081 追い詰められた者
蝋燭型の剣を刺して、ひねる。
山吹さんの写真が貼られた藁人形に剣を刺し、ひねる。私はそんな虚しいことで心の穴を埋めていた。
「さっちゃん、悪趣味だよ」
「優……仕方ないでしょ、これしかイメージトレーニングできないんだから」
「ほんっと不器用だよなぁ。アタシらくらい頼れっての」
「菊、私たちには魔力体で練習できる施設がないからトレーニングなんてできない」
「わーってるけどさぁ」
ゾディアック本拠地にいる私たちは、今日も変わらぬ日々を過ごすのだと思っていた。
戦争での傷も早々と癒え、次の戦いに備える。そう思っていた。
しかし、それは伊月さんの帰還で崩れ去った。
「おかえりな……さ……」
伊月さんが、笑っている。
でも、笑っていない。
ここまで追い詰められたような顔をしているのは初めて見た。
「……お三方、少しお時間をいただけますか?」
「な、何でしょうか?」
「白天七柱のうち、爆砕天以外が討伐されました。やったのは山吹隊員……いや、大臣の座を降ろされる身でそう呼ぶ必要はもう無いですね。山吹氷彗と、その妹である桜坂愛梨です」
背筋が凍った。
あの強い白天七柱が……討伐された!?
しかもやったのは山吹さんって……
「正直、もう私には打つ手がありませんよ。あるとしたら……」
そう言って伊月さんが見つめてきたのは、私たちだった。
覚悟は決まっていますね? そう言われている気分になる。
「あなた達にはこれを渡しておきます。とっておき、奥の手、私の最後の手と思っておいてください」
そう言って伊月さんが渡してきたのは、注射器だった。
中に入っているのは常に携帯している注射器に入った魔力とは少し異なっている。
見た目で言えば色が濃い。いつもは水色に近い青だけど、これはほぼ紺色だ。
これを打ったらどうなるのか……聞くのが怖くて聞くことができなかった。
「私はこれより山奥に避難します。ただ逃げるわけではありません。力を溜めますからね。あなた達にはこれから自由に動いてもらいますのでよろしくお願いします。それでは」
「ちょ!? 伊月さん!?」
伊月さんは振り返らず、どこかへ飛び出してしまった。
「おいおいマジかよ。アタシら何すればいいんだ?」
「さっちゃん、どうしたい?」
私は少し黙って、口を開いた。
「……私は部屋に帰るよ。少しゆっくりさせて」
そう言いながら、私は外へと飛び出した。
やるなら今だ。……私の復讐は、明日には終わらせる!




