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姉妹契約で結ばれた魔法少女たちは特別な感情を抱いてしまうかもしれませんよ  作者: 三色ライト
過去編(全3話)

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044 それぞれの道

「おぉ壱与(いよ)。待っておったぞ」


 干し草に横たわり、目を閉じているお姉さま。

 お姉さまの勘通り、ここ数日でひどく弱られた。本当にこのまま亡くなってしまうのではないかと思うほどに。


「妾と壱与で過ごした日々、楽しかったのぉ」

「そんな……辞世の話なら聞きたくありません!」

「ふふ、冗談じゃ。だがの、妾はもうこのままでも数日以内に死ぬ」

「…………」


 これは冗談ではないこと、そして現実になるものであることは察することができる。


「だからお主にこれを渡しておこうと思ってな」


 卑弥呼お姉さまが手渡してきたのは、一枚の白くて薄いものであった。そこにはずらずらと読み解けないものが書かれている。


「こ、これは?」

「古文朝というもので書いた文字というものじゃ。できる限り遠い未来を見て、倭国の者たちが使っている伝達方式を参考にした。したらこの様よ」

「ま、まさかこの白いもの一枚残すために、お姉さまは死期を早めるような真似をなされたのですか!?」

「うむ。もし外敵の言う通り、破格の力を持つ化け物が遠くにいるのだとしたらいつこの地に降り立つかはわからん。ならば妾たちの時代でなく、遠い先の時代を生きるものたちに授けねばならぬ。この世の真実、そして力のあり方を」


 私は唖然とした。

 お姉さまは自分の生きる時だけでなく、もっと先の未来のことまで考えていられるらしい。そのために自分の命を削ろうとも。


「壱与、お前には妾の墓守を頼みたい。この先、妾の手記を悪用するものや単に墓荒らしにくる者もいよう。その者どもから墓を守ってほしいのじゃ。結界術に長けた壱与なら可能じゃろ?」

「もちろんできますが……私の結界よりもお姉さまの結界の方が……」

「ふふ、妾の鬼力はもう最後の一絞りしかない。それはまた後で月も呼んで使う。それよりも……」


 そう言って卑弥呼お姉さまは今日初めて起き上がられた。そして目を開き、私を見つめる。

 黒く美しいお姉さまの髪はゆらめき、妖艶な力を持って私の目を魅了した。


「それよりも?」

「壱与、抱かせてくれ」

「はい…………………………はい!?」


 生返事したけど、絶対に生返事をしてはいけない内容だった。

 私は慌てて聞き返し、お姉さまの言葉を待つ。


「伝わらぬか? 妾は壱与を好いておる。壱与を妾のものにしたい。壱与のすべてを知りたい。壱与とずっと、一緒にいたい。姉妹の契りを交わした日から、妾はずっと、そう思っていたよ」


 お姉さまが言葉を紡ぐたびに顔が熱くなっていく。

 自分で言うのもあれですが、お姉さまに好かれている自覚はあった。でもお姉さまは一度として私に手を出そうとはしなかった。

 でも最後の最後、死期を悟ったお姉さまからの要望。断る理由もなければ、むしろ私だって……。

 私はお姉さまの寝床へと侵入し、麗しい女王に抱きついた。


「お姉さま……抱いてください」

「うむ。不器用な姉で済まなかった。できれば来世ではたくさん交わることができるといいな」

「ふふっ、お姉さまは来世でも不器用であられると思いますよ」

「むっ……言うようになったの。では壱与の来世は妾をまた導け。ゆっくりでいい。そしていつか恋仲となり、今から起こるようなことを楽しめばいい」

「はい。……ぁ」


 お姉さまは私の貫頭衣の隙間に手を入れ、探るように私を抱いた。

 本当に不器用な姉だった。でも愛し、愛されていた。それがあれば私は十分です。卑弥呼お姉さま。





 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






 姉上に入るな、と言われて数刻が経った。

 そろそろいいかと思って姉上に会いにいくと、ちょうど壱与様も来ている……なんだかやけに満足げですね。


「揃ったな。では妾は死ぬとする」

「姉上!?」


 突然の宣言に驚きを隠せない。いったい何を言っているんだ!


「お前たちに最後の力を託そうと思ってな。これじゃ」


 姉上が手に乗せたのは2つの青い球。


「未来へ繋ぐための鬼術を込めた。使い方はお前たち次第じゃ。今後、倭国の鬼女を強くするためにお前たちが考え、動いてくれ」


 そうして姉上は壱与様と私に青い球を託された。次の瞬間、姉上は床に伏して命を落とした。

 私と壱与様は黙って、かねてより用意していた墓へ埋葬するために動いた。


「壱与様はこれからどうするおつもりですか?」

「この力を早速使います。お姉さまに任された通りに」

「……そうですか」


 姉上が壱与様に何を任せたのか。私には検討もつかない。

 念のため周りに白天七柱も歩かせてはいますが、険しい道のりだった。もう少し近くに墓を作るべきでしたかね。

 墓についたら壱与様は石室に姉上を置いた。そして振り返り、私の顔を見る。


「それでは月様、ここでお別れでございます」

「えっ? どういう……」

「月様、入ってはいけません!」


 白天七柱によると、私と壱与様の間に琥珀色の境界線が生まれたという。

 姉上の鬼力を持って初めてわかる。それに触れたら……死ぬ。


「壱与様!? 何のおつもりですか!」

「私は永遠にお姉さまの墓を守ります。このお姉さまの鬼力を使い、私の死後、未来もずっと守り続ける結界を維持します。月様、倭国をお任せします」


 そう言って壱与様は石室を抱え、墓の中へと入っていってしまった。

 まさか……ここで死ぬ気なのかい!?


 私にはどうすることもできなかった。



 数年後。

 私は倭国を治め、国を運営した。

 結局姉上の力は私自身に組み込むこととした。こうすれば、長く姉上と一緒になれるし、長く生きることができる。そうすれば鬼女を強くしろという姉上の命令に従えるんだ。


「待っててね、姉上。私は絶対に成功させますから。何があっても何があっても、倭国の鬼女を最強の戦士に育てあげますから!」


 国が落ち着いたところで、私は倭国から離れた。

 そして私の顔を誰もが忘れた頃、少し名を変えて戻ってきては鬼女を育て、いつしか魔法少女と呼ばれるようになった彼女たちも育てた。


 でも、姉上に並ぶような、ましてや超えるような魔法少女は生まれなかった。


「自国だけではダメですね。ならば……世界を巻き込んで魔法少女を育てましょう。うん、そうしましょう。白天七柱、あなたたちも手伝ってくれますね?」

「我々は常に、卑弥呼様と共に」

「ならば行きましょう。魔法少女を育て、あの世で姉上に褒められるのです。姉上ぇ……ふふ、またお会いしたいです。姉上……姉上姉上姉上ぇ!」


 私はネクタイを締め、東京の街へ繰り出した。

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