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姉妹契約で結ばれた魔法少女たちは特別な感情を抱いてしまうかもしれませんよ  作者: 三色ライト
1章 雪溶け編

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008 緊急出動

 その後は逃げるようにベッドに入り、早く夢の世界へ逃げようとするも、氷彗(ひすい)さんの刺激的な身体を見た興奮と、自分の貧相な身体を見せた恥ずかしさが混ざってとてもじゃないけど安眠はできなかった。


 朝。決していい目覚めとはいえないけど、とにかく目が覚めてしまった以上は1日が始まる。

 隣を見ると同じタイミングで目が覚めた氷彗さんが美しく起床していた。眠たげな目も宝石のようで美しい。自然と目が惹かれてしまうのは仕方のないことだと思う。


「……なに?」

「あっ……いえ! 綺麗だな、と」


 何を言っているんだと後になって後悔した。寝ぼけたまま本音を漏らしてしまうなんて、氷彗さんの前では命取りになる。


「ふん。……朝食を済ませたら訓練室に来なさい」

「は、はい!」


 はぁ、今日も一方的にボコボコにされるのかぁ。やだなぁ。

 なんて思いながら食堂へ向かう。氷彗さんはまたどこかへ行ってしまったので、私と食べるつもりはまったくないようだ。


 今日の朝食タイムは誰にも話しかけてもらうことができずに終わった。風香さんに声をかけてもらうことを期待していたけど、幸ちゃんと楽しそうに朝の時間を過ごしているからそこに介入するわけにもいかないね。


 朝食を終えたら氷彗(ひすい)さんの言いつけ通り、訓練室に足を運ばせた。朝早くだというのに何組かの魔法少女が訓練に勤しんでいる。

 私より早く氷彗さんも到着していて、すでに変身状態だ。私もポケットからマギア・ムーンを取り出して変身。桃色の袴をこの身に纏って魔法少女の姿となる。


「お、お待たせしました」

「そんなことより始めるわよ」


 私の言葉は食い気味に消され、氷彗さんは昨日と同じく氷の剣を持って斬りかかってきた。もちろん一撃与えれば認めてくれる的なことを言っていたので、私も全力で応戦するけど……

 1本、また1本と次々に私の身体を斬り刻み、点滅させる氷彗さん。凍結しているかのように表情が動かないから、すっごく怖い。


「……私はこの氷の剣一本と『フローズン』だけで戦う。いわばハンデを与えているつもりよ。それでも一撃すら与えられないの?」

「だって……氷彗(ひすい)さん強すぎて!」


 会話の流れの中でも氷彗さんは私を斬ってくる。容赦というものを知らないのかと言いたいけど、本人に言わせれば手加減しているらしい。

 そもそもにおいておかしいよと思い始めた。普通、姉が妹に魔法の使い方なんかを教えて初めて魔法少女は強くなれるでしょ? なんで氷彗さんは教えてもくれないのに一撃与えられなければ辞めろなんて言うのさ!


 だんだんと、氷彗さんに対して黒い感情が積もってきた。そんな時だった。


 ビービービー! ビービービー!


 支給されたスマートフォンが激しい音を鳴らしながら震えた。なんだろうと思ったけど、画面を見た瞬間に察した。

 "エネミー警報"。今や人類はエネミーが襲いかかってくるときの85%を事前に把握できると言われている。先日のトヨタ中央高校の時は漏れた15%だったからあれだけの被害を生んだけど、事前に分かっていたら魔法少女を先に駆け付けさせることができる。


「訓練は一度打ち止めね。行くわよ」

「は、はいっ」


 私にとって、初めてのエネミー討伐作戦だ。氷彗さんへの疑問は一旦置いておいて、まずは誰かのためになる行動を取らないと。

 氷彗さんによるとエネミー警報は全魔法少女のスマートフォンに行き届くという。ただ出動は強制ではないみたい(事前把握できないケースのときに直近にいる魔法少女は強制らしいけど)。それは強制しなくても誰かが駆けつけると信頼されている証なのだと私は勝手に思った。


 魔法少女センターを出て北に向かう。魔法少女は自由に空を飛べるため、簡単に移動ができるし、すごく速い。


 数秒で堂々と聳え立つもの、愛知県が誇る(数少ない)観光名所、名古屋城へたどり着いた。スマートフォンによるとエネミーはここに現れるみたい。

 他に魔法少女はいない。きっと氷彗さんが駆けつけたと聞いて来るのをやめたんだと思う。クラス6が向かっているんだったら行かない選択肢も生まれるよね。

 ただ名古屋城に観光に来ている人はまだちらほらと逃げ遅れているのが見えた。


「……来る」


 氷彗さんがポツリと呟いた。すると名古屋城のシャチホコに近いところにぽっかりと黒い穴が空いた。この前見た、不気味な穴だ。

 穴の奥からはゲコッ! と聞き馴染みのあるような鳴き声が聞こえてきた。数秒後、現れたのは真っ白な巨大カエル。どこからどう見ても典型的なエネミーだ。

 カエルといえば舌で獲物を捕まえて捕食する。だから舌には警戒しないと。


「ゲコッ!」


 予想通り舌を伸ばしてきたカエル。その矛先は氷彗さんへ。


「氷彗さん!」

「『フローズン』」


 氷彗さんはカエルに触れることすらせず、不気味な紫がかった舌を凍らせて氷のオブジェにしてしまった。

 あまりに一瞬の出来事で何が起きたか理解するのに時間がかかった。

 そんな間に氷彗さんは凍らした舌の上をスケートのように滑り、カエル本体へと近づいた。


「弱いわね。さよなら」


 そう言って氷彗さんは氷の剣を振り下ろし、カエルを一刀両断してみせた。戦闘開始から1分もかからず討伐。これが日本最強のクラス6魔法少女……圧倒的だ!

 カエルの遺体から紫色の血が飛散する。それだけでなく、無数の黒い球も生まれ始めた。


「……様子がおかしい」

「えっ?」


 氷彗さんの疑念に正解! と答えるように黒い球からオタマジャクシのようなエネミーが生まれてきた。子持ちのエネミーなんているの!?

 たくさんのオタマジャクシの内の1尾が名古屋城に突進し、爆発した。


「氷彗さん! たぶんあれには触れると爆発します!」

「わかっているわ。それを利用すればいいだけ。『薄氷結界』」


 そう言って氷彗さんは大量の氷の壁を空中に生み出した。オタマジャクシたちは導かれるように壁にぶつかり、爆散。自滅の道を辿る。

 すごいなぁ、氷彗さん。エネミーの奥の手・隠し球にも簡単に対応するんだもん。

 感心して氷彗さんを見ていると、奥の方へオタマジャクシが逃げたのを視界に捉えた。その方向の先には……逃げる途中の市民がいる!


「くっ!」


 間に合え……!


 私は思いっきり飛んで市民に覆い被さった。そして背中にオタマジャクシがぶつかり、爆発する。


「う……あぁ!」


 背中が焼けるように熱い。でも目を開けると守りたかった市民は守れたようで、ほっとした。私はゆっくりと目をつぶり、視界を暗転させた。私の、意識とともに。

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