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1話 幸運!~目を覚ましたら美少女~


 俺、本条真人(ほんじょうまさと)はただひたすらに不運だった。


 小さい頃はよく道端の石につまづいて転んだし、鳥のフンが頭上から降り注いでくることもしょっちゅう、自転車は月に一度はパンクした。

 極め付けは受験に向かう際の電車が遅延して、受験会場に間に合わなかった。

 もちろん遅延証明ができてテストは受けることはできたが、結果は不合格。第二志望の高校に行く羽目になった。

 

 誰かが言った。「人生にはついている時期とついてない時期があって、どちらも長くは続かない」と。

 だが俺は生まれてからずっと「ついていない」。これだったら残りの人生ずっと幸運が続いてもいいくらいだ。


 人生には何回かの運命の分岐点がある。その瞬間に運が味方をしてくれれば人生の勝者になれる。

 俺は今までどれだけ不幸が続こうとも、いずれ必要なときに運が味方をしてくれると、そう信じて生活してきた。


 まだ、俺だって高校生だ。可能性はいくらだってある。

 そう思っていた矢先、その出来事は起こった。


 「危ないっ!!」


 そう聞こえたとき、それは自分に対してなのかどうかすらも俺は理解していなかった。

 その瞬間、頭上にいくつもの鉄骨が襲いかかってきた。

 気付いたときにはもう鉄骨は俺の真上にまできていた。


 …もう、間に合わない。


 ガラガラガァァァアン。


 …痛い、痛い。なんで、なんで俺ばっかり…。

 消えゆく意識の中で俺は呟いた。


 「最初から最後まで、俺はずっとついてなかったなぁ…。」

 

 そして俺の人生は幕を下ろした。―


◆◆◆


 「……………ぶ?」


 ん?何か声が聞こえる。俺は死んだはずだ。幻聴だろうか。


 「…と……い…うぶ?」


 いや、確かに声が聞こえる。しかも後頭部にふかふかした感触がする。


 「……はっ!?」


 意識が覚醒した俺の目の前に映ったのはとても可憐な少女の姿だった。


 「あの…だ、大丈夫、ですか?」


 瞳をうるうるさせながらその少女は俺に訪ねてくる。


 「あれ…、俺は?」

 意識は戻ったが、正直今何が起きているのかが全く理解できない。俺は死んでしまったんじゃなかったのか?


 「あなたはこの森の中で倒れてたんです。それで、私が、その…」


 顔を少し赤らめたその子を見て俺はすぐに現状の把握に努めた。


 「介抱してくれたの?」

 

 今、俺の頭は彼女の太ももの上にある。つまり、彼女は俺を膝枕してくれていたのだ。


 「はい。その、心配だったので…。」


 柔らかい感触が後頭部に伝わる。膝枕なんて生まれてこのかたほとんどされたことなんてなかった。


 「ありがとう。もう大丈夫。」

 

 そう言って俺はゆっくりと立ち上がる。辺りを見回すと本当に木ばっかりだ。彼女の言う通り、ここは森らしい。こんな所に一人で寝てたと考えると彼女が通りかかってくれたのはラッキーだ。


 「さっきまで介抱してくれてありがとう。俺の名前はマサト。君の名前、聞いてもいいかな?」

 

 介抱してくれた彼女は立ってみると俺より一回り小さく、年もいくつか年下のように見える。桃色の髪をした小さな妖精のような少女である。


 「私は、レミシアって言います。一応この辺りで冒険者やってます。」


 「冒険者?」


 「はい。あの、何かおかしかったでしょうか?」


 レミシアという子はまん丸い目をくりくりさせながら俺を見つめてくる。この娘可愛いなぁ。


 「いや全然!レミシアちゃん冒険者なんだ。こんな森まで一人で来るなんてすごいね!」


 「私なんて全然…。まだほとんど駆け出しみたいなものですから…。その、パーティーとかも全然組めてないし…。」


 レミシアは落ち込んだ様子で項垂れている。


 …それよりも、だ。今までの会話で冒険者、パーティーとか明らかに聞き慣れない単語が当たり前のように出てきた。加えて彼女は綺麗な桃色の髪に緋色の瞳をしている。

 …ここは現実世界ではないのか?


 レミシアの服装も、いかにもファンタジーって感じで杖?みたいな物も持っている。


 ―結論。俺は異世界に来てしまったらしい。―


 運悪く日本で死んだ俺は、運良く異世界に転移か。もはや訳がわからない。


 「はぁ〜。マジか…。」


 思わずでっかいため息が出た。


 「あの、マサトさん大丈夫ですか?」


 レミシアは心配そうに俺を見つめている。


 「えーと、レミシアちゃん。ここって、どこ?国とかってあるでしょ?」


 「えっ!?」

 

 予想以上にレミシアがびっくりしている。一人で森に来てるくせしてその場所さえ把握してないなんておかしいもんな。


 「えと…、ここはモールの森です。国って、何ですか?あの、もしかして記憶が…」


 「いやいや違うんだ!実は俺、ここよりもっと遠い所からその…転移?的なことしてここにやってきたみたいなんだ。」


 やや適当な設定だが、実際嘘は言ってない。ファンタジーな世界なんだし、魔法とかもあるだろう。どうやら国という概念がないらしい。


 「転移魔法ですか…。その地域にはすごいウィザードがいるんですね。」


 「そんなんだ。そりゃもうすっごいウィザードでさ!距離は飛ばせるくせに位置が正確じゃないんだけど。」


 「仕方ないですよ。転移魔法なんて使えるだけでも凄いんですから。」


 俺にファンタジーの知識があって良かったぁ。話を合わせることはできそうだ。

 

 「それで、何をしにこんなところに?」


 「…旅をするのに、理由なんて必要か?」


 俺はキメ顔でそう言った。

 若干レミシアが引きつった顔をしているのは気のせいだろう。

 しかし、せっかく異世界に転移してきたのだ。ファンタジーな世界で魔法や剣などをマスターしてみたい。


 「冒険者ってのになってみたいんだけど、どうなればいいのかな?」


 「冒険者ですか……って、えっ!?」


 「え?」


 「マサトさん、冒険者になりたいんですか!?」


 「うん、そうだけど…。」


 何やらレミシアの目がキラキラ輝いている。


 「あのその、嘘じゃないですよね?」


 「いや嘘じゃないって、それより冒険者のなり方を…」


 「教えます!教えますから!…その、一つお願いを聞いてもらえないでしょうか?」

 

 すごい勢いで押される。何かちょっとキャラ変わった?


 「うんいいけど、お願いって?」


 「あの…その…」


 レミシアはやや頬を赤らめてこう言った。


 「私と、パーティー組んでくれませんか?」

 

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