サニットの町2
艶やかな赤茶の柱に囲まれた、立派な応接室に案内されると、ツルハ達はソファに座るように促された。
ツルハ達が腰をかけると、ボルツマンも、その対面に腰を下ろす。
「サニアの森のことについては、ご存知ですかな?」
ボルツマンが訊くと、アルフィーが頷いた。
「アーサーから伺っております。その森で、町人が何者かに襲われていると」
アルフィーが言うと、ボルツマンは顔を曇らせ、頷いた。
「その通りです。最初に襲われたのは、サニアの森に薬草採取へ向かった薬草医でした。
彼は町でも評判の医者で、私も何度か世話になったことがあります。
それから何日も経たないうちに、森へ向かって被害に遭ったという者が、現われました。その数は日に日に増え、行方が分からぬ者も含めれば、30を超えます」
「サニアの森は古くからケンタウロス達の住まう森。彼らが人々を襲っていると、話を聞いたのですが、それは本当なのですか?」
アルフィーが訊くと、ボルツマンは困った様に眉間に皺を寄せ、その皺を解くと、静かに言った。
「恐らく、そうなのだと考えています。
被害に遭った者のうち、何とか一命を取り留めた者達は口々にこう言うのです。
馬の魔物に襲われた。人型をした馬の魔物だった、と。
彼らが襲った以外、私には考えられないのです」
「ケンタウロスは、本来は温厚な種族。
その歴史は古く、"森の案内人"と呼ばれる程に、人との関わりも深い精霊たちです。
ですが、至る所で都市や国の開発の進む中、彼らの住処は追いやられてしまった。
サニアの森のケンタウロス達も、例外ではないはずです」
アルフィーが言うと、ボルツマンは顔を上げた。
「全くもって、その通りです。返す言葉もありません。
この町ができる前は、この一帯には、サニアの森が広がっていました。私が子どもの頃の話です。
しかし、父の代で、本格的な町の拡大が行われ、サニアの森は今のようになったと聞いています。
ケンタウロス達からも、かなりの反発があったようです。
彼らから恨みを買っているとすれば、間違いなく、そのことでしょう」
ボルツマンは申し訳なさそうに、息をつくと、アルフィー達に向いた。
「本当であれば、町長である私が人々を代表して、ケンタウロス達に会うべきなのでしょう。
しかし、そんなこともあり、彼らがそのことで業を煮やしているのであれば、彼らが私の話に聞く耳を持つはずがありません。
そこで、世界騎士団に調査依頼を出したのです」
「なるほど」
アルフィーが頷くと、応接室に沈黙が落ちる。
「分かりました。では、早速サニアの森へ向かいましょう。
彼らは夜に行動することが多いので、今行けば、ちょうど良い頃に森に着けるはずです」
ツァイが目を丸めて、何か言おうとするも、ボルツマンの声が先に飛んだ。
「本当ですか! 流石は、あの名立たる大賢者のアルフィー様です。
何卒、今回の件、宜しくお願い致します」




