066 震源地
昔から馬鹿らしいと思っていた。
○○はウチの領土
いや、○○はウチ固有の領土だ。
馬鹿らしい。
その土地に本来所有なんてない。その島はこの大地のものであって、唾を飛ばす汚いジジイのものではない。
なのにあたかも自分は神にでもなったかのように、島の、大地の所有を主張する。
実に馬鹿らしいと思っていた。
だから思っていたよりも冷酷に仕事に移れたのかもしれない。
領土争いが起こる島に黒い火を放ち、他国の建物を破壊した。
「Good job サツキ」
「……そりゃどーも」
本陣と命名された土地に戻り、同盟国の最強少女から賛辞を受けた。
同僚の宝塚菊と安田優からお茶を受け取り、数口を胃へ流す。
もちろんこんなにまったりとした時間が長く続くはずもない。
何せ相手は常に戦争に備えているようなところだ。すぐにでも報復の一手を打ってくるだろう。
「来ないんじゃね?」
「来るよ〜きっと」
せっかちな菊とおっとりした優により議論が形成されている。来るか来ないかの対象は……最強の魔法少女候補、魔龍だ。
「……キタ」
「え?」
アビーが目を細め、西の空を見つめた。
私には何も見えないけど、アビーには何かが見えているのだろうか。
「Everyone! Use defensive magic within 10 seconds (全員10秒以内に防御の魔法を使いなさい!)」
「え? は?」
「Hurry up! (早くして!)」
突然命じられた通り、全員で防御の魔法を発動した。
その数秒後、本当に魔力の波動攻撃に襲われて体が吹き飛びそうだった。
「なんだよコレェ!」
「純粋に魔力を飛ばしているだけ〜。でもこの威力って〜」
「化け物……」
「Beyond imagination. interesting(想像以上ね。面白い)」
アビーはニヤッとして、西の空へと飛んでいった。
アビーはアビーで早すぎて目に負えない。化け物は化け物に任せた方が良さそうだ。
するとインカムから声が流れてきた。
『何をしているんですか? アビーさんを追ってください』
「でもこんなパワーの戦闘……」
『勘違いしないでください。この戦争は勝ち負けなんてどうでもいいんですよ。まぁ政治家の先生たちにとってはそうでもないでしょうが、少なくとも我々にはどうだっていいことです。私たちがするべきことは……』
より強い魔法少女と命の奪い合いをして、経験を積み、強くなること。
耳にタコができるくらいに聞かされた言葉だけど、実際に命のやり取りをするには不安が過ぎる。
でも……
「やるよ、菊、優」
「本気かぁ!? 死ぬってこれ。見えないほどの距離からあのレベルの魔力波を撃ってくるんだぞ!?」
「アーさんに任せた方が〜」
「だめ。私たちは強くなる。そうでしょう?」
私は鞄から注射器を取り出した。それも2本。
「それに私は死なない。だって……」
私はそれを首元に打ち、勢いよく引き抜いた。
「私はまだ、あの人に復讐できていないからぁぁぁぁぁ!!!!」
炎のブーストを利用して空を飛ぶ。アビーに追いつける気はしないけど、戦闘が始まったらすぐに駆けつけられるはずだ。
2人がついてくるか不安だったけど、なんだかんだ2本撃ってついてきてくれた。
ちなみに私の体感だけど、1本打てばクラス5相当に、2本打てばクラス6の下位になら太刀打ちできるレベルにかる。
3本打てばきっと……と思っているけど、1本打つだけで気分がハイになるこの注射を3本も打てばどうなるか、想像に容易い。
私は私で歯痒いところで戦っているのだ。
ふと先の方で巨大な龍と、巨大な竜巻がぶつかったのが見えた。
……始まったんだ。史上初の魔法少女による戦争が。
私は鞄の中に3本目があることを確認して、飛翔を続けた。




