使いになられたんですよね?」
『えぇ。あなたも私と同じようですね。その結界も姉妹への愛で進化するでしょう』
「……アタシの妹はもう、亡くなっていて……」
『死ねばそこで愛は終わりですか?』
その言葉にハッとしたように、羽田茜は顔を上げた。
『さぁ行きなさい皆さん。この星を、鬼女を、民を、守り抜くのです』
最終決戦。
その気配はすでに喉元まで迫っているようだった。




