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陰りの姫のツルハ -太陽の陰に生まれた勇者-  作者: 望月 優響
第四章 クグノアーツ学院
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学院の仲間たち2

「皆、昼時ですまないが、一旦席についてくれ」


 ギルの声が学堂に響くと、ざわついた広間は一瞬止んだ。

 あちこちに散らばった視線が、見慣れた若い教師と共に入って来た少女に集まると、別の色を帯びた騒めきが広間に広がった。

 ツルハは教壇の真中に向かう中、体に突き刺さる無数の視線の矢に、全身が火照った。

 廊下で考えていた自己紹介の内容など、真っ白になり、今はただただ、最高潮に達した不安と恥ずかしさを堪えるのが精いっぱいだった。

 綱渡りをしているような気持ちで、ようやく教壇に辿り着くと、ツルハは深く呼吸をした。

 風に揺られる木々の葉のような騒々しさが、シーンとなると、ギルの声が隣から響いた。


「突然だが、今日から皆に新しい仲間が加わることになった」


 ギルがその一言を言うと、学堂は押し寄せた怒涛のように、ドッと騒めく。

 転入生、入学生といった男の子達の声が聞こえたが、それ以上はザワザワとした声の波で聞こえなかった。

 ただ、その全てが自身のことを言っているのだと思うと、ツルハは顔を真っ赤にした。


「静かに、静かに!」


 パン、パンとギルが手を叩くと、学堂は再び静かになる。


「この度、クグノアーツ学院に編入してきた、ツルハさんだ」

 ギルが紹介すると、ツルハはハッとし、顔を上げた。


「つ、ツルハ・リオールです。よ、()()()()()()()()()()!」


 熱だけの真っ白になった頭の中、思考のない言葉が口走ると、学堂内はポカンとした。

 ツルハの脳裏に、しまった、という青ざめた言葉が響くと、


「……プッ、クスクス」


 とうとう堪えきれなくなった、段々机に座っていた男子の一人が吹き出すと、その笑い声は波紋するように広がった。

 笑い声の中、ツルハは羞恥のあまり、投げやりの気持ちが胸の底に広がると、シュンと肩を落とした。

 大人びた雰囲気とは一変、意外そうに隣の少女を見ていたギルは、咳ばらいをすると、


「ユズハ!」


 ギルの声に、急に呼ばれた名前に、段々の中央付近からバネに弾かれたように、「はい!?」と不意をつかれた声と共に1人の少女が飛び上がると、


「ツルハさんの席は、あの子の隣です」

 ギルが言うと、ツルハと頷き、立ち上がった少女の方を見た。

 元気そうに手を振る藍色の髪の少女を目印に、ツルハはスタスタと歩いていくと、長机の端にいた男の子が立ち上がり、ツルハに道を開けてくれた。

 ツルハが軽く頭を下げると、その少年は快い笑みを返した。


「あの……」

「やったあ、女の子だ!」


 ツルハが言うより先に、長い髪を団子に束ね、後ろに垂らした少女が叫ぶと、ツルハは呆気にとられた。

「私、ユズハ。宜しくね」


 可愛げなウィンクで、少女が天真爛漫な挨拶をすると、ツルハも、


「ツルハです。宜しくお願いします」


「わあ、名前もそっくり! 私の周り、男の子ばっかだったから心細かったんだあ」


「とてもそんな風には見えなかったけどな」

 先程の席までの道を開けてくれた少年が、苦笑気味で言うと、ユズハは頬を膨らませた。


「俺はファイガ。宜しく」

 少年がそのまま挨拶をすると、ツルハはその名前を重ね、「宜しくお願いします」と返した。


「僕はフサン」

「おいらはポッチョ」

「私はレイと申します」


「あー! あー!」とユズハは周りの声をかき消すように手を振るうと、


「そんないっぺんに言ったら、ツルハちゃんも困るでしょ!」

 ユズハはそう言うと、ツルハに振り返り、


「ツルハちゃん、私達と一緒にお昼食べない?」


「え? けど私、お昼持って来てなくて……」


「気にしなくて良いよ。私達の分けるから。

 ね、行こう!」


 ユズハがツルハの手を取り立ち上がると、ユズハとツルハを待つように、3人の女の子達が包みを手に心待ちの笑顔を浮かべていた。


「ユズハ! ツルハさんの寮はお前達と同室で良いな?」

 ギルが訊くと、ユズハは「はあい」と声を返した。


「よし、じゃあ行こう」


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