4人の交点1
「で、なんでこんな所にいるのよ」
夜の寮部屋で、ツルハの隣でユズハは腕を組み言った。
それに対面するツァイは、アルフィーの横で面倒くさそうに頭を掻いた。
「アル達が来たのも驚いたけど、ユズハちゃんとツァイが、まさかお友達だったなんて」
未だに驚いた様子でツルハが2人の顔をキョロキョロ見ながら言うと、2人は、
「「違う!!」」
ひいい、とツルハが引っ込むと、ユズハは、キッとした顔でツァイを睨んだ。
「ったく。村を急に出て行くことになったのは、お父様のこともあったから仕方ないにしても、文通をいきなり切ったことは許せないわよ。一体私がどれだけアンタのことを心配したことか」
「いきなり音信不通になったことは、悪かったな」
ツァイがきまり悪そうに謝ると、ユズハは膨れて、「謝れば良いってもんでもないわ」と言い捨てた。
「2人は、同じ国の出身なんですか?」
アルフィーが訊くと、ツァイは頷いた。
「ああ。話せば結構長くなることだ。
オレが親父の後を継いで、騎士見習いに入ってからのことは、話したな?」
ツァイが確認すると、ツルハとアルフィーはコクリと頷いた。
それを見ると、ツァイは一つ一つを思い返すように静かに話し始めた。
「こいつ、ユズハと出会ったのは、それよりも以前の話になる。
オレが生まれる前、オレの母親は、オレの故郷、穂の国のチゴって所にある村で暮らしていた。
当時、穂の国は遠方にある、モナルカって国と手を組んで、東の厄竜を討伐しようとしていたんだ。
オレの親父ってのは、そのモナルカの騎士でな。遠征中に山から滑落した所を、御袋が助けたって訳だ。
以来、親父と御袋は色々あったらしいが、何だかんだで、ユズハの親父が治める村に住ませてもらうことになった。
そして、オレがまだ2歳の時に、妹のリエンと一緒にユズハも生まれたんだ。
そこから先は大体想像がつくだろ。
ユズハとは、オレが7歳の時だったから……」
「5年間よ」
「そうだ。5年の間、このじゃじゃ馬の遊び相手をさせられたんだ」
「じゃ、じゃじゃう……」
ユズハの言葉を遮るように、ツァイは話を続けた。
「オレが村を出て行くことになったのは、親父にモナルカ国から帰還命令が出された時だった。
国王の命令には逆らえないからな。親父は御袋とオレ達を連れて、モナルカへ移り住むことになったんだ。そこから先は、お前達に話した通りだ」
ツァイがツルハ達に視線を移すと、ツルハは頷いた。
「文通というのは?」
アルフィーが訊くと、ツァイは「ああ」と声を漏らした。
「モナルカへ移ってから、こいつとは何年か文通でやり取りをしてたんだ」
「それをこいつは破門された時に、"どうもオレは親父と同じ道は歩めそうにない。これからは自分に合う道を探して旅をすることにする"、なーんてカッコつけた文を最後に音沙汰無しになったって訳!」
「バカ! んなこと、誰も手紙で書いてないだろ!」
「いーや、書きました! 書いてなくても、"そんなオレ、カッコいい"的な臭いプンプンにおわせてました! あー嫌だ嫌だ」
ユズハが鼻をつまんで臭物を払うような仕草をすると、ツァイは「てめっ!」と立ち上がった。
それを、どうどう、とアルフィーが宥めるも、ユズハは大きく呆れたようにため息をついた。
「鬼王なんて大そうな名前を聞くもんだから、今頃剣豪の道にでも躍起になって進んでいるのかと思えば、リエンちゃんを魔物に攫われた上、強さばかりに執心していたとはね」
ユズハが言うと、立ち上がっていたツァイは、グッと何かを呑むこむように喉を唸らすと、腰を下ろした。
「……すまねェ」
少しの沈黙の後、ツァイがその言葉を漏らすと、ユズハは、もう一度息を溢し言った。
「謝るのは、私にじゃないでしょ」
「…………」
ツァイは、ユズハの手が差し出されると、ハッとした。
「リエンちゃんをその魔物から助けるんでしょ。アンタ一人じゃ頼りないし、リエンちゃん、私にとっても大切な妹だから」
ツァイはユズハの顔をしばらく見つめていた。
そして、その曇っていた表情が笑むと、ガシッとユズハの手を掴み、「ああ」と力強く頷いた。
その様子に、ツルハが感動と安堵に打たれたまま、じーんと浸っていると、ツァイとユズハはその、うるうるとした瞳に気が付き、気恥しそうにお互いの手を離し、プイッと視線を逸らした。
「ユズハ。リエンのことも大事だが、今は足取りが全く掴めない魔物のことよりも、目の前にある脅威だ」
「え?」
ツァイの言葉に呆気を取られると、ツァイはアルフィーに目を移した。
ツルハとアルフィーは、ツァイに一度頷くと、真剣な眼差しをユズハに向けて言った。
「ユズハちゃん。私たちにも、ユズハちゃんに聞いてもらいたいことがあるの」




