学院の仲間たち2
「皆、昼時ですまないが、一旦席についてくれ」
ギルの声が学堂に響くと、ざわついた広間は一瞬止んだ。
あちこちに散らばった視線が、見慣れた若い教師と共に入って来た少女に集まると、別の色を帯びた騒めきが広間に広がった。
ツルハは教壇の真中に向かう中、体に突き刺さる無数の視線の矢に、全身が火照った。
廊下で考えていた自己紹介の内容など、真っ白になり、今はただただ、最高潮に達した不安と恥ずかしさを堪えるのが精いっぱいだった。
綱渡りをしているような気持ちで、ようやく教壇に辿り着くと、ツルハは深く呼吸をした。
風に揺られる木々の葉のような騒々しさが、シーンとなると、ギルの声が隣から響いた。
「突然だが、今日から皆に新しい仲間が加わることになった」
ギルがその一言を言うと、学堂は押し寄せた怒涛のように、ドッと騒めく。
転入生、入学生といった男の子達の声が聞こえたが、それ以上はザワザワとした声の波で聞こえなかった。
ただ、その全てが自身のことを言っているのだと思うと、ツルハは顔を真っ赤にした。
「静かに、静かに!」
パン、パンとギルが手を叩くと、学堂は再び静かになる。
「この度、クグノアーツ学院に編入してきた、ツルハさんだ」
ギルが紹介すると、ツルハはハッとし、顔を上げた。
「つ、ツルハ・リオールです。よ、宜しくお願いしましゅ!」
熱だけの真っ白になった頭の中、思考のない言葉が口走ると、学堂内はポカンとした。
ツルハの脳裏に、しまった、という青ざめた言葉が響くと、
「……プッ、クスクス」
とうとう堪えきれなくなった、段々机に座っていた男子の一人が吹き出すと、その笑い声は波紋するように広がった。
笑い声の中、ツルハは羞恥のあまり、投げやりの気持ちが胸の底に広がると、シュンと肩を落とした。
大人びた雰囲気とは一変、意外そうに隣の少女を見ていたギルは、咳ばらいをすると、
「ユズハ!」
ギルの声に、急に呼ばれた名前に、段々の中央付近からバネに弾かれたように、「はい!?」と不意をつかれた声と共に1人の少女が飛び上がると、
「ツルハさんの席は、あの子の隣です」
ギルが言うと、ツルハと頷き、立ち上がった少女の方を見た。
元気そうに手を振る藍色の髪の少女を目印に、ツルハはスタスタと歩いていくと、長机の端にいた男の子が立ち上がり、ツルハに道を開けてくれた。
ツルハが軽く頭を下げると、その少年は快い笑みを返した。
「あの……」
「やったあ、女の子だ!」
ツルハが言うより先に、長い髪を団子に束ね、後ろに垂らした少女が叫ぶと、ツルハは呆気にとられた。
「私、ユズハ。宜しくね」
可愛げなウィンクで、少女が天真爛漫な挨拶をすると、ツルハも、
「ツルハです。宜しくお願いします」
「わあ、名前もそっくり! 私の周り、男の子ばっかだったから心細かったんだあ」
「とてもそんな風には見えなかったけどな」
先程の席までの道を開けてくれた少年が、苦笑気味で言うと、ユズハは頬を膨らませた。
「俺はファイガ。宜しく」
少年がそのまま挨拶をすると、ツルハはその名前を重ね、「宜しくお願いします」と返した。
「僕はフサン」
「おいらはポッチョ」
「私はレイと申します」
「あー! あー!」とユズハは周りの声をかき消すように手を振るうと、
「そんないっぺんに言ったら、ツルハちゃんも困るでしょ!」
ユズハはそう言うと、ツルハに振り返り、
「ツルハちゃん、私達と一緒にお昼食べない?」
「え? けど私、お昼持って来てなくて……」
「気にしなくて良いよ。私達の分けるから。
ね、行こう!」
ユズハがツルハの手を取り立ち上がると、ユズハとツルハを待つように、3人の女の子達が包みを手に心待ちの笑顔を浮かべていた。
「ユズハ! ツルハさんの寮はお前達と同室で良いな?」
ギルが訊くと、ユズハは「はあい」と声を返した。
「よし、じゃあ行こう」




