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陰りの姫のツルハ -太陽の陰に生まれた勇者-  作者: 望月 優響
第四章 クグノアーツ学院
55/229

ルベル1

「うむ、あの様子であれば心配はないだろう」


 学院の少女達と共に、嬉しそうに学堂を出て行くツルハの様子を、廊下の奥から眺めて言うと、ルベルはアルフィーに向き直った。


「さて、では参ろうか。アルフィー君」


 ルベルが言うと、ツルハの姿を見つめていた、アルフィーの安堵の眼差しは、険しい光を帯びた。

 少年少女の無邪気な声を後に、昇降機の扉が閉まると、2人を乗せた透明な四角の箱は天上へ向かって昇った。


「全く、腐れ縁というやつかね。まさか再び、こうしてお互いに顔を合わす日が来ようとは」


 昇降機を降り、ガラス張りの美しい廊下を歩く中、ルベルが苦笑気味に言うと、アルフィーも同じ声調で返した。


「それはこっちの台詞(セリフ)だ。

 この国は私をおかしくさせそうだ」


「まあ、そう言うな。せっかく()()()()()に再会できたんだ。

 あとで茶でも手に、募る話に華を咲かせようではないか。

 最近はハーブティーに凝っていてね。特にこの水晶宮から飲む茶は格別なんだ」


「良いから、さっさと学院長に会わせろ」


 学院長室の扉の前に着くと同時に、アルフィーがそう言うと、ルベルはクスッと笑った。


「お前は目に濁り水晶でもはめているのか?」


 昔ながらの、癇に障る口癖がルベルから漏れると、アルフィーは眉を顰めた。

 怪訝な顔をするアルフィーに、ルベルは学院長室の荘厳な扉を開くと、中に案内した。

 本棚や応接用のソファ、あらゆるものがきちんと整頓され、余計なものの一切ないその部屋は、その部屋に座する者の清廉さを表しているようだった。

 まるで壁がないように透き通ったガラスの壁からは、空を漂う雲が浮かび、そこが天上界のようにさえ思わせる。


「ようこそ、アルフィー君。我がクグノアーツの玉間(ぎょくま)たる、私の部屋へ!」


 ルベルが空になっていた、高潔な雰囲気を放っている執務机に手をかけて言うと、アルフィーは目を丸くした。


「……お前が、学院長!?」


 指を差し、魚のように口をパクパクさせていた、アルフィーからようやく声が出ると、悪戯に成功した子どものような表情でルベルは席に座した。


「そうとも。

 私がこの学院の長にして、クグノアーツの最高権力者。ルベル・リレーデ様だ」


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