005 姉vs妹
氷彗さんに斬られ、私の胴体は半分に割れる……なんてグロテスクなことにはならず、衣装である桃色の袴がホログラムのように数秒点滅したら元に戻った。
「な、何をするんですか!」
「口で説明するより早いでしょう? この訓練室では魔法少女の持つ魔力と化学反応を起こしてどれだけ深傷を負ってもダメージにすらならない。いわば仮の身体でいくらでも戦闘の経験が得られるのよ」
……結局口で説明してくれているのは氷彗さんの優しさかな? そうポジティブに受け取っておこう!
それを教えてくれたのはいいんだけど、氷彗さんはまだ氷の剣を握っている。冷気が視えるほど冷たいようで、触れただけで凍結しそうだ。
「えっと……なんでまだ剣を?」
「決まっているでしょう? あなたの強さを見るためよ」
「え……」
私と氷彗さんの間には5メートルくらいの距離があった。でも瞬きをした瞬間、氷彗さんは私の真横に立っていた。そして私の左手はまたホログラムのように点滅している。
私は一度跳躍して距離を取った。明らかに氷彗さんは私を攻撃している。たとえ傷一つ負わない空間だと分かっているからといって、手や胴体を斬られるのはいい気持ちはしない。
「逃げるだけかしら?」
「そんな!?」
また瞬きをしたら目の前に来てる!? 今度は10メートル以上離れたのに!
今度は首を斬られ、見ることはできないけどおそらく首元が点滅している。
氷彗さんがやる気ならこっちもやり返さないと。そもそも周りを見る限り、姉妹で訓練をするなんて当たり前みたいだし、躊躇う必要もないよね。
確かトヨタ中央高校襲撃事件の時に使った魔法は手のひらから桜色のビームを撃ち出す魔法だっけ。
「え、えいっ!」
思い出してイメージする。魔法少女マニアのためのブックを読み込んだ私としては予習はできてる。魔法において重要なのはイメージと意思!
その意思を汲んでくれたように、私の手のひらから500mlペットボトルくらいの太さの桜色ビームが発射された。ビームは桜色の像を残して突き進み、氷彗さんの元へ。
これで一本! これなら認めてくれるかな? なんて期待していた、そんな私がバカだと判明するのは一瞬だった。
「『フリージング』」
音にするなら、カキンッ! って音。そんなゲームの効果音みたいな音で私のビームが完全に凍結されてしまった。
凍ったビームに氷彗さんは回し蹴りをしてバラバラに砕いてしまった。いくら魔法少女の身体になると身体能力が上がるからといってそこまでやれる!?
すごく、すっごくあり得る可能性が私の中で生まれた。
魔法少女はクラス1〜6までの6段階に分けられる。私みたいな新人はもちろんクラス1。そして1〜3が下級魔法少女と呼ばれ、4〜6が上級魔法少女と呼ばれる。
上級魔法少女が下級魔法少女の面倒を見ることを姉妹システムと呼ばれているんだけど……氷彗さん、ひょっとしてクラス4とかじゃなくて……
「あの、もしかして氷彗さんのクラスって……」
「気がついた? 6よ」
表情一つ変えずに、氷彗さんは私の疑念を肯定した。
最高クラスの6だなんて……たしか日本でも5人しかいないんだよ!? そんな人が私のお姉さまに充てられるっていいの?
「まだ初日だから勘弁してあげるけど……」
「なっ!?」
今度はいつの間にか後ろに!?
「1ヶ月以内に私にダメージを与えなさい。そうでなければ魔法少女を辞めることね。……弱い魔法少女なんて必要ない」
そう言ってまた私を斬り裂いた氷彗さんの目は驚くほど冷たかった。




