026 撤退
敬愛する姉に指示された通り、私は瓦礫の中で魔法少女センターの職員さんを捜索した。
魔法少女はたぶん無事だ。そんな簡単に潰されるとは思えないし、変身できない子でも姉が守ってくれるはずだから。
ただ、それは普通の人間であるセンターの職員さんには当てはまらない。事務作業中だった人もいるだろうし、近くに魔法少女がいなくてモロにダメージを受けた人だっているかもしれない。
「誰かいませんかー! いたら返事してください!」
私は瓦礫の山に向かって叫んだ。すると瓦礫の隙間からわずかに声がする気がした。
「ここですか? 今瓦礫をどかしますね!」
上空で繰り広げられているであろう死闘も、不思議と今はあまり気にならない。姉である氷彗さんと、同格のブラッディさんを信じているから。そして今私が誰かのためになるのはこの救助活動だから!
大きな瓦礫も片手でひょいっと動かせる。つくづく魔法少女の身体というのは凄いものだと感心する。
瓦礫の下から出てきたのは職員さんたちだ。どうやら魔法少女さんもいて、その子がずっと守ってくれていたみたい。
「ありがとうございます! エネミーは……」
「大丈夫です! 氷彗さんが頑張っていますから!」
私は一礼して次のエリアに向かう。次々と職員さんを救助して、瓦礫を食い止めていた魔法少女さんを助けて、結構な人を助けられた頃、忘れもしない人型エネミーが地面へ叩きつけられたのを視界に捉えた。
「ひっ……い、生きてる?」
ピクピクとはしているからまだ生きているのは間違いなさそう。上空の氷彗さんたちの様子はわからないけど、トドメを刺せるならやっちゃったほうがいいかな。
そう思って魔力でできた桜の花を生み出し、『桜花一閃』を撃とうと思ったその時、倒れている人型のエネミーの下からニュルッと白いものが生えてきた!
「はぁ。拘束具が壊されているからもしやと思いきや、やはりこちらに来ていましたか爆砕天」
今まで戦っていた人型のエネミーとは違い、目がある。でも逆に口はない。共通しているのは髪も耳も鼻もない点。
「うる……セェ」
頭の中がパニックになる。また人型のエネミーが出てくるなんて……
「愛梨! 離れなさい!」
「氷彗さん!」
上空から氷彗さんが降りてきて、私と人型エネミーの間に立った。
「まだいたのね。ここでまとめて……」
「おっと、私は攻撃の意思はありません。……今のところはね。このじゃじゃ馬を引き取りに来ただけですよ」
紳士的な口調の人型エネミーは目も穏やかだ。さっきまで戦ってきた口だけ人型エネミーとは対極な性格に映る。
「あなたに攻撃の意思があるかどうかなんて関係ないわ。ブラッディ・カーマ、あなたもそう思うでしょう?」
「その通り」
上手い! 氷彗さんが話して気を引いているうちにブラッディさんが後ろに降り立った! これで挟み撃ちだ!
ブラッディさんも氷彗さんも、瓦礫を蹴って加速! 逃げ道は塞いだ! 2人の勝ちだ!
「やれやれ……」
ブゥン! と音を立て、目だけの人型エネミーは消えてしまう。跡地には口だけの人型エネミーすらいない。
「申し遅れましたね」
ハッとして上を見ると、20メートルくらいの高さに人型エネミーがいた。
「うそ……飛んだところ、目に追えなかった!」
「私は白天七柱が1柱、風蓋天。歴史は動き始めました。さぁ、来るべきその日に、また会いましょう」
そう言い残した人型エネミーは一瞬にして消えてしまった。
……何が起きたのか、まったく理解できなかった。でも私はやるべきことをやるために、また救助活動を再開した。……誰かのために、なるために。




