学院の仲間たち1
「今の講義が終われば、ちょうど昼の休息に入ります。その時間を借りて、同学級の者達に紹介しましょう」
ギルが言うと、ツルハは一度返事をした。
「どうされましたか?」
不安げに垂らした眉が、ギルの声にビクッと上がると、ツルハは苦笑を見せた。
「すみません。
私……、学生生活というものが初めてで。
国にもいくつか学舎があって、子どもの頃から学生生活というものに憧れていたのですが、いざそれが現実になると、楽しみな反面、上手くやっていけるか心配で」
その歳らしい表情が少女の顔に浮かぶと、ギルは意外そうに眉を上げた。
物怖じのない、大人びた雰囲気の衣を纏っていた少女に見えた、か弱い姿に、驚きを感じると同時に、どこか安心感に似た気持ちが、胸の内に落ちた。
ギルは、ツルハに、ふっと微笑むと、
「初めは誰でもそんなものです。
この学院で1年も過ごした彼らですが、入学した頃は皆ぎこちない、カチンコチンの魚のようでしたよ」
「1年?」
ツルハが立ち止まり、目を丸くして言うと、ギルは「ええ」と頷いた。
「あの、私、今期の入学した人達と同じ学級なのでは……?」
ツルハが訊くと、ギルも少し驚いたような顔をした。
「もしやまだ学院長から聞いていませんか?」
ツルハが、うんうん、と頷くと、「あちゃあ」といった様子でギルは額に手を当てた。
「ツルハさんは、今年入学した者達の1つ上の学年、この学院で教養の課程を経た学年に編入になります。
この学院では通常、入学して最初の1年は、数や言語、神話や世界の歴史といった普遍的な教養を学びます。ですが、ツルハさんはそのような教養については既習済みに等しいと試験結果から学院長が判断をされたのです。
そのため、ツルハさんは本格的に魔法や魔術知識について学び始める、"2の学"の級に編入になります。
出発地点という点では、そういう意味では皆同じです。
彼らも気の良い連中なので、きっとすぐに打ち解けることでしょう」
ギルが優しく微笑んで言うと、ツルハも少し安心した様子で笑みを浮かべた。
講義を終える鐘が鳴ると、静けさに包まれていた学堂は、その膜が破れたように騒めき出した。
赤茶色の引き戸が左右に開くと、小さな丸めた背中の老人が中からゆっくりと現れた。
扉のすぐ横に立っていた、ギルとツルハに気が付くと、その老人は可愛らしい小さな丸眼鏡の縁に触れた。
「レッグ教師、お疲れ様です」
金の短髪から快活な挨拶の声が出ると、レッグ教師は、
「ああ、ギル教師、お疲れ様。その子は?」
「例の入学生です。これから仲間たちに引き合わせようと思いまして」
「初めまして、ツルハです。宜しくお願いします」
桃色の小柄な髪が、丁寧に挨拶をすると、レッグ教師も朗らかな表情で頭を下げた。
「これはこれは。レッグと申します。
いやあ、立派な生徒さんで、ギル教師も安心ですな」
「では」とレッグが軽く挨拶をし去ると、ギルはツルハに向き、
「さて、では参りましょう」




