修練2
「鍛錬の指導?」
千切った朝食のパンを口へ運ぼうとした手を止めると、ファイガは眉を上げた。
長方形の机を挟み、ツルハの横に座っていたユズハはそう言うと、大きく頷いた。
「そうなの。ほら、ツァイルの講義課題があるでしょ?
ツルハちゃん、剣を使った武術を練習したいんだって。将来的にも護身用に得物は剣で考えているみたいなんだけど、私は棍や体を使ったのが主だからさ。
ほら、アンタは戦士志望だし、小さい時から剣や斧を使った修行は学んでたって言ってたじゃない」
「そりゃあ、まあ……そうだけど」
ファイガは一瞬だけ、ツルハの方を見た。
その眼は、こんな大人しそうな子が剣を、というような驚きと感心を混ぜたような色をしていた。
ファイガがスープを啜ると、ユズハは言い加えた。
「ツルハちゃん、この半月くらい、ずっと朝早くに3層庭園を走ってるのよ」
「3層庭園? それって、水瓶の間の下にある、あの庭園か?」
スープを吹き出しそうになったファイガの目は、点のように丸くなっていた。
ファイガはツルハの顔を見ながらかたまると、ツルハは恥ずかしそうに微笑を返した。
ファイガは机に乗り出した体を戻すと、瞬きをしないまま大きく息を吐いた。
「……こりゃあ驚いたな。いやさ。ツルハはどっちかって言うと、そこにいる脳筋女と違って、頭脳派だと思ってたから、ちょっと意外で」
「ちょっと、脳筋ってどういう意味よ!」
ユズハが長机を叩くと、ファイガは「まあまあ」と宥めた。
「そっかあ。ツルハが剣の道をなあ……うんうん」
腕を組みファイガが唸りながら頷くと、ファイガは「よし分かった!」と威勢の良い声で応えた。
「その役、引き受けた! 早速講義が終わったら夕刻、体技場に集合だ!」
ファイガが言うと、ツルハは膝に両手をつき、改まって頭を下げた。
「宜しくお願いします!」
「良いって良いって、そんなに改まらなくても。同じ級の仲間じゃねえか。気楽に行こうぜ!」
「はい!」
ファイガが澱みの無い、活力に溢れた笑みで言うと、ツルハも大きく頷いた。




