076 伊月の訪問
「選挙だるーい」
運命の選挙の日。
朝から夜伽さんの嘆きを聞くことになった。
「あなた本気で言ってるの? 今回の活動うんぬんは置いておいて、そもそも有権者としての心得が……」
「愛梨〜、氷彗がウザいー」
「だ、抱きつかないでください!」
私に抱きついたことで、さらに氷彗さんの目が鋭くなった。私にも向けられるからハラハラする。
「ほら行くわよルナ。ごめんね愛梨、ルナはアタシが連れて行くわ」
「お、お願いします」
「ぶーぶー! 選挙より部屋でえっちしていた方が楽しい!」
暴れる夜伽さんを押さえつけて、茜さんが選挙会場へと強制連行した。
「……あんな大人にだけはなりたくないわね」
氷彗さんの言葉にほんの少し同意してしまう自分がいる。
ちなみに桃羽ちゃんはすでに会場入りをして、選挙に参加するよう若者に呼びかけている。効果はたぶん絶大だと思う。
十数時間が経過し、開票の時間がやってきた。
伊月さんたち与党は議席を多く失い、魔法少女の戦争に反対する勢力が軒並み議席を伸ばした。
そして過半数が割れたとき、ついに私たちの勝利が確定した。
「やったぁ!」
「まさか……あんな活動で日本をひっくり返せるだなんて思ってもいなかったわ」
「アタシ頑張ったよ、七海。向こうで見ててくれたかな」
「ルナの票、必要だった〜?」
まだ文句をいう夜伽さんは置いておいて、とにかく今は喜びの輪が広がる。
しかしその空気を壊すようにチャイムが鳴った。
誰だろう、風香さんとかかな?
と思ってドアを開けると、そこに立っていたのは……
「夜分遅くに失礼します。皆さん」
「伊月……さん!?」
「こんばん……おや、手厚い歓迎ですね」
伊月さんの喉元には氷の針が今にも突き刺さろうとしている。確認するまでもなく氷彗さんの魔法だ。
「それ以上、愛梨に近づいたら刺すわよ」
「これは手厳しい」
伊月さんは両手を挙げ、降伏の姿勢を見せた。
よく見ると茜さんも夜伽さんも変身しているし、戦力になるかはともかく桃羽ちゃんも変身している。
「質問は私たちからよ。なぜ今になって私たちの前に現れたの?」
「邪推しないでください。私はただ、あなた達に『参った』と伝えにきただけですよ」
そのわりには不気味な笑みを浮かべている。
心底信用ならないという意味では壱与さんの言ってた通りだ。
氷彗さんはそんな伊月さんに対して、ほんの少し氷の針を突き刺して牽制した。
光を乱反射させる美しい氷に、禍々しい血がほんの少しだけ滴った。
「……やり方を変えようと思いましてね。あなた達を過小評価し、放置した私に問題があるのです。ならば……あなた達を潰してしまえばいい。そう思ったんですよ」
「ようやく素直になったわね。で、何をするつもりかしら?」
「力を借りますよ、姉上」
ポツリと呟いた伊月さん。
するといつの間にか白天七柱が6体、部屋の前に現れる。
まずい……こっちはクラス6が3人。向こうはそれに匹敵する勢力が6体。どうすれば……
「やるわよ夜伽ルナ、羽田茜。覚悟は?」
「もち、できてる」
「派手にやってやるわ」
クラス6の御三方はやる気満々のようでした。




