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027 キングと会話

 救助活動には自衛隊も駆けつけて、夜の10時になるころには職員・魔法少女の安否が判明した。

 魔法少女センター本棟すべてが爆破されたというニュースは一瞬でテレビの電波に流れた。12人の被害者の名前とともに。


「…………」

「自分を責めるのはやめなさい。あなたはまだクラス1。神様のように何でもできるわけじゃないのよ」

「わかってます。……でも」


 自分の無力さで、また関わりある人を亡くしてしまった。その事実が胸を締め上げる。

 そんな私の手を握り、氷彗(ひすい)さんは不器用ながらベッドへ連れて行ってくれた。


「もう寝なさい。明日は朝から呼ばれているから。愛梨(あいり)もね」

「……はい」


 私は氷彗さんの言う通り横になり、目を閉じた。

 爆破されたのは魔法少女センターの本棟だけで、隣接する寮や病院は無事だった。芽依(めい)さんや美空(みそら)ちゃんも無事だと聞いて安心した。

 人型エネミー……まだ心の整理がついていない。一刻も早く夢の中へ逃げたい。そう思うのになかなか意識は飛んでくれないのでした。



 翌朝、氷彗さんと同じタイミングで目を覚ました。

 食堂はもちろん爆発してしまったので、近くのコンビニでおにぎりを買って2人で食べる。


「あの……呼ばれているというのは?」

「……ここで驚かれるのは嫌だから後で驚きなさい」


 なんだか答えになっていない言葉で答えられてしまった。驚くような人物に呼ばれているってこと?

 朝食を終え、慌ただしく支度をして寮の最上階へ案内される。

 最上階といっても普通の部屋で、誰かと会うための部屋とは思えないんだけど……。


「失礼します。山吹(やまぶき)です」

「うむ! 入りなさい!」


 中から聞こえてきたのはおばさんの声。しかもかなり大きい。

 氷彗さんがドアを開けると、奥には白髪を流すブラッディさんも来ていた。そしてその向かいに座っているのは昭和アイドルのような髪型、ワインレッドの髪色のおばさん。見間違うはずもない、彼女は……


「く、工藤かず子さん!?」

「はっはっはっ! 噂の新人も元気で何より!」


 なんで魔法大臣にして伝説の魔法少女がここに!? と思ったけど、この事件の後だから当然と言えば当然なのかな。


「氷彗さん、どうしてキングカズがここにいるって教えてくれなかったんですか!」

「教えたら騒いでいたでしょう? 隣の部屋に漏れるほどに」

「うっ……たしかに」


 ちなみにキングカズというのは工藤かず子さんの愛称だ。54歳にしてまだ変身できる(1分だけという制約はあるけれど)のはキングと呼ばざるを得ない。


「新人!」

「は、はい!」


 突然キングカズに呼ばれてしまったので声が裏返ってしまった。


「今私のことをキングカズと呼んだろう! クイーンと呼べ!」

「く、クイーン……」


 すっごい似合わない。失礼ながら。


「大臣、今はそんなことを話す場合じゃないはずです。早く本題に」

「む? そうだったな。まぁ座れ、新人、山吹」


 私はブラッディさんの横に、さらにその横に氷彗さんが座る。

 冷静になって考えると、今この部屋にはクラス6・クラス6・大臣がいる。その中に私という新人が混ざっていると。うん、わけがわからない。


「話はもちろん人型エネミーについてだ。我が国では3例目となるな」

「さ、3例目!?」


 私は座って間も無く立ち上がった。


「どうした? 新人」

「どうして確認できていたのに、公表しなかったんですか!? 公表していれば上手く対策を……」

「うむ、その意見ももっともだ」


 私の意見に、あっけなく首を縦に振った大臣。すぐに一蹴されるものだと思っていたからなんだか拍子抜けだ。


「ただ人型エネミーの公表を躊躇ったのには理由がある。1つはあの口だけ野郎以外に好戦的な者がいない点、もう1つはクラス6でも負けることがあるという事実を知られて、魔法少女になるのを辞めてしまう子が出るのを避けるためだ。要するに私の考えは『魔法少女を育て、人型エネミーにも対抗できる戦力を整える』というものだ」


 な、なるほど……。たしかに強すぎるエネミーがいるとわかると、才能がある子でも魔法少女になるのを躊躇っちゃうかも。


「……実際、あの爆砕天という人型エネミーには私と氷彗の2人でも勝てるかわからなかった。もちろん魔法少女センターを守るという制約があったのは事実だけど、本気でやり合っても勝てるかどうか……」

「そ、そんな! 氷彗さんとブラッディさん2人でも!?」


 そんな事実、魔法少女に長く憧れてきた私ですらビビってしまう。それは公表しない方がいいかもね。


「というわけだ新人。君にはこれから人型エネミーについて黙っていてもらうぞ。クラス6の他に、このことを知っている魔法少女は君だけだ」

「は、はい」


 とんでもない秘密を知ってしまった気がする。はぁ、荷が重い……。


「さて、私は東京に帰るとする! 山吹、1つ話がある」

「なんですか?」

「……今の力のその先を、見てみたいと思うか?」


 私には理解できない言葉。でも氷彗さんの目は少し、輝いた気がした。


「もちろんです。この先の力が手に入るのであれば、全力を尽くします」

「そうか。ならば私も一肌脱ぐとしよう。さっそく宮内庁へ行ってくるさ」


 そう言って大臣は窓を開けた。何をするのかと思ったらなんと窓から飛び降りてしまった。


「え、えぇ!?」


 と思ったけど、大臣は変身して爆速で飛んでいった。まさか1分で東京に行く気? ……まさかね。

 声の大きい大臣が去った後の部屋は驚くほど静かだった。

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