065 開戦
『緊急速報です。領土の主権を主張するエリアにて大規模な爆発が起きました。この地域一帯は日本固有の領土ですが、他国に実質的に占有されていた土地です。そこにて謎の爆発とのことですが専門家の皆さんどう思われますか?』
お昼のワイドショーで流れた気になるニュース。
小さな島でただの爆発が起こるとは考えにくい。映像にチラッとだけど、見覚えのある黒い炎も映っていた。
「氷彗さん……」
「私たち抜きで始めたのね。この黒い炎、間違いなく……」
歯を食いしばり、伊月大臣への負の感情を見せる氷彗さん。
それもそのはずで、この黒い炎を出したのはおそらく氷彗さんの元妹である有馬皐月さんだ。
つまり国営魔法少女の反対があるのならと、伊月大臣は民間魔法少女団体のゾディアックを動かしたということだろう。
「卑劣な手を使うものね」
「どうしますか? このまま向かいますか?」
「……戦争ということは相手もいる。それに有馬皐月だって仲間じゃない。どこに行っても敵だらけのところに私と愛梨の2人で乗り込むわけにもいかないし、かといって夜伽ルナや羽田茜を連れて行ったらエネミーが出てきた時への対処ができないわ。特に……人型エネミーだと顕著にね」
打つ手なし、ということ?
そんな時、コンコンコンと丁寧に3回ノックされた。しかしそれはドアではなく、窓の方から。
氷彗さんは私を庇うように手を広げ、慎重にカーテンを開ける。すると外にいたのは久しく見ていなかった顔。
顔のパーツが目だけの白いエネミーが、そこに立っていた。
「お久しぶりですね。人間の皆さん」
「ずいぶん愉快なタイミングでの再会ね。風蓋天だったかしら?」
「主よりいただいた名前を覚えていただき、光栄にございます」
部屋には当然、緊張が走っている。
この風蓋天というエネミー、というより白天七柱はクラス6すら凌ぐ実力を持つ。もしここで戦闘になったら、再び魔法少女センターは火に包まれること間違いなしだ。
「そんなに警戒しないでください。私はただあなた達に紹介状を持ってきただけですから」
「紹介状?」
「ええ。戦争という名の、パーティにね」
「……ふざけるのも大概にして欲しいわね」
「いたって、真剣ですとも。そもそも今あの少女たちが戦っているのが誰のせいか、考えたことはおありですか?」
「…………」
痛いところを突かれているのはわかる。私たちが戦争に行っていれば、ゾディアックの魔法少女たちは戦う必要なんてなかったはずなんだ。
「魔法少女はさらに強くなる必要があるのです。それが主より賜った命。ならば競争も必要であるとは思いませんか? たとえそれが犠牲を伴うものだとしても」
「思わないわね。卑弥呼は本当にそんな手段で魔法少女を育てることを望んでいたのかしら? 私にはそうは思わない」
「私もです。卑弥呼さんはきっと、姉妹の愛の力で魔法少女を強く……」
「見えぬ愛など語るものではありません! ただ歯が浮くだけです」
私の言葉に被せるように、風蓋天は強めに叫んだ。
どうやら卑弥呼さんはやり方を壱与さんと、伊月大臣と、白天七柱に任せたみたい。
壱与さんだけは愛で強くなることを示したくて、他は競争によって魔法少女を育てようってことなんだ。
同じゴールを目指しているのに……なんでこうも割れちゃうんだろう。
「とにかく。始まったものは取り返しがつきません。中つ国の魔龍も動き始めました。これよりどちらが生き残るかの戦いが激化するでしょう」
魔龍……しばしば"最強"の魔法少女は誰かという議論が起こることがあるけれど、その議論に毎回のように名を連ねるのが中国の魔法少女、魔龍だ。
「きっとあなたも戦地へ赴くでしょう。歓迎しますよ、山吹氷彗」
「……ッ!」
氷彗さんが舌打ちをした瞬間、風蓋天は風に包まれどこかへ消えてしまった。
私たちは一体、どう行動すればいいんだろう……。
明日の更新はお休みです!
ごめんなさい!




