083 覚悟
「1人にさせて」
なんて告げることに、胸が痛む日が来るだなんて思ってもいなかった。
私は愛梨を残し、ひとり旅だった。
行く先は決まっているわけではない。でもなんとなく、たどり着く場所はわかっていた。
鶴舞公園。私が有馬皐月と出会った場所。
そこに……やはり彼女も足を運ばせていた。
「……予感というものはすごいですね。山吹さん」
ハイライトの消えた眼を、私に向けてくる有馬皐月。
謝罪の思いはある。ただ……それを伝えてどうこうなるものでもないのはわかっている。
私たちにできることはただ、決着をつけるのみ。
「そうね。私も、なんとなく足を運んだだけなのに、どこかで貴女が来るという確信があったわ」
私は自動販売機でアイスコーヒーを二缶買い、ひとつを有馬皐月に投げた。
ベンチに座り、しばし無言でコーヒーを飲む不思議な時間が流れる。
こうした姉妹らしいことを有馬皐月は望んでいたのだろうか。今の彼女からはその願望の片鱗すら見ることはできないが、ここで出会った当初の輝いていた目からはそれを感じ取れないわけではない。
「山吹さんって、どうして他人にトゲトゲしているんですか?」
「さぁ。でも……最近は自分が弱いから他人に当たっているんじゃないかと思っているわよ。他人に強くあたることで、自分を強く見せたいのでしょうね。愚かなものだわ」
「……意外に人間なんですね、山吹さんも」
「人のことを何だと思っているのよ」
少しだけ、ふふっと笑った有馬皐月。
時間が流れ、夜になり、公園から人が消える。
それをゆっくりと見守る私と有馬皐月にはどこかこのまま時が止まればいいのにという気持ちすら生まれていた。
しかし、無情にも最後の1人が公園を出たところで、私も有馬皐月も同時に立ち上がった。
「わかっていますよね、山吹さん。私はあなたを恨んでいます」
「わかっているわ。肌に刺さるほどの殺気からね。強くなったこともわかっているわよ」
「ならこの後どうなるか、わかりますよね」
「そうね。ただ……忠告をするのならその注射はやめておきなさい」
私の言葉にふふっと笑い、有馬皐月は注射を2本、首元に刺した。
「はぁー、はぁー、ふふ……ご忠告、感謝します」
明らかに息が荒くなっている有馬皐月は私を睨んだ。それこそ、眼力だけで殺そうかというほどの目つきで。
「その覚悟だけは認める。いいわよ、貴女のやり方すべて、受けとめてあげる」
私は覚悟を決め、マギア・ムーンに手をかけた。




