062 結界術訓練②
その日から私の特訓の日々が始まった。
朝起きたら氷彗さんより早く訓練室に行って、結界術のためのポイント作成とその整列を行う。
はっきり言ってこのセンスは無さすぎた。
本当に壱与さんの力を受け継いでいるのか怪しくなるほどにできない。結界術のスタートにすら立てていない状況だ。
「はぁ、はぁ……」
「一旦休もうか」
魔力の消費も思いのほか激しい。
ポイントを作るだけの段階でこんなに苦労していて大丈夫かな。
「茜さんが使う結界術は昨日の爆発だけなんですか?」
「ううん。こんなのもあるよ『結界術:紅壁』」
茜さんは4つの魔石を投げ、赤い魔力の壁を作り上げた。
そっか……攻撃だけじゃなくて防御もできるんだ。
「すごいですね。でも攻守一体なのに、なんで結界術を使う人って減っていってしまったんでしょう……」
爆発もすごい威力だし、範囲も自在に操れる。壁も作れる上に、工夫すれば魔力のポイントを動かして糸のように敵を絡め取ることもできそうだ。
弱点としては魔力の消費が激しいくらい? といっても『桜花一閃』もけっこう魔力を使うから、そんなに大差は無く感じる。
「う〜ん、氷彗の動きを見てみて」
「え? は、はい」
氷彗さんはいま夜伽さんと模擬戦をしている。いつも横目で見ていたけど、本当にハイレベルな戦いをしていた。
「何か気がつくことがある? 自分が結界術を使って氷彗と戦うことをイメージしてみて」
「結界術を使ってですか……なんだろう」
氷彗さんの遠距離攻撃も、多彩な技にも対応できる気がする。
…………あれ? でももしかして……
「スピードについていけない、ですか?」
「うん、正解」
やっぱり! なんとなくいま頭をよぎったんだよね。
結界術はポイントを作って、そのポイントを繋げて魔力を結び、攻撃や防御に転じる。
じゃあその準備段階の間に氷彗さん……というかエネミーが待ってくれるかというと、もちろん大人しく待ってくれるようなことはない。
「なるほど……廃れていくのもわかる気がしますね」
「むっ、結界術使いのアタシとしては廃れるとまで言われるとショックだよ」
そう言って茜さんは立ち上がった。そして……
「ねぇ氷彗! アタシと模擬戦してくれない?」
「……へぇ。もう元の調子に戻ったの?」
「それを確かめたくもあるかな。それに結界術を実践で見せた方が愛梨にとってもいいと思わない?」
「そうね。愛梨、それでいい?」
「は、はい。見させていただきます!」
なんか凄いことになってきた。
氷彗さんと茜さんの模擬戦か……どうなるかわからないけど、ブランクと結界術の弱点がある以上茜さんには厳しいんじゃないかと思ってしまうんだけど。
「氷彗って愛梨には笑顔を向けるのね。いつもそうやって笑顔でいればいいのに」
「これは愛梨にだけ見せる特別なものよ。他の人に見せるつもりは毛頭ないわ」
「あはは……手厳しいなぁ」
こうして氷彗さんと茜さんが向かい合った。
ブラッディさんと戦う前もそうだったけど、緊張感が半端じゃない。
「ルールは一本先に取った方の勝ちでどう?」
「構わないわ。始めましょう、戦いを」
氷彗さんは氷の剣を、茜さんは真紅の魔石を持ち、臨戦態勢に入った。
さぁ……またしても凄いものが見られる気がします!




