043 白天七柱、誕生
卑弥呼お姉さまに案内されたのは山奥にある遺跡のような場所だった。
古代人が作ったと言われている石の柱に魔力で縛り付けられているのは外敵。白い体が不気味に蠢いていた。
「1・2……7体だね。ちゃんと全部いるみたいだ」
「当然じゃ。妾が逃すと思うか?」
お姉さまは鼻を鳴らし、自らの強さを誇示された。胸を張られるものだからふくらみに目がいくのは妹として当然のこと。むしろ見ない方が不敬というものです。
「さて、妾は今から此奴らに鬼力を与える。壱与、変身しておけ。いつ暴れるかわからぬぞ?」
「は、はい!」
私は半月板を手に取り、鬼女の装衣に身を包んだ。どこか倭国離れした琥珀色の衣装は少し恥ずかしさも感じる。
「いつでも大丈夫です」
「よし。ではゆくぞ」
お姉さまは外敵に触れ、鬼力を注ぎ始めた。
お姉さまの鬼力を注がれる外敵は暴れるどころか徐々に大人しくなり、落ち着きを手にするようだった。最終的に形すら変わり、白い身体はそのままに人の形になった。
しかし、彼らには顔のパーツがそれぞれ一つずつしかない。口だけ、目だけ、耳だけなど様々だ。
「どうじゃ? 我の力を得た感想は」
「私は……ここは一体……」
「お前たちは外敵。この国や魏にも現れ、人を食い散らかす化け物じゃ。言葉を交わせるのなら意味もわかるであろう?」
「えぇ。風のように、声が聞こえてきます。まるで故郷のようです」
お姉さまには何か考えがあるはず。ならば私にはそう易々と入ることはできない。
「風か。ならばお前の名は風蓋天と名付けよう。この者どもの統率と鎮静を頼むぞ」
「突然ですね……。自分が何者であるかもわからない私に……」
「何者かは自分で見つけろ。とにかく今は情報が欲しい。お前たち外敵は何者じゃ?」
「私たちは…………」
「ゆっくりでいい。思い出せ」
それからどれだけの無言の時が流れただろう。
長い時間が過ぎたことはわかるけど、私も月様もずっと黙って見守っている。
「そうだ……我々はこの星を乗っ取りに来た先兵です。遠く離れた場所にある星から、魔力軌道に乗ってやってきました」
「ふむ。わからぬ言葉が多くて困るわ。月! 何を言っているのかわかるか?」
「この大地や月、太陽と同じように、遠く離れた場所にこんな世界が広がっているんじゃないかな。彼はそこからやってきた一番槍というか、ん〜〜〜……下っ端ってやつかな。魔力軌道はよくわからないけど」
言葉の解析も行える月様はやはり頭がいい。こうした秀でているものを見ると、やはり嫉妬せざるを得ない。
「なるほどのぉ。その……お前らの星? とやらには外敵がまだまだおるのか?」
「それはもう。私などとは比べ物にならぬ強さを持つものがおります。彼らは黒天二柱と呼ばれる兄弟で、いつも二人で異星を滅ぼしているんですよ」
「ほぅ。それはそれは大変なことよな」
その話を聞いた卑弥呼お姉さまはどこか満足そうに頷いた。しかし顔は深刻な表情だ。おそらく、現状を憂ているのでしょう。
「壱与」
「は、はい!」
「妾は残りどもに同じように鬼力を与える。お前は国へ戻り、邪馬台国の鬼女を全員集めておけ。妾が帰ってくる前にな」
「かしこまりました! どうぞご無事で」
私は颯爽と立ち上がり、下山して国へ帰った。
国へ戻るとすぐに鬼女たちが集まってきた。卑弥呼お姉さまに認められている私は他の鬼女から慕われているのです。ドヤ。
「壱与さま! 卑弥呼さまは?」
「山にて神事です。決して近づかぬように。それよりも招集命令です。国中の鬼女を全員集結させなさい」
「「「はっ!!!」」」
招集からわずか数刻にて国中の鬼女が集まった。
タイミングよく、お姉さまと月様も下山された。
「うむうむ。よく集めたな、壱与よ」
お姉さまの綺麗な手が私の髪と頭を撫でる。それだけで鼓動は早まり、体温が上昇する。
「みな聞け! 妾たちの敵の正体を掴んだ。なにより大事なのはこれから先、お前たちのように若い鬼女は強くあらねばならないということ。何時も強くあれ! そのために妾と壱与のような関係を築くことを命じる。その名も姉妹制度じゃ。優れた姉が劣る妹を育て、その妹もいつしか姉となって次の妹を育てるのじゃ。さすれば鬼女は永遠なる強さを手に入れられるであろう」
私と卑弥呼お姉さまのような関係を皆にも!?
ただ……理にかなってはおられます。流石ですね、卑弥呼お姉さま。
「明日までに誰かと契約を結んでおけ。それから壱与、月。お前たちは妾の住居に来い。以上じゃ!」
こうして史上初となる鬼女全員の集会はあっさりと幕を閉じた。こうした歯切れの良さがお姉さまの良さでもありますね。
集会を終えた私たちは卑弥呼お姉さまの竪穴住居へと戻ってきた。
お姉さまが指を鳴らした瞬間、突然に白い人形の外敵が現れ驚愕する。
「どうじゃ、透明化もできる。おまけにそこそこ強い。そして何より妾に従ってくれている。素晴らしいであろう?」
「そ、そうですね。びっくりしましたが……」
「此奴らの名は白天七柱。これからの倭国の鬼女を育てあげる者たちよ」
そう言った卑弥呼お姉さまはどこか物寂しい様子であった。
「な、なぜそのようなお顔を?」
「妾はもう長くない」
「あ、姉上!?」
「な、何を根拠に!」
「当然、勘じゃ。だが当たるぞ。なぜなら妾は倭国一の鬼女だからな」
実際この日の数日後よりお姉さまの体調は悪くなっていった。
そして10日が過ぎた頃、唐突に私は卑弥呼お姉さまに呼ばれたのでした。
過去編はノンストップで更新したいので、水曜を休みにして火曜(明日)に更新します!




